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中国で驚異的な視聴率を誇る旧正月大みそかの特番「春節聯歓晩会(以下、春晩)」。2021年はショート動画「抖音(Douyin、TikTokの本国版)」が紅包(お年玉)イベントを行う提携パートナーに決まった。抖音の運営会社バイトダンス(字節跳動)はわずか4カ月程前に決済業務許可証を取得したばかりだ。
抖音は1月19日、独自の決済サービス「抖音支付(DouPay)」を抖音アプリ内でリリースし、既存の決済方法であるアリババ系「アリペイ(支付宝)」、テンセント系「WeChatペイ(微信支付)」に、抖音支付という新たな選択肢を加えた。
抖音の関係者によれば、今回の抖音支付リリースは決済手段を補強してより良いサービスをユーザーに提供するためだという。
抖音支付では10種類の銀行のキャッシュカードが利用可能。アカウントサービス規約を見ると、主にチャージ、現金引き出し、送金、残高照会などの機能を備えており、決済サービスの提供事業者は「武漢合衆易宝科技(Wuhan Hezhong Yibao Technology)」となっている。
現在は手数料無料キャンペーンを行っており、チャージや送金などに一切手数料はかからないが、サービス規約には今後手数料を徴収するようになる可能性も示唆されている。
決済業務許可証の取得から決済サービスのリリースに至る一連の流れを、バイトダンスは驚くほど短期間でやってのけた。
2020年9月、武漢合衆易宝科技を買収するという形でバイトダンスは決済業務許可証を取得する。11月、12月には相次いでドメイン名「douyinpay.com」を取得し、「Doupay」「抖音支付」を商標登録した。そして春晩の紅包パートナーに決定してからわずか数日のうちに、自社決済サービスのリリースにこぎ着けたのだ。これほど急いで抖音支付をリリースしたのも、春晩紅包イベントと無関係なはずがない。
抖音が春晩の提携パートナーとなるのは2019年に続き2度目だ。前回は、春晩の独占ソーシャルメディアプラットフォームを務めたことで抖音のユーザー数は爆発的に増加した。とはいえ現状ではアプリユーザー数に増加の余地は少なく、ライブコマースなどの新事業が業績を支える重点分野になっている。そのEC事業でクローズドループを形成するには、独自の決済手段を構築することが不可欠だ。この流れで、抖音支付をプッシュすることが2021年春晩提携の狙いになるのも自然なことだろう。
覇権争いが繰り広げられる決済サービス市場で、中国人の習慣に根ざした紅包の役割は非常に大きい。IT大手各社は紅包のやり取りがピークに達する大みそかにさまざまなイベントを計画し、自社の決済サービスを利用してもらおうと必死だ。
もともと2021年春晩の提携パートナーはソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」に決まっていたが、同社従業員の突然死により過酷な労働時間への批判が高まったことを受けて提携は撤回される。本来なら春晩の紅包イベントに乗じて自社の決済サービス「多多銭包」を強力にプロモーションする算段だった。
今やアリペイと双璧をなすWeChatペイだが、爆発的にユーザーを増やす転機となったのはやはり2015年の春晩との提携だった。春晩の提携パートナーの座をつかんだ抖音支付もこのチャンスをものにできるだろうか。
(翻訳・畠中裕子)
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