稲畑産業が戦略投資、中国電子材料用金属粉メーカー 技術力や価格を武器に日韓進出

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ナノレベルの金属粉末を製造する中国スタートアップ企業「新川新材料(Sinchin New Material)」がこのほど、シリーズA+で約1億元(約19億円)を調達したと発表した。

出資した5社のうち、日本の稲畑産業が戦略投資を実施したほか、星河資本(Galaxy Capital)、深圳担保集団(Shenzhen Credit Guarantee Group)傘下の深圳市中小担創投などが出資に参加した。調達した資金は主に組織拡充や生産ライン拡大、海外市場開拓に充てる。

新川新材料は2017年8月に設立され、浙江省杭州市に本社を置く。設立当初は主に3Dプリンター用金属粉末を開発していた。18年に積層セラミックコンデンサー(MLCC)業界の川上・川下で供給不足となったことが契機となり、MLCC向け金属粉末製造に乗り出し、国内外のMLCC関連企業用にナノレベルの金属粉末を開発するようになった。

MLCC(チップ型)は内部電極材料を印刷したセラミックの誘電体シートを積み重ねて一気に焼結し、両端に金属製の外部電極ペーストを塗布して形成された構造体だ。コンパクトで高性能なため、電子機器製造分野で幅広く用いられ、「産業の米」とも呼ばれる。

MLCCの性能の優劣を直接左右するのが誘電体や内部・外部電極用材料の質だ。MLCCの市場規模が拡大を続ける中、セラミック粉、銅粉、ニッケル粉など重要な原材料も需要が拡大し続けている。

新川新材料を創業した謝上川CEOによると、中国国内でMLCCの粉体材料を手がけるプレイヤーはさほど多くなく、主要メーカーとしてはセラミック粉を生産する「国瓷功能材料(Sinocera Functional Materials)」、ニッケル粉を生産する「博遷材料(Boqian New Materials)」が挙げられるが、市場にはまだチャンスが多い。一方でMCLLの主要材料は試験サイクルが長く、提携先との関係もしっかり安定していなければならない。スタートアップにとっては参入が難しい分野でもある。

中国の粉体サプライヤーの現在の技術的成長のスピードやコスト面での優位性からすると、海外市場でも可能性は大きいと謝CEOは考える。新川新材料もMLCC用粉体材料の国産化を目指すだけでなく、海外にも打って出たい考えだ。

謝CEOによると、新川新材料の金属粉は球形度が高いため分散性に優れている。さらに独自の遠心分級機による処理を経て粒径がほぼ揃っているため、川下メーカーがMLCCを生産する際により多くの層を積み重ねて電気容量を増やせる。最大電圧も上げられるため、製品の性能が保証できるほか、よりハイエンドな粉体の用途に関する需要にも応えられる。

新川新材料のラボラトリー

MLCC業界はコンパクト化、高容量化に向かっている。消費者向け電子製品が進化し、製品に使われる電子部品もよりコンパクトで、より進化した容量や性能が求められるようになったからだ。こうした需要は川上の材料分野にも波及し、その進化を促している。そのため、MLCC業界では粗粒がより少なく、より均一性の高い金属粉が求められるようになった。新川新材料では150ナノメートル(分級後)のニッケル粉の量産、120ナノメートル(分級後)のニッケル粉の開発に成功している。

新川新材料はすでに国内外の大手MLCCメーカーやペーストメーカーから大量受注を獲得しており、将来的には村田製作所やサムスン電機など大手との協業にも力を入れていきたいという。実際、日本や韓国などの海外市場を積極的に開拓中だ。21年末に200ナノメートル以下のハイエンドニッケル粉末が複数の顧客から評価を得たことで、 国内外市場の開拓に弾みがついた。日本には技術的にも地理的にも優位な競合製品が存在するが、新川新材料も製品技術や価格的優位、優れたサービスモデルを備えており、日本のMLCCメーカーの供給体系に加わることに成功した。今後も日本や韓国などでの事業規模を拡大していく計画だという。

すでに量産のための生産ラインも複数立ち上げた。23年第1四半期には月産32トン、25年までには月産120トンを目指しているという。

(翻訳・山下にか)

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