アップルや日独ブランドとの競争回避、骨伝導イヤホン市場を創り出した中国「SHOKZ」のしたたかさ

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アップルや日独ブランドとの競争回避、骨伝導イヤホン市場を創り出した中国「SHOKZ」のしたたかさ

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骨伝導とは読んで字のごとく、骨を振動させることで音を伝達する技術だ。従来型のイヤホンは耳の穴に装着するカナル型であれヘッドセット型であれ、外耳道の空気を媒介にしている。

骨伝導技術の多くは日本や韓国のテック企業が開発してきたが、一般消費者への普及を目指した製品化はしていなかった。そこに中国の「SHOKZ(韶音科技、ショックス)」が参入して状況は一変した。

SHOKZは深圳市南山区にある骨伝導イヤホンメーカーだ。トランシーバー用イヤホンのOEMに始まり、2007年から骨伝導イヤホンの製造に取り組むようになった。その後十数年にわたり地道な努力を重ね、売上高は21年、22年と2年連続で倍増。22年の売上高は50~60億元(約1000~1200億円)で、利益率は70~80%に達したという。

自らピラミッドを築き頂点に

SHOKZの主力製品は5タイプの骨伝導イヤホンだ。最大のセールスポイントは、耳の穴をふさがないことで、音楽を楽しむと同時に周囲の環境音も聞こえる点だ。製品開発を始めてから骨伝導に関わる多くの技術を開発して特許を取得し、骨伝導イヤホンにありがちな音漏れや音質の悪さといった課題を解決してきた。

消費者向け製品の開発において核となる技術は糸口に過ぎず、ターゲットとするユーザーが定まらない限りマーケットとしては成功しない。

従来型イヤホンの市場は典型的なピラミッド構造だ。最上位には独ゼンハイザーや日本のオーディオテクニカ、米JBLなど大手音響機器メーカーが位置し、大きな利益を手にしている。中国の「漫歩者(EDIFIER)」や「先科集団(SAST)」は数十年追随してきたが、いまだにミドルエンドやローエンドの市場から抜け出ることができない。一方、完全ワイヤレス(TWS)ヘッドホン市場において、米アップルが圧倒的なシェアを獲得している。

ある投資家は「SHOKZが賢かったのは、こうした伝統ある市場でもうひとつ別のピラミッド構造を築き、自らがそのトップに位置するブランドとなったことだ」と指摘する。

SHOKZは利用シーンとしてアウトドアに目を付けた。同社の製品は、高級イヤホンの売り場ではなく、「三夫戸外(SANFO)」や仏「デカトロン」といったスポーツ用品専門店に並ぶ。コロナ禍でアウトドアスポーツの人気が高まり、SHOKZは大幅に業績を伸ばした。特に中国ではマラソンがブームになったことから、急激に知名度を上げた。

中国では2015年以降にマラソン大会が急増

米調査会社フロスト&サリバンによると、SHOKZは21年に中国のスポーツ用イヤホン市場においてトップとなるシェア15.2%を占めている。2位以下は米BOSE、米Beats、Sony、JBLなど海外ブランドが続く。SHOKZの中国売上高は全体の3割にもならず、4割は消費者向け製品の激戦区、北米での売上ということは特筆すべき点だ。ブランド名「SHOKZ」が骨伝導イヤホンの代名詞のようになっていることにも納得できる。

北米市場の開拓にあたっては、オフラインの大型販売チャネルは家電量販店BestBuyや会員制スーパーCostco(コストコ)だ。しかしSHOKZは当初、取り扱ってもらえるだけのブランド力を持っていなかったため、別の方法を選んだ。様々な分野の専門店、例えばサイクルショップの実店舗でアーリーアダプターにまず認知してもらい、その後アマゾンなどオンライン販売でさらに市場を広げていった。同社のある従業員は「全ての基礎となっているのがコア技術であり、技術あってのマーケティングで、両者が二重らせん構造のように作用して成長を後押ししてきた」と語る。エピソードとして、アップルのクックCEOのアシスタントがヘッドホン好きだったことから、SHOKZは2014年にアップルの直営店にも出店していたが、売れ行きは今ひとつだったそうだ。 その後、アップルは30億ドルで米Beats(ビーツ)を買収し、サードパーティのヘッドフォンブランドをすべて撤退させた。

今やSHOKZは基礎技術を積み上げ日本や韓国の5年先を行っている。パナソニックが完全に撤退し、残るライバルはオランダのフィリップスと日本のBoCoだけだ。

コア技術で絶対的な優位を維持するため、SHOKZは特許網を張り巡らせて、後続メーカーの参入を難しくしている。ある調査機関が複数のイヤホンメーカーに、なぜ骨伝導イヤホンを手がけないのか尋ねたところ、SHOKZの特許を避けて通ることができないからだと、皆が同様の答えを口にしたという。

世界知的所有権機関(WIPO)の統計によると、21年にSHOKZは、20以上の特許を侵害したとして20社以上に対し200件以上の訴訟を起こしている。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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