黒字転換のソーシャルEC大手「拼多多」、次なる戦場は生鮮食品の共同購入 強敵揃いで勝算あるか

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黒字転換のソーシャルEC大手「拼多多」、次なる戦場は生鮮食品の共同購入 強敵揃いで勝算あるか

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中国の3大ECプラットフォーム「アリババ」「京東(JD.com)」「拼多多(Pinduoduo)」の2020年第3四半期(7~9月)の財務報告が11月中旬に出揃った。その中で注目されているのは、これまでずっと赤字を計上してきた拼多多が、単独四半期でついに黒字を達成したことだ。

年間のアクティブ購入者数も7億3100万人に達し、アリババの7億5700万人に迫る勢いだ。決算発表後、株価は一時20%以上値上がりし、時価総額では京東を超えた。

拼多多は上場以来、多額の赤字を計上しながらも成長を遂げ、値引きキャンペーンでユーザーを獲得するモデルは常に論争の的になって来た。

今回の財務報告に対しても、各アナリストはいくつかの問題を提起している。その内容は主に2つに集約される。なぜ、生鮮食品販売に参入するのか。そしてそれをどのように成功させるのか、ということだ。

ここでは拼多多の黒字転換と生鮮食品への参入という2点に焦点を当てて分析をしてみたい。

黒字への転換

拼多多の第3四半期は、GAAP(米国会計基準)ベースで7億8500万元(約125億円)の損失だったが、従業員へのストックオプションや減損損失などを調整した非GAAPベースでは4億6600万元(約74億円)の黒字となった。

拼多多は2018年第1四半期から今年の第2四半期までの10四半期のうち、8四半期で10億元(約159億円)以上の純損失(非GAPPベース)を計上してきた。

企業経営というのは、売上高とコストの伸び率の差異で評価するもので、拼多多にとってもそれは同じだ。

拼多多はこれまで消費者をひきつけるための多大な努力をしてきた。長く続く赤字の原因は多額のキャンペーンやマーケティング費用だった。2020年第3四半期の販売費率は70.9%だったが、これは売上高100元(約1600円)あたりの販売費が70.9元(約1100円)ということになり、そこには広告、新規顧客の勧誘、商品キャンペーンなどが含まれる。

70.9%の販売比率は高いように見えるが、これは上場以来の最低値で、昨年同期は91.9%、今年の第1四半期は111.6%にも達していた。

一方で拼多多は、販売側のショップに対しては強気の態度だ。

2016年、17年の拼多多の年末時点の資産総額はそれぞれ18億元(約286億円)、133億元(約2116億円)で、増加分の115億元(約1830億円)のうち、94億元(約1596億円)が「預かり資金」だった。これは消費者がショップへ支払った金額を拼多多が一時的に預かり、消費者が商品を受け取った後、ショップ側へ支払われるものだ。

2017年、拼多多は1412億元(約2兆2500億円)の商品を販売し、年末時点で94億元(約1596億円)の預かり資金を保有していた。これに対して京東は、GMVは拼多多の約9倍の1兆3000億元(約20兆7000億円)であったが、預かり資金は41億元(約652億円)だった。アリババのGMVは3兆8000億元(約60兆5000億円)で、預かり資金は27億元(約430億円)だった。

拼多多がショップ側に対して強気である大きな理由は、ノーブランドの商品を扱っている事で、これは製造業の中でも生産能力が過剰で競争が激しい分野だからだ。

ショップは売り上げを一時的に拼多多側に預けるだけでなく、自らお金を払って拼多多に広告を出している。第3四半期のオンラインマーケティングサービスの売上高は前年同期比92%増の129億元(約2052億円)に達した。

総括すると拼多多の第3四半期の売上高は前年同期比89%増で、過去最高額となったマーケティング費用は同46%増だった。これが黒字化の大きな理由だ。

他社と異なる販売戦略

中国国内の3大ECプラットフォーム、アリババ傘下「淘宝(タオバオ)/天猫(Tmall)」、京東、拼多多はよく比較されるが、各プラットフォームの位置づけは大きく異なる。

淘宝と天猫はプラットフォーム型ECで、豊富なショップやブランドを取り込むことでより多くの消費者を惹き付け、双方の規模拡大による効果を目指す。そして取引手数料とマーケティングサービス料によって売り上げを増やしていく。

京東は自社販売や物流によって、「安く仕入れて高く売る」事でその差額による利益を得ている。また物流システムによる収益化も進んでおり、物流を含むプラットフォームサービスによる売上高は、2017年の51億元(約811億円)から2019年には235億元(約3737億円)に伸びている。

これに対して拼多多はいわゆる「アウトレット」だ。商品はブランドから提供されるのではなく、ディーラーや代理店から供給される。売り方は「24時間限定の共同購入」など、比較的長い予約・出荷サイクルとなるが、ショップ側は「オンデマンド生産」が可能となり、更にコストを下げることができる。

商品の供給源以外に、最も大きな違いはトラフィックの配分方法だ。

淘宝系のプラットフォームでは、ブランドが有名であるほどランキングが上位になり、トラフィックが大きくなる。「百度(バイドゥ)」のランキングと同じ仕組みだ。ショップ側はランキングを上げるために、値下げを行う他に広告費を投入する。

これに対して拼多多は、トラフィックの分配の中で「価格」の比重が大きく、価格が安ければ販売量が増え、トラフィックも増える仕組みだ。

生鮮食品販売の勝算

今年10月8日、拼多多創立5周年の社内向けスピーチで、董事長の黄崢氏は「生鮮食品販売は重要かつ難しいビジネスだ。長期的なビジネスでもあり、拼多多にとって試金石となるだろう」と述べた。

拼多多は2018年に653億元(約1兆385億円)の農産物を販売し、2019年は1364億元(約2兆1700億円)に倍増した。中国全体における生鮮販売ECのGMVは2000億元(約3兆1800億円)程度で、「毎日優鮮(MissFresh)」、「盒馬鮮生(Fresh Hippo)」のGMVは200億元程度(約3181億円)だ。

生産過剰の農産物を販売するのは、箱に電化製品を詰めて売るように簡単ではない。生産地が分散していて、長期的な保管もできないからだ。だからこそ、拼多多の生鮮食品販売への参入は注目を集めている。

拼多多の生鮮食品販売「多多買菜(Duoduomaicai)」には、拼多多ならではの戦略があるようだ。多多買菜を利用した購入方法は次の通りだ。

ユーザーがミニアプリで自分の住所を指定すると、利用可能な近距離のコンビニ、小売店のリストが表示される。その中から店舗を選ぶと商品の注文ページへ移動する。

商品ページでは売れ筋商品が紹介されているが、それは常温保存が可能な牛乳、米など保存が可能で配送しやすいものが多い。

野菜を購入したい場合は「旬の野菜」メニューから選択可能だが、そこにも比較的保存期間の長い野菜が並んでいる。

購入完了後、商品を受け取る場所は近所のコンビニなどになる。

つまり拼多多の生鮮食品販売は保存期間が長く、共同購入方式が利用しやすいものに限られている。さらに重要なのは、このような生鮮食品がストックされているのは、コンビニや小売店だということだ。

これまでにも拼多多は販売店やディーラーの余剰在庫となっている商品に焦点を当てて販売を行ってきており、生鮮食品販売でも同じ手法を使うつもりだ。

実店舗の過剰在庫をオンライン販売へ

コンビニで生鮮食品が販売されるのは珍しい事ではないが、それを成功させるのは難しい。

コンビニの需要は定期的なものではなく、扱う商品も調理済み食品、半調理食品などがメインで、それらは生鮮食品に比べると管理がしやすい。

今年発生した新型コロナウイルスは実店舗へ多大な影響を与え、多くの店舗が閉店を余儀なくされた。その分、売り上げを伸ばしたのがECだ。

国家統計局のデータによると、EC商戦「618セール」(6月18日前後に行われる中国ECサイトのスーパーセール)の影響によって、今年第2四半期は小売り総額に占めるオンライン販売の割合が史上最高の29%に達した。オンライン販売の割合が2%から20%になるまでには10年かかったが、20%から30%近くになるには数カ月しかかかっていない。

新型コロナが収束した後も、実店舗の売り上げは回復していない。1〜9月におけるオンライン販売額は前年同期比9.7%増の8兆65億元(約127兆4600億円)で、小売り総額に占める割合は25%となっている。

このような状況のもと、多くのコンビニや小売店で余剰在庫があり、それをオンライン販売へと繋げる役割を果たすのが拼多多なのかもしれない。
(翻訳・普洱)


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