相次ぐネット大手の自動車製造進出 その成功を阻む最大の課題とは

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インターネット大手のバイドゥ、シャオミがすでに自動車産業に乗り出すことを発表し、ライドシェア最大手の滴滴出行(DiDi)もそれに続くとの報道が、2021年4月に流れた。今やインターネット大手の大半が、自動車産業に興味を持っている状況だ。たしかに、これらの企業が持つ莫大なユーザーと、EVを支える電池産業の成長を見る限り、自動車産業のハードルはそれほど高くないように見える。

しかし、産業チェーンのマネジメントという点では、やはり従来の自動車大手が優れている。以下EVやスマートカーの産業チェーンの角度から、新興EVメーカーの課題を考えてみたい。

複雑な産業チェーン

従来の自動車の産業チェーンはリニアなものだった。原材料の供給元、部品サプライヤー、アセンブリ工場、ディーラーを一本の線のように順番に経て、最終的に完成車が消費者の元に届く。しかし、スマートカーはそれより複雑だ。

新興EVメーカーの「小鵬汽車(Xpeng、シャオペン)」を例に見てみよう。同社の部品サプライヤーはアセンブリ工場に直接出荷するのではなく、小鵬汽車の開発センターと調整した上で、アセンブリセンター、パワートレインセンター、インターネットセンター、自動運転センターに出荷し、部品の設定を終えた後に最終的なアセンブリを行うことになっている。

アセンブリにも小鵬汽車自社工場と外部委託の2つのルートがあり、その後さらに自動運転センターで自動運転のソフトウェアのセッティングが必要となる。販売はオンライン、オフラインに分かれており、さらにそれぞれ自社運営と他社運営がある。

このように産業チェーンが複雑なため、新興EVメーカーの管理費は高止まりしている。2020年のテスラの管理費は31.45億ドル(約3500億円)、小鵬汽車は4.476億ドル(約490億円)、「蔚来汽車(NIO)」は6.026億ドル(約660億円)で、ともに開発費の2〜3倍となっている。その上、テスラとGMを比較するとわかるように、テスラの管理費が増え続けているのに対し、GMは毎年減っている。EVやスマートカーの産業チェーンを維持することはそれだけ大変なのである。

アフターサービス

管理費は生産段階だけでなく、アフターサービスでも発生する。従来の自動車メーカーはアフターサービスをディーラーや代理店に委託することが多いが、新興EVメーカーは自社で運営するのが一般的だ。現状ではその体制がまだ不十分であり、テスラ車を例にとると、中国で重要部品を交換したい場合、1〜2カ月待たなければならない。

EVの中核部品である電池は修理が難しく、メーカー工場でしか対応できないことが多い。また、EVの部品はモジュール化されていることが多いため、修理・交換した場合に他のモジュールとの連動を考慮しなければならず、内燃機関車の修理よりも高度な専門知識を要する。これらもアフターサービス運営のコスト高騰を招くだろう。

データ

ソフトウェアの重要度が高いEVやスマートカーは、定期的にソフトウェアの更新が必要だ。年に一回点検するだけでよい内燃機関車と比べ、ソフトウェアの更新は頻繁に行われる。バイドゥの車の場合、1台あたり毎分500mbものデータをサーバーにアップロードしており、今後ユーザーが増えれば、サーバーが膨大なデータを処理できるかどうかが課題となる。

また、インターネット企業はユーザーの位置情報データを保有するが、その精度はメートル単位しかなく、自動運転が求めるミリ単位には程遠い。これを解決する有効な方法を見つけなければ、自動運転にとって不可欠なデータの全く新しい方法での取得を模索することを余儀なくされる。

以上のように、インターネット大手は自動車産業に大きな期待を寄せているが、産業チェーンの各段階を適切にマネジメントできなければ、1カ所で生じた課題が全体に影響し、生産や販売が止まってしまう恐れもある。これこそが、最も大きなハードルだろう。

原作者:財経涂鴉(WeChat ID:caijingtuya)、苗正

(翻訳・小六)

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