地獄から天国、世界3位の純利益で健在示した孫正義氏の「胆力」

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2020年11月17日、ソフトバンクグループの孫正義CEOはニューヨーク・タイムズ主催の「Dealbook Conference」において、ソフトバンクが保有資産のうち800億ドル(約8兆7200億円)近くを現金化したことについて、「次の2〜3カ月で何が起こるかわからない。最悪のケースに備えているだけだ」と話した。

2019年にはソフトバンクの投資の失敗が何度も取り沙汰された。シェアオフィスのWeWorkは上場失敗、衛星企業「OneWeb」は経営破綻、インドの格安ホテルチェーンOYOは年間赤字が6倍に膨れ上がり、そこにコロナが追い打ちをかけ、資金が不足するほどとなった。

2020年5月18日に発表されたソフトバンクグループの2019年度の決算は、営業損失が1兆3600億円以上となり、1994年上場後最大の赤字となった。ソフトバンク・ビジョン・ファンドは有力スタートアップの規模拡大を後押しし、競争相手を市場から完全に締め出す手法を取るが、その過程で多くの企業が損失を被った。そのため、決算発表を受けて孫正義の投資手法を疑問視する声がウォール街を中心に噴出した。

しかし、それから1年後の5月12日に発表された2020年度の決算は、4兆9900億円もの最終利益を計上し、日本企業ではトップとなった。

V字回復

勝敗は戦の常という言葉は、投資においても当てはまる。孫氏はソフトバンクの40年の歴史を振り返って、「劇的な出来事や危機にあふれていた。喜んだときもあれば、肩を落としたことも少なくない」と語ったことがある。2021年5月12日は、彼が大喜びした日だったに違いない。当日発表された2020年度のソフトバンクグループの純利益は4兆9900億円となった。これは全世界で見てもアップル、サウジアラムコに次いで第3位の水準だ。

これほどのV字回復となった理由は、まず投資対象企業の株価の上昇とIPOにある。2019年の上場後に株価が低迷していたUberの株価が2020年に持ち直し、中国の不動産仲介「貝殻找房(KE Holdings)」は2020年8月に米国上場を果たした。特に後者に対する投資利益率は最高で375%にも上る。

また、ソフトバンクの投資戦略の変更も大きい。同社は2020年7月に株式やデリバティブ取引を専門的に行う事業部を立ち上げ、そこでは流動性の高い大型テック株を中心に投資している。投資銘柄にはアマゾン、Facebook、Zoomに加え、中国のビリビリ動画、EC大手の「拼多多(Pinduoduo)」、動画配信プラットフォームの「愛奇芸(iQiyi)」、オンライン教育の「好未来(TAL Education)」などがある。こうした企業の株価が軒並み高騰したことで、ソフトバンクは2020年9月にソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資ポートフォリオの損失分をすべてカバーしたと発表した。

他の投資先企業の成長も順調だ。2020年末に米国のフードデリバリーサービス「DoorDash」 が上場したことで、ソフトバンクは110億ドル(約1兆2000億円)の評価益を計上した。今年3月には、韓国版アリババと呼ばれるEC大手「Coupang」が米国上場を果たし、3月末時点でソフトバンク・ビジョン・ファンドが保有する同社の株式の時価は約280億ドル(約3兆円)と、取得時の10倍に膨れ上がった。

IPOを予定している企業のなかにも、ソフトバンクが投資した企業が多数含まれている。中国のトラック配車大手「満幇集団(Full Truck Alliance Group)」、シンガポールの配車アプリ「Grab」、インドネシアのEC「Tokopedia」、インドのデジタル決済「Paytm」、同じくインドのフィンテックの「PolicyBazaar」などがそうだ。

こうしたIPOブームがさらに続くと見込んだソフトバンクは、すでに資金面で準備をしている。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資はすべてソフトバンクグループの出資に頼っているが、ソフトバンクグループは投資コミットメントを200億ドル(約2兆1800億円)引き上げ、総額300億ドル(約3兆2700億円)とした。

他方、ソフトバンクは新型コロナ禍による不確実性を念頭に置き、このほど発表された声明において、現在の市況が長期的に続くことは保証できないとした。孫氏はまた、市況の変動によってソフトバンクグループの損益が大きく変動することが常態化するとの認識を示した。

(翻訳・小六)

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