京東、即時配送市場でアリババ・美団に勝ちにいく サプライチェーンの多角展開が強み

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中国EC大手「京東集団(JD.com)」(以下、京東)は10月中旬、傘下の宅配会社「達達集団(Dada Group)」と共同で立ち上げた小売商品即時配送サービス「小時購」をローンチした。毎年11月11日を中心に開催される中国最大のECセール「双11(ダブルイレブン)」のスタートに間に合わせた形だ。

京東のアプリで小時購のタグの付いた商品を注文すると、3〜5キロ圏内の小売店から商品が発送され、1時間以内に消費者の手元に届く仕組みだ。すでに生鮮食品やスマートフォン、デジタル家電などを取り扱う小売店約10万軒が加盟しているという。

アプリのトップページ最上部に新設された「付近」タブが小時購への入り口になる。タブをクリックするか、検索ボックスに任意の商品名を入力すると、位置情報サービスを利用して対象範囲内の小売店が表示される。

テンセント(騰訊)のSNSアプリ「微信(WeChat)」にもミニプログラム「京東小時購」が追加された。アカウントシステムは京東のホームページと連動しており、画面のレイアウトも同じだ。

京東は今年3月、達達集団の新規発行普通株8億ドル(約910億円)分を購入すると発表した。取引完了後、京東の持ち株比率は51%となった。達達集団のプラットフォームにおける取引額は今後、京東の決算報告に記載されることになる。京東が達達集団に小売商品即時配送サービスの中心的役割を担わせた理由はここにある。

京東は昨年4月の組織再編で、スーパーマーケット・オムニチャネル事業グループを発足していた。かねてから次の成長戦略として掲げていたオムニチャネルの構築において、小売商品即時配送サービスは重要な役割を果たすことになるとみられる。

京東の底力

小売商品即時配送サービスでシェアを拡大するのは容易ではない。京東だけでなく美団(Meituan)やアリババ集団やといったEC大手も、この市場を虎視眈々と狙っている。

美団のシニアバイスプレジデントで宅配事業グループのプレジデントを兼務する王莆中氏は「宅配サービスは今後5年で消費スタイルの主流となり、市場規模は1兆元(約18兆円)に達する可能性がある。美団は市場シェア4割の獲得を目指す」と述べていた。

アリババ集団も、小売商品即時配送サービスを重要視している。張勇CEOは、ネットスーパー「天猫超市(Tmall Mart)」、食料品の即時配送サービス「淘鮮達」、生鮮スーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh)」を中心に構成されるローカルリテール事業を、ECと生活関連サービスに次ぐ重要事業に位置付けている。

京東、美団、アリババ集団の3社は、いずれもユーザー数や配送システムに不足はないため、サプライチェーンで勝負を決することになるだろう。現時点では、総面積2300万平方メートル以上の倉庫を抱え、長年かけて独自のサプライチェーンを築いてきた京東が優位だとみられる。

京東は、現在主流となっているサプライチェーンモデル3種類を全て網羅している。

1種類目は、都市部の倉庫の周囲約100キロをサービス範囲とするB2Cモデルで、当日または翌日に配送を完了する。小売部門「京東零售(JD Retail)」の配送拠点が該当する。

2種類目は、生産地の倉庫から全国に商品を発送する産地直送モデルで、生鮮食品や工業製品に適用されることが多く、3〜5日で配送を完了する。生鮮食品の産地直送サービス「京東生鮮」、コミュニティ向け共同購入サービス「京喜」および「京東物流(JD Logistics)」の産地倉庫が該当する。

3種類目は、半径3キロ以内を業務範囲とする小売モデルだ。同モデルは商品の受け取り方法で、宅配モデル、来店モデル、コミュニティー向け共同購入モデルに細分化されている。宅配モデルに該当するのが小時購と「京東到家」。来店モデルに該当するのは、コンビニエンスストア「京東便利店」、スーパーマーケット「七鮮超市」のほか京東が展開する家電専門店など。京喜はコミュニティー向け共同購入モデルに該当する。

京東は現在のところ業界で唯一、主流のサプライチェーンモデルを全て備え、着実に展開を進めている企業だ。それぞれのモデルのあり方はさまざまだが、目指すところは一致している。小売事業におけるコスト・効率・体験の最適化だ。そして今回、小時購がローンチされたことで、京東による多角的なサプライチェーン展開の完成度がさらに高まった。

(翻訳・田村広子)

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