身分証も運転免許証も携帯不要、アント・フィナンシャルが5種類の電子証明サービスを提供へ

IDカードと運転免許証は財布に入れておくべきか、それとも家の引き出しに閉まっておくべきか。

2018年7月5日、アリババグループ傘下の金融関連企業アント・フィナンシャル(螞蟻金服)は天津市公安局と共同で、電子証明書情報サービスを開始した。しかも、オンライン決済・アリペイ(支付宝)との連携が可能になっている。こうして天津市は、中国国内で電子証明書サービスが最も広く普及する都市となった。

身分証、運転免許証などがペーパーレスになった天津市

今回スタートした電子証明書の情報サービスは、身分証、運転免許証、自動車検査証、居住許可証、戸籍の5種類を網羅。宿泊施設へのチェックイン、軽車両での交通違反に際する本人確認、担保サービス、警察の職務質問などに使うことができる。このサービスは地元市民だけでなく、出張や一時滞在のために天津市に来ている市外の住民も利用することができる。

アント・フィナンシャル都市サービス部門のバイスプレジデント・趙丹丹(チャオ・タンタン)氏は、ユーザーの情報セキュリティについてこう語った。アリペイは天津市のローカルデータベースと接続してユーザー情報を照会することができる。また、アリペイは十全なリスク管理システムを形成しており、ユーザーが電子証明書を使用するたびに顔認証と指紋認証、2段階の認証手順が必要になる。なお、顔認証の精度は99.99%以上である。例えば、ユーザーが携帯電話を紛失して、第三者が電子証明書を悪用しようとする場合、携帯電話のパスワード・アリペイのログインパスワード・顔認証・指紋認証と4段階の認証手順が求められる。

ただし、今回の電子証明書のサービスは、空港や駅などの交通機関で使うことはできない。関係者が36krに語ったところによると、空港と駅での安全運用は複雑だ。これを利用可能にするためには、内部システムを完全にオープンにし、さらに外部とのデータ共有を可能にし、インターフェースの問題を解決する必要がある。アント・フィナンシャルは、交通機関内での電子証明書利用の実現を推し進めてはいるが、その具体的な日程はまだ決まっていない。

また、アント・フィナンシャルは天津市公安局と229項目の協力覚書を締結しており、より多くの分野で電子証明書の応用を実現していく。

モバイル決済の二大巨頭、電子証明分野でも競合関係に

キャッシュレス社会の到来後、「各種証明書のペーパーレス化」もトレンドになっている。近年、アリペイは複数の都市で順に、電子証明サービスの試験運用を始めている。

2018年4月17日には、公安部の第一研究所認証プラットフォーム(CTID)認定の「住民身分証オンライン機能証明書」(以下、「ネット証明」と略する)がアリペイに初めて登場し、正式に衢州市、杭州と福州の3都市で同時に試験運用をスタートしている。このネット証明は、行政事務、宿泊施設のチェックイン、電車やバスのチケット購入の3つの範囲で使用できる。現段階では、地理的にも場面的にも使用範囲は限られている。

ネット証明のプロトタイプは以前に存在する。2016年6月、アリペイと武漢市公安局が共に開発した「電子IDカード」だ。主に身分情報の確認や身分証の申請予約、出入国関係書類など、基本的な場面に使用できるものだ。

実際、こうしたネット証明の開発はアリババ傘下のアント・フィナンシャルだけでなく、アリババグループの競合であるIT大手・テンセントも着手している。しかもアント・フィナンシャルに先んじて、より高度な内容に対応する電子証明書サービスを提供している。アント・フィナンシャルとテンセントはモバイル決済の分野でも「ライバル」であり、この関係は電子証明書の分野まで飛び火した。

2017年12月、テンセントと広州市公安局南沙区支局、建設銀行など10以上の機関が“警察クラウド連盟”を組み、 「WeChat身分証」の実装 を始めた。 このネット証明は高スペック・低スペックの2段階に分かれている。高スペック版は、工商営業許可証申請や税務登録など、より高度な認証が必要な場面で使うことができる。

開発プロセスを振り返ると、これまでの電子証明書サービスの種類はそもそもあまり多くないことがわかる。アント・フィナンシャルとテンセントは身分証明書の電子化に焦点を当ててきたが、こうした電子身分証の活用範囲というものはそう広いものではない。

このほどアント・フィナンシャルが天津市で提供した5種類の電子証明書サービス。大型交通機関内での利用などまだ実現できていない場面は多いが、それでもこれからの可能性に大きく期待できる一歩といえるだろう。

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