世界で最も厳しい「個人情報保護法」 中国でまもなく施行

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

その他注目記事

世界で最も厳しい「個人情報保護法」 中国でまもなく施行

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国で長らく議論されてきた「中華人民共和国個人情報保護法」が11月1日から施行されることになった。中国のインターネット界はデータ・ガバナンスの時代に入る。

テンセント、アリババ、バイトダンス(字節跳動)、美団(Meituan)などのITジャイアントからネット通販の出店業者、マンション管理会社、フリーランスの開発者に至るまで、あらゆる組織および個人は見境なく顧客情報を収集・処理し、漏洩してはならないことになる。違反すれば巨額の罰金を課される。

中国の個人情報保護法に関しては海外でも反響が大きい。米シリコンバレーのテックメディアThe Informationは「世界で最も厳しいプライバシー保護法の一つ」、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「厳しさは世界最上位」と評している。

中国の個人情報保護法は、EU(欧州連合)で2018年に施行された「一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)」と比較されることも多い。主な条項や適用範囲などが酷似しているからだ。中国の個人情報保護法では個人情報の行き過ぎた収集は禁じており、個人データ収集・処理の際には本人の同意を得ること、重大な違反があった場合は最高で売上高の5%の罰金を納めなければならないことなど、GDPRと同様の条項が定められている。

個人がアルゴリズムを拒否する権利

個人の顔画像やIDを収集する機器を公共の場所に設置する際、個人情報保護法では公共の安全を維持する必要がある場合に限定され、国家の関連規定を遵守すること、また機器設置の旨を掲示することを求めている。また、収集した顔画像やID情報は公共の安全を守る目的にのみ使用することとされている。

施行されれば、インターネット企業の有するアルゴリズムの優位性は弱まると専門家はみている。例えば、オンライン配車プラットフォームは、ユーザーが所有するスマートフォンの機種によって異なる乗車料金を表示するが、これは個人情報保護法施行後は違反とみなされる可能性がある。

個人情報保護法第24条では、個人情報管理者が個人情報を利用して意思決定の自動化を行う場合、その基準を透明化するとともに、意思決定の結果が公平、公正となるよう、また個人に対し価格などの取引条件で不合理な差別的待遇を実施してはならないと規定している。

さらに、意思決定の自動化機能を使って個人向けにプッシュ通知をしたり、商業的なマーケティングを行う際には、対象となる個人の特徴とは紐付かない選択肢も同時に提示するか、あるいは簡単に受信拒否できる方法を提示するべきだとしている。また、意思決定の自動化機能を使って個人に重大な影響を及ぼす決定を行う場合、対象となる個人は管理者に対し説明を求め、その決定を拒否する権利を有するとしている。

先に挙げたオンライン配車プラットフォーム以外のアプリでも、ユーザーはおすすめ商品など自分向けのレコメンド情報の表示を拒否できる。こうしたレコメンド機能は過去10年、モバイルインターネットの急成長を支えてきた主な製品や技術だ。

個人情報保護法が施行されれば、ユーザは過度なデジタル化を拒否する権利を有するようになる。大企業にとっては損失だ。なりふり構わず収集した個人情報を使って自社のアルゴリズムを進化させる行為は、今後は処罰の対象となるからだ。

これまで多くのITジャイアントがテクノロジーを過信してきた。アリババ創業者のジャック・マー(馬雲)氏はかつて「人類はIT時代からDT(Data Technology)時代に向かっている」と述べていた。

ビッグデータやアルゴリズムを活用したSNSや動画プラットフォーム、ECアプリ、検索エンジンなどは単なるツールの域を超えているという事実を我々はますます知るようになった。これらはユーザーをトラフィックとみなし、常に個人データへのアクセス許可を求め、電話番号や写真、住所、銀行の口座番号、身分証番号、交際関係などの提供を求め、これらのデータに基づいて個人の経済力、社会的地位、趣味やリスク選好などを知ろうとしてくる。

しかし、データの持つ力を認識するようになるにつけ、世論は個人情報の過度な収集に対する反感を強めている。

個人情報保護法の持つ意味は、個人がデータを提供しない権利を行使しても、正常な日常生活を送れることを法的に保証するものだ。
(翻訳・愛玉)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録