次に来る仮想世界「メタバース」、テンセントとバイトダンスの争い

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人々が自由に活動できる通信ネットワーク上の仮想空間「メタバース」をめぐり、ITジャイアントによる新たな争奪戦が巻き起こっている。Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは6月末、同社の未来はSNSにとどまらず、メタバース構築を目指していると言明した。

中国企業もこうしたトレンドに追随している。TikTokの生みの親バイトダンス(字節跳動)は今年4月、スマホゲーム開発企業「代碼乾坤科技(Code View Technology)」に1億元(約17億円)を出資。ユーザー制作コンテンツのプラットフォームにSNSをかけ合わせたメタバース「REWORLD(重啓世界)」をリリースした。

その2カ月前には、「メタバース最大手」と称される米ゲームプラットフォームROBLOXが中国に上陸。「羅布楽思」としてゲーム大手テンセントが国内配信を行っている。リリース初日にはAppStoreの無料ゲームランキングで1位デビューを飾った。ROBLOXの運営会社は今年3月にNY市場に上場し、初日に株価が54.4%も高騰、時価総額は400億ドル(約4兆4000億円)以上に達している。

メタバースの最大の魅力は、現実世界をデジタル世界に転写できることだ。利用者は互いに交流ができ、現実と虚構の間という特殊な空間を経験できる。メタバースにゲームを介在させることで、現実に近いバーチャル世界を構築しているからだ。バイトダンスとテンセントがメタバース系のゲームに魅せられている理由はまさにその点にある。

メタバースではゲーム以外にSNSも重要な戦場となる。

テンセントが出資する次世代SNS「Soul」は「若者が交流するメタバース」を謳う。ユーザーは30秒で完了する「魂の鑑定」を受けると自分と趣味の合う同年代の友人を見つけ、自分を自由に表現できる自分だけの「ソーシャルメタバース」を創造できる。

関係者によると、バイトダンスが企画・開発中のメタバースSNSアプリ「Pixsoul」は、没入型のバーチャルプラットフォームで、同社のSNS事業にとっては「多閃(Duoshan)」「飛聊(flipchat)」に次ぐ再度の挑戦となる。

業界関係者はメタバースの最終形態が「全真互聯網(テンセントのポニー・マーCEOが提唱した概念で、現実世界の全てがインターネットに接続すること)」になると考えている。メタバースに参加すれば、次のインターネット時代へのチケットが手に入るとも考えている。すでにゲームとSNSという二大切り札を手にしているテンセントは、この機会を逃すはずはないだろう。

テンセントは現状では他社への投資を通じてこの新分野を開拓中だ。一方のバイトダンスはテンセントに追いつくために投資から自社開発へと切り替え、全力で賭けに出てきた。

テンセントはゲーム、SNSだけでなく、長年かけて映画やライブ配信など数多くの分野に進出し、ほぼオールラウンダーに近づいている。ある海外メディアは過去に「Tencent’s Metaverse(テンセントのメタバース)」と題した事業ポートフォリオの図解を掲載した。その中には世界的に有名なゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」や、中国で大躍進した新興ECプラットフォーム「拼多多(Pinduoduo)」、フードデリバリーから出発したスーパーアプリ「美団(Meituan)」などが含まれている。

業界関係者によると、バイトダンスとテンセントは先日、中国最大手のVR機器メーカー「Pico Technology(小鳥看看科技)」の買収案件で競り合ったばかりだ。最終的にはバイトダンスが90億ドル(約9900億円)でPicoを手に入れた。今年の中国VR業界では最大規模の買収案件だ。バイトダンスもメタバース事業をさらに推し進めるため、決心を固めたとみられる。

メタバースをめぐるバイトダンスとテンセントの対決は、それぞれが自身の力を蓄え戦略を練っている段階といえる。次の10年へ導いてくれるチケットに大勢が群がる激烈な競争は避けられないだろう。
(翻訳・愛玉)

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