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動画投稿アプリTikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)がVRヘッドセット開発の「Pico Technology(小鳥看看科技)」を買収したことが8月末に報じられると、一時は鳴りを潜めていたVR市場に活気が戻ってきた。
「メタバース関連のトップ銘柄」と呼ばれるゲームプラットフォーム「Roblox」の時価総額は470億ドル(約5兆1700億円)となり、ゲーム大手「Electronic Arts」を上回った。投資銀行顧問会社「Evercore」のリサーチ部門は、FacebookのVRヘッドセット「Oculus Quest 2」について、初年度の販売台数が800万台以上になるとの見通しを示している。
「愛奇芸智能(iQIYI Intelligent Entertainment Technology)」は8月31日、VRヘッドセットのフラッグシップモデル「奇遇3(QIYU3)」を3499元(約5万9500円)で発売。購入者にはゲーム30本、計1700元(約2万8900円)相当を無料提供した。同社は2016年に動画配信大手「愛奇芸(iQIYI)」がインキュベートしたVR関連企業だ。
愛奇芸智能の熊文CEOは奇遇3の発売にあたり「当社にとって非常に大きなマイルストーンとなる製品だ」と期待を寄せている。
愛奇芸智能は、大きな戦略としてVR機器のバージョンを「1.0(映像)」から「2.0(映像+ゲーム)」「3.0(映像+ゲーム+SNS)」へと段階的に移行させようとしている。従来の奇遇シリーズは、4KやVRコンテンツなど映像を中心としていたが、奇遇3は映像+ゲームという特徴を備えている。
奇遇3は、装着者の頭と手の位置を認識する6DoFトラッキングに加え、「デュアルディスプレー」を採用。解像度は片目あたり2160×2160ドットで、シングルディスプレーに比べ43%も高くなっている。
無料提供する30本のタイトルには、「Mercenary2 : Silicon Rising」など本格派ゲームのほか、「ストリートダンス」「Audio Trip」といったカジュアルゲームや親子で楽しめるゲームも含まれている。
熊CEOは「ゲームの無料提供やタイトルの選択にあたっては、中国人ユーザーのニーズを考慮した」と説明。プロモーションと購入補助を同時に行うためにゲームライセンスの取得に力を入れ、資金を投じてユーザー育成を強化していることを明らかにした。
購入補助を行っていることからも、同社がVR、特にその背後に広がるメタバースのエコシステムを有望視していることが分かる。
熊CEOもメタバースについて積極的な姿勢を示した上で、モバイルインターネットとスマホが互いに補完し合うように、メタバースとVR機器も相性が良いと説明した。
しかし、メタバースとモバイルインターネットは本質的に異なる。例えば、インターネット業界にある「キラーアプリ」の概念がメタバースの世界では必ずしも成り立たない。メタバースの進歩を促すのは特定のアプリではなく、時間と空間の次元を再構築する全く新しいものになるだろう。
熊CEOは「キラーアプリが技術的なブレークスルーとなる場合もあるが、メタバースは戦略的なブレークスルーとなる」と話す。
メタバースの概念はVRに対する投資家の関心も高めた。熊CEOは以前、資金調達交渉の大半の時間をかけ投資家と事業の可能性について議論してきた。ところが最近は、議論の内容が「この分野がどれだけ早く成長し、誰が勝者になるか」に変わったという。
バイトダンスが15億ドル(約1650億円)以上でPicoを買収したことが報じられると、テンセントは中国のVR・AR関連企業のリストを急いでまとめ、出資を受け入れそうな企業を探し始めたという。
「VRは技術だが、そこにメタバースが加わると事業になる。技術を評価する場合と応用シーンがある技術を評価する場合ではロジックが異なる」と熊CEOは述べた。
VR事業の見通しは明るいが、依然として継続的に多額の投資が必要となることも事実だ。7年前に30億ドル(約3300億円)でOculusを買収したFacebookは、最近ようやくVR業界のリーダーとなった。それでもEvercoreは、FacebookのVR事業が2021年に54~64億ドル(約5900~7000億円)の損失を計上すると予測している。
熊CEOも心の準備は万端で、「VR事業は最低でも5年間は煮詰める必要があり、取り組むなら成功を急いではならない」旨を愛奇芸の龔宇CEOと確認したという。
(翻訳・神戸三四郎)
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