中国で広がる「産業用メタバース」、独自のAR技術で航空・電力業界のスマート化を推進

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中国で広がる「産業用メタバース」、独自のAR技術で航空・電力業界のスマート化を推進

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「2022年以降、『メタバース』と産業の融合が転換期を迎え、業界とメタバースをつなぐXR(クロスリアリティ)技術も新たな成長を遂げてきた。当社の事業は21年に売上高1億元(約19億円)を突破し、22年にはさらなる増収増益を達成した」。こう語るのは、中国有数のAR(拡張現実)スタートアップ企業「谷東科技(Goolton)」創業者の崔海涛CEOだ。

Googleが初代Google Glassを発売したのが11年前。以来、AR分野はずっと注目を集め続けており、テックジャイアントからスタートアップまでが開発に力を入れている。しかし、コンシューマー向けのARデバイスは、技術開発の面でも活用場面においても壁を越えられていない。

ビジネス用途では状況は異なり、多くの分野でARは生産性を向上させるために欠かせないツールとなっている。近年、世界中のテック企業が、法人向けサービスの分野でAR技術の開発や活用をいっそう強化している。なかでもARと関連性の高い「産業用メタバース」は、産業用インターネットをより高度に進化させた形態として、世界のスマート製造業に大きな推進力を与えている。

現在、ARやAI(人工知能)、産業用メタバース市場はいずれも急成長期を迎えようとしている。市場調査会社トレンドフォースは、産業用メタバースの刺激を受けて、世界のスマート製造業は2025年に5400億ドル(約73兆7000億円)規模に成長し、21年から25年までの年平均成長率は15.35%に達すると予測している。

独自開発のAR技術

谷東科技はARとAIにまたがるイノベーション型企業であり、同社のAR製品は航空、電力、税関、セキュリティーなど多くの業界で広く活用されている。米国、英国、トルコなど70以上の国や地域で事業を展開し、顧客には中国送電大手・南方電網(China Southern Power Grid)、石油大手・中国石油化工(シノペック)、通信キャリア大手の中国聯通(チャイナ・ユニコム)、アリババ、テンセント、ソニー、仏エアバス、韓国ヒョンデなどが含まれる。

谷東科技は2017年8月に設立され、ARグラスの中核部品である光学ディスプレイモジュールからスタートし、AR用光学モジュール、ARデバイス、ARソフトウエアアルゴリズムプラットフォームを手がけてきた。今や中国でAR用光学ディスプレイや空間コンピューティング技術、産業化トータルソリューションを提供するトップクラスのベンダーだ。同社のARグラスの中核部品は全て独自開発したもので、これが同社の大きな強みとなっている。

谷東科技はアレイ導波路を開発するほかに、導波路ホログラムの研究や製造技術開発にも積極的に取り組んでおり、現時点ですでに一次元・二次元の超薄型導波路ホログラムを量産できるようになっている。

谷東科技の光学研究室

産業界の課題解決が産業用メタバース実現のカギ

さまざまな業界がデジタル化・スマート化の能力を発揮できるよう支援することは、谷東科技の得意とするところだ。産業シナリオでは業界ごとに共通のニーズがあり、基本は安全面、本質はコスト削減と効率化であると、崔CEOは語る。同社はすでに業界のニーズに精通しており、シナリオの共通点を抽象化したうえで標準化された製品やソリューションを構築している。

谷東科技のアレイ導波路光学モジュール

少し前に、谷東科技は最新の5Gアレイ導波路単眼ARグラス「C2000S」を発表した。自社開発の光導波路や国産5Gチップを搭載し、ディスプレイ技術やトラッキング性能、インタラクティブ体験、セキュリティーなどにおいて大きく進化した。

さらに数多くのプロジェクトで顧客の産業転換やアップグレードを成功させている。例えばスマート航空では、3D可視化航空機管理アシスタントと構造可視化メンテナンスシステムを開発した。ARやAI認識、5G通信を活用し、航空機運航に関わる業務の品質と効率を全面的に向上させ、航空業界の整備点検の安全管理レベルをほぼ100%に引き上げるなど、安全性の大幅な向上に貢献している。

現在、テクノロジーの発展に伴い、産業用メタバースもバーチャルからリアルへと徐々に移行しつつある。

「AR分野では、産業用途の開発スピードはコンシューマー向けのものとは比較にならない。例えば石油化学、航空、新エネルギーなどの業界に参入するには、実際のビジネスシナリオを理解し、製品の適用性を高めるために長い時間が必要になる。提携関係を築いてからも、新しい技術が継続的に価値を生み出せるようになるまで、顧客自身がプロセスやシナリオの改革を進めることになる。それは相互に努力して成し遂げられることなのだ」と、崔CEOは話す。

同社の大口顧客のリピート率は90%以上に達しており、業界平均を大きく上回っているという。

(翻訳・畠中裕子)

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