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ニュースアグリゲーター「今日頭条(Toutiao)」のカンファレンス「創作者大会」が、今年で4年目を迎えた。今回登壇したのは、これまで基調講演を行ってきた張一鳴氏ではなく、新CEOの陳林氏だった。
11月7日に開催された「生機大会(創作者大会から改称)」で、陳氏は今日頭条の新CEOとして登場。創業者兼CEOとしてこれまで陣頭指揮を執ってきた張氏の不在は、業界の関心事となった。
その後、今日頭条の運営会社「バイトダンス(字節跳動)」は今日頭条の新CEO就任を発表したが、同氏に関する情報は多くない。前CEOの張氏と同じ1983年生まれで、北京大学卒業後、2012年にバイトダンスに入社。同社の核となるサービスの立ち上げに従事してきた経験を買われてプロダクトマネージャーから今日頭条のCEOに抜擢された。アリババグループやテンセントで勤務した経歴がある……こんなところだ。
これまでの今日頭条のカンファレンスでの話題は、今後のサービス展開や投資が中心だったが、今回の「主役」は違う。間違いなく新CEOが話題の的であり、陳氏が今日頭条にどのような違いを生み出せるのか、また、新CEOを迎えるにあたり、社内でどのような戦略的変化があったのかなど、気になる点は多い。
張一鳴氏を襲った危機
今日頭条がシリーズBで資金調達に成功した後、前CEOの張氏の前途に暗い影が見え始めた。
今日頭条のシリーズAに出資した海納亜洲創投基金(SAI)の王瓊氏の発言が、作家・李志剛氏が執筆した記事に記されている。ある投資家が王氏に対し、「シリーズB完了後、今日頭条が新CEOを迎える計画があるか?」と問うと、「張CEOの能力を過小評価している」と言って否定したという。また、張氏自身も「私がCEO職を解かれる可能性は低い。なぜなら私は今日頭条に最も心血を注いできたひとりであり、連日今日頭条の業務に集中している。解任されるはずがない」と反論したという。
今年1月、今日頭条は初めてアグリゲーション・アルゴリズムを公表。4月には、それまで掲げてきた刺激的なスローガン「あなたの気になるニュースこそがヘッドライン」を変更した。同時に「今日頭条」というブランドは影を潜め、代わりに運営会社名の「バイトダンス」が前面に出るようになった。
編集者(人間)を介在させない、完全に機械化されたプラットフォームだと謳っていた張氏だが、同月、同社傘下の短編動画アプリ「内涵段子」に閉鎖命令が下った。理由は「反社会的コンテンツを拡散している」というもので、張氏は正式に謝罪。編集体制を強化するとともに、配信コンテンツのチェック要員を6000人から1万人に増やす「人海戦術」を表明した。
新CEOは張一鳴氏のコピーか
今日頭条の新CEOに就任した陳氏にはどれほどの決定権が与えられるのか。プロダクトマネージャー時代以上に戦略的判断が任せられるのだろうか。
陳氏は「(CEOに就任しても)私の仕事はたいして変わらない。あくまで対外的な肩書であり、社内では肩書は関係ない。通常の業務を行っている」と語る。
プロダクトマネージャーとしての陳氏は、自社のプロダクトに関するネガティブな側面は語らないなど、取材の場の発言は具体性に欠けていた。CEOに就任したことで、同氏は新プロダクト開発、組織の整備、人材教育に集中するものと思われるが、内部情報によれば「陳氏は単なるアプリの責任者にすぎない」という噂も出ているという。
今日頭条のCEOは単なる一プロダクトのトップに位置付けられ、バイトダンスのCEOが社内の全プロダクトを管理する立場に位置付けられた。陳氏の発言権の有無が今後の今日頭条に影響してくるだろう。陳氏と張氏ふたりの関係性も影響するに違いない。
迫るバイトダンスの組織再編
今年に入り、中国ではニューエコノミー企業のIPOが続いているが、小米科技(シャオミ)や美団点評(Meituan-Dianping)は、上場後すぐに組織再編に乗り出した。バイトダンスも上場準備を進めており、組織を再編する時期は遠くはないはずだ。その兆候は今年4月末、絶大な知名度を誇る「今日頭条」ではなく、親会社である「バイトダンス」を対外的なブランド名として採用したことからも分かる。
4月、張一鳴氏は初めて「バイトダンス創業者兼CEO」という肩書でカンファレンスに出席し、講演を行った。8月には、北京の本社ビルに掲げられていた「今日頭条」のロゴも、「バイトダンス」に取って替わった。
工商局の登記情報によれば、今日頭条の運営元は「北京字節跳動科技有限公司(Byte Dance)」とあり、設立は2012年3月と記されている。今日頭条がリリース2年も経たないうちに1億人以上のユーザー数を獲得した経緯や、その影響力や認知度から、これまでは社名の「バイトダンス」よりもむしろ「今日頭条」が同社の代名詞的な存在となっていた。
一方で、この看板商品のおかげで度重なるトラブルに巻き込まれてきたことも事実であり、今日頭条の名称を前面に出すことにより、ブランドイメージがさらに低下することを危惧した可能性がある。また、今日頭条はあくまでバイトダンスが運営するサービスの一つに過ぎない。同社はほかにもショート動画共有アプリ「TikTok(抖音)」や「Buzz Video(西瓜視頻)」などを傘下に擁する。海外展開するに際し、これらのサービスをひとつにまとめ、より強力なブランドイメージを構築することも必要だ。
将来的に今日頭条はバイトダンスが運営するサービスの中で、一体どのような立ち位置になるのだろうか。この点について陳氏は「TikTokもBuzz Videoも異なるシーンで用いられ、ユーザーのニーズも異なる。利用者層もシーンも異なっているので、今日頭条とは良い補完関係となるはず」と見解を述べている。
看板は「今日頭条」から「バイトダンス」になったが、不変なのは、前CEOの張一鳴氏が引き続き大きな戦略を担うという点だろう。
(翻訳・飯塚竜二)
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