発火リスクのない亜鉛二次電池、エネルギー貯蔵用蓄電池への活用に期待

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発火リスクのない亜鉛二次電池、エネルギー貯蔵用蓄電池への活用に期待

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亜鉛二次電池の研究開発を手掛けるスタートアップ企業「大鋅能源(AmaZinc)」がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億~十数億円)を調達した。新瞳資本(Vista Fund)が出資を主導し、既存株主の険峰長青(K2VC)も出資に加わった。

政府の推し進める「ダブルカーボン」政策のもと、中国ではエネルギー構成が急速に変化しつつある。火力発電の比率は年々減少し、風力・太陽光・原子力などの非化石エネルギーが増加しているが、これらは天候や環境に左右されやすいため、安定した電力供給のためにエネルギー貯蔵装置の導入が欠かせない。このためエネルギー貯蔵産業が近年、急拡大を遂げている。

エネルギー貯蔵装置の心臓部である蓄電池の出荷量も、ここ数年急速に伸びている。中国の調査機関・高工産業研究院(GGII)のデータによると、2021年の中国の蓄電池出荷容量は48GWhで、前年同期比260%の増加となった。22年には同88%増加して90GWhを突破すると見込まれている。こうした流れを受け、昨年から蓄電池業界が産業界や投資家の注目を集めるようになった。

近年、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池の活用がさまざまな業界で進んでおり、蓄電池の分野でも有力候補と見なされてきた。しかし炭酸リチウムの価格が大きく変動したり、リチウム資源は長期的に不足する恐れがある。またリチウムイオン電池には発火のリスクがつきまとう。このためリチウムイオン電池が必ずしも蓄電池の最適解とは言えないことが明らかになってきた。

エネルギー貯蔵用の蓄電池には高い安全性が求められる。エネルギー貯蔵施設では数万個ないしは数十万個の蓄電池を一カ所に集めており、ひとたび発火などのトラブルが起きれば大惨事につながるからだ。安全性が高く、コスト面でも優れた電池システムに注意が向くなか、産業界や投資家は水系亜鉛二次電池に関心を寄せるようになり、今年に入ってからも多くの亜鉛二次電池メーカーが資金調達に成功した。

2020年に設立された大鋅能源は、香港城市大学や松山湖材料実験室の技術的背景を持つ。亜鉛二次電池の特性を生かし、エネルギー貯蔵市場を今後のターゲットにしている。

亜鉛二次電池は、電解質に水溶液を用いた水系電池の一種で、高い安全性が特徴だ。また亜鉛を使用した電池は早くから商業化が進んだ分野であり、19世紀には亜鉛一次電池がすでに誕生していた。長い時を経てさまざまな亜鉛系の電池が開発され、その性能も大幅に向上している。

大鋅能源の唐子傑CEOは次のように語る。「リチウムイオン電池に可燃性の有機電解液が使われているのに対し、亜鉛二次電池の電解液は水と無機塩でできている。正負極材料も比較的安定している金属酸化物が中心だ。電池システム全体が水につかっているようなもので、発火や爆発の危険性はほとんどない。しかも製造やリサイクルなど全ての面で環境にもやさしい」。

亜鉛の地殻中の存在度は0.008%、中国のシェアは18.7%で、2020年の世界生産量は1360万トンだった。一方リチウムの生産量はわずか8万2000トン、ナトリウムは16万トンにとどまる。亜鉛二次電池の生産量が増加し、産業チェーンが成熟していけば、コスト面でリチウムイオン電池より優位に立てるだろう。

大鋅能源の強みは、最も信頼性の高い亜鉛二次電池システムと最適化プランを可能にする、系統立った電池材料の基礎研究だという。加えて、電池構造の革新、サプライヤーとの連携、構造に応じた生産工程や生産設備の導入など、産業化を実現する能力も備えている。

現在、同社は東莞市松山湖に生産ラインを構え、すでに複数の業界から受注を獲得している。

(翻訳・畠中裕子)

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