先端の縫製ロボットで、自動化の波に取り残されたアパレル業界に挑む中国「梭芯智能(Bobbin)」

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先端の縫製ロボットで、自動化の波に取り残されたアパレル業界に挑む中国「梭芯智能(Bobbin)」

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中国の縫製ロボットメーカー「梭芯智能(Bobbin)」は最近、ベビー・キッズ服を中心に展開する大手アパレルブランド「PatPat」との提携を発表した。同社が開発した初代縫製ロボットが広東省広州市にあるPatPatの工場で近く試験を実施するという。

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アパレルは数兆元(数十〜百数十兆円)規模の産業だが、衣料品の生産を自動化するロボットは一向にマーケットが形成されない。金属・プラスチック加工や自動車製造にはロボット導入が当たり前になっているが、衣料品メーカーが取り扱うのは柔らかい布地だ。引き伸ばしたり折りたたんだりできる布地を人の手と同じように柔軟に扱えるレベルのロボットはまだ誕生していない。こうしたロボットの開発に挑戦するには多大な費用がかかるため、これに挑む企業も非常に少ない。

しかし、梭芯智能は一介のベンチャー企業として、最先端のロボット技術を引っさげて歴史あるアパレル産業に飛び込んだ。需要に対する最適解を見出し、アパレル産業全体の生産性を上げることを目指していくという。

人と同様の作業が可能なロボット

現在のアパレル業界は労働力不足がますます深刻化している。とくにアパレル産業で中国最大の集積地である広州市では、ここ数年で従業員の確保が極めて困難になっている。中国国家統計局のデータによると、繊維・アパレル・ファッション産業の従事者は2018年末時点で335万6000人だったが、22年末には232万5000人と30%も減っている。

梭芯智能は2021年6月に設立され、同月にはエンジェルラウンドで真格基金(ZhenFund)と松禾資本(Green Pine Capital)から数千万元(数億〜十数億円)を調達している。

同社では、ロボットが人と同様に動作するようにマニピュレーターなどのアクチュエーター(駆動装置)を独自に開発。加えて、3Dビジョンや安全な力制御技術を活用し、ハード・ソフトの両面に取り組んで、縫製ロボットに本物同様の「手」や「眼」を持たせ、縫製工程で生じる布地の取り扱いをクリアした。

具体的には、同社のロボットは深層学習や3Dビジョンの機能を搭載しているため、裁断された生地を正確な位置でつかむことができ、生地の形状の変化や動きの軌跡を予測し、色を認識する「眼」の機能を有している。ソフトウェアに関しては、ロボットと生地の動力学モデルをベースに非線形最適化アルゴリズムを開発し、リアルタイムの軌道計画および精密制御を可能にした。これにより、裁断した生地を分類する、セットする、平らにならす、裏返す、位置を揃えるなどの複雑な動作ができる。

既製服の生産を自動化するにあたり、生地の取り扱いは数ある難点の一つに過ぎない。同じタイプの服を縫製するにしても素材やデザインの違いによって工程はまったく異なり、例えばひと口にTシャツといっても、襟ぐりが違えば使うミシンも違ってくる。

ファストファッションブランドにとって競争力の核心となるのはデザインの豊富さだ。有名ブランドのサイトを開いてみればTシャツだけでも数百ものデザインがある。シンプルなTシャツ1枚なら縫製工程は10〜20ほどだが、これらを機械で自動化するとなるとエンジニアが長時間を割いてプログラムを組むことになる。数百ものデザインを自動縫製するとしたら、開発に要する作業量は得られる成果と比較して割に合わない。梭芯智能はこうした状況に対応するため、技術ライブラリーのほか、生産ラインをスピーディーに配備できるソフトウェアアーキテクチャーを設計し、生産上のさまざまな需要に迅速に応えられるようにした。

このアーキテクチャーはブロック玩具の要領で使えるようになっている。技術ライブラリーでは汎用可能な縫製技術をパッケージ化しており、一つ一つをすぐに取り出して使えるうえ、さまざまなデザインへ柔軟に適用できる。Tシャツの縫製は十数の工程を経るが、そのうちのいくつもに同類の技術が使われている。例えば肩線と側線の縫製技術やすそやそでのかがり縫いなどが共通しており、こうした工程は技術パッケージとしてユニット化することで、ロボットにより高い汎用性を持たせられる。

生産ライン配備ソフトは生産プロセスをスケジューリングする。上記の技術パッケージを呼び出すことで、縫製現場ではさまざまなデザインやサイズの製品の生産プロセスを迅速に組み立てられるのだ。

柔らかな生地を扱う

アパレル産業全体をバージョンアップ

過去数年、さまざまな外的要因によって、多くのブランドが生産拠点や発注先を労働力がより安価な東南アジアに移転している。例えばユニクロやナイキ、アディダス、プーマの主要サプライヤー「申洲国際(Shenzhou International)」は生産能力の40%を東南アジアで賄っている。しかし、ある投資家は「アパレルのサプライチェーンではコスト安による優位は長く続くものではない。やはり最終的には自動化を進める必要がある」と述べる。

梭芯智能が1年近くかけて開発した初代縫製ロボットがまもなく実用化される。同社によると、この縫製ロボットはサンプル機の段階でベーシックなデザインの子供服の縫製を完全自動化し、人の介入なしに完成品を縫い上げ、その品質も人が縫製したものと遜色ないという。同社は、5年後には自社の縫製ロボットが世界で100億枚の衣服を縫えるようになることを目指しているという。
(翻訳・山下にか)

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