中国、マンション外壁に宅配専用レール 「ラストワンマイル」の完全無人化を目指す

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リサーチ機関「前瞻産業研究院(Qianzhan Industry Research Institute)」によると、2010~19年の中国の電子商取引(EC)規模は4兆5500億元(約70兆円)から34兆8100億元(約540兆円)に急増、年平均成長率(CAGR)は25%に達しているという。ECと関係の深い宅配業も、受注量が増加傾向にある。宅配業は労働密集型産業であり、中国の人口ボーナスによる低コストの恩恵を受けている。とはいえ、人口ボーナス自体長く続くものではなく、EC、デリバリー、自動運転分野の関連企業はいずれも無人宅配業界へ参入する傾向が現れている。

新型コロナウイルス感染拡大により無人宅配市場はより多くの耳目を集め始めている。今年2月、中国EC大手京東集団(JD.com)は、武漢第九病院およびその周辺の「小区(塀で囲まれた敷地内に複数の住宅があり、日本の団地と似ているが居住者以外の出入りは制限される)」を対象に無人宅配車による宅配を初めて行なった。生活関連サービス大手「美団(MEITUAN)」の無人宅配車「魔袋(MAD)」も北京市の小区三か所で宅配サービスを行なっている。

消費者意識では依然として宅配荷物の一時預かり用ロッカーを運営する「豊巣科技(Hive-box)」が主流で、無人宅配はさほど普及していないのが現状だ。現段階で無人宅配車が一般エレベーターを使う場合、多くの課題に直面する。エレベーター自体が特殊設備であり、政府関連の法令の厳格な管理下にある上、エレベーター業界はこれまでも多業種との交流はほとんどなかった。現状からいえば、「無人宅配車をエレベーターに乗せること」自体ハードルが高い。宅配業者、不動産管理、エレベーターメンテナンス関連企業、エレベーター改造資格を有する製造技術関連企業などとの提携が必要となり、かなり複雑なプロセスとなる。

このような問題点に目をつけたのが、2020年に設立されスマートテクノロジーの研究開発を行なう「楽取智能(Lequ zhineng)」だ。同社はマンション外壁に無人宅配ボックス専用レールを取付け、スマートエレベーターで受取人宅のベランダまたは窓枠に設置した宅配ボックスまで直接届けるシステムを開発した。個人用宅配ボックスの発想から無人宅配車が一般エレベーターに乗ることができないといった業界の課題を解決した。

同社は知的財産権を有する「到到天梯(宅配用スマートエレベータ)」技術および自社製品「到到無人宅配車(スマート無人宅配車)」で宅配サービスの「無人化」に取り組んでいる。

同社CEOの李毅帥氏は、現時点では中国の宅配業界のウイークポイントは情報の安全性、低効率、高コストの三点にあるとの考えを示した。

楽取智能が提案した宅配モデルは、宅配業者が荷物を小区の入口に設置したスマート宅配ボックスに入れると、無人宅配車が荷物を取り出して該当する棟のスマートエレベーターに自動で積み替える。荷物は受取人宅の宅配ボックスまで届けられ、受取人はそれを自分の家で受け取る、といった仕組みだ。荷物を発送したいときにはこれとは逆の手順となる。

無人宅配車は自動で宅配ボックスから郵便物を取り出して運ぶ
マンションにある専用レールに乗って家まで配送(画像提供:楽取智能)

李CEOは、この宅配モデルは宅配効率を大幅に向上させ、情報および宅配過程での安全性も向上するとの認識を示した。すべての宅配用ボックスは温度管理サービスと組み合わせて、生鮮食品などの宅配にも対応できるという。

同社のスマートボックス、スマートエレベーター、クラウドコントロールプラットフォーム、専用アプリはすべて自社設計だ。無人宅配車のボックス部分は自社設計だが、シャーシー部分は第三者との提携で行ない、その他のハード面はOEMモデルを採用した。

マンションの外壁に専用の「宅配用エレベーター」を取付け、各戸に「宅配ボックス」を取付けることで全プロセスにおいて無人宅配を行なうことが可能となるという。業務が安定すれば1戸当たりの投入額は約1000元(約1万6000円)と見込んでいる。また、ユーザー用デバイスと宅配受取料金を無料とし、ユーザーにより良いECサービス、生鮮食品の配達、デリバリーのCX(消費者エクスペリエンス)を提供するとの意向を示した。

同社はすでに南昌市江鈴瓦良格小区と提携を結び、システム取付け許可を得ている。9月からマンションでの設備の取付けが始まる。今年はエンジェルラウンドの融資を終える計画だ。調達した資金は製品のバージョンアップと数か所の小区で試験的実施に充てられる。

現時点での無人宅配サービスの多くは産業パーク内がメインで、都市部での実施は北京、上海、広州、深圳などの超一線都市に集中している。その主な理由としては、一つ目にパーク内のコストが他よりも安いことだ。業界関係者によると、公共道路での無人運転レベルの要求レベルは高く、生鮮食品EC「美団買菜(Meituan Grocery)」などの無人車両のコストは15万元(約230万円)にも達しているという。二つ目に、物流、製造業のパーク内ではインフラが整備されており、無人宅配車または無人運転技術に適している点だ。三つ目に、超一線都市では安定した利用頻度とビジネス価値があることが挙げられる。

スマート小区の発展により、無人宅配には大きな市場が見込める。とはいえ、現段階では「宅配エレベーター」をリリースできるか否かは、現行の宅配コストと無人宅配コストの価格によるところが大きい。いかにして消費者に無人宅配小区で買い物をするように促していくかは、企業が無人宅配の効率の良さを示し、より優れた製品開発行なわなければならないところだ。(翻訳:lumu)

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