ファーウェイ独自OS、3.0版リリース 産業向けOSにも取り組み

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中国通信機器大手ファーウェイが、独自OS「HarmonyOS 3.0(鴻蒙3.0)」のデベロッパープレビュー版をリリースした。

同社コンシューマー向け事業グループのCEOとインテリジェントカー・ソリューション事業ユニットのCEOを兼任するリチャード・ユー(余承東)氏は、先月下旬に開催されたファーウェイ開発者大会2021で、HarmonyOSを搭載したデバイスが1億5000万台に達し、年内には2億台に達する見込みだと述べている。

ファーウェイの開発者エコシステムも構築が進んでいる。今年1月から9月までの期間、同社のエコシステムには世界中の500万人以上の開発者が参加し、リリースされたアプリは3322億回ダウンロードされた。また、ファーウェイ以外の端末にも連携が可能になる「HarmonyOS Connect(鴻蒙智聯)」に関連した製品は4000以上リリースされ、今年は6000万セットものスマートデバイスが出荷される見込みだ。

ユーCEOはHarmonyOS 3.0デベロッパープレビュー版発表の席上で、ファーウェイにはブレイクスルーが必須であり、それを実現する方法がエコシステムの構築であると強調した。HarmonyOSは同社が次の段階に進むために最も大きなカギを握る事業だ。HarmonyOSをめぐるエコシステムのため、ファーウェイは過去3年で500億元(約8900億円)以上を投じた。

開発者向けエコシステムもさることながら、ユーザー向けエコシステム構築に関してもファーウェイは重圧を感じている。現在はよりマクロな視点に立ち、参入がより難しい工業分野に目を向け、ソフトウェア面からソリューションを提供する。ファーウェイの選択は明確だ。これまではハードウェアに特化してきたが、今後はソフトウェアやサービスのプロバイダーに転身し、現状を真に打破していこうとしている。

スマートフォン以外に広がるファーウェイOS

ファーウェイの事業の重心は短期的には引き続きコンシューマー向け事業に置かれるだろう。しかし、携帯電話や基地局を販売するだけの状態から脱却したいと考えてきた同社は、製造業やインフラ、新エネルギーといった大規模で多くの資金を必要とする未知の分野へ足を踏み入れようとしている。同分野に携わる巨大企業に向け、HarmonyOSを通じてサービスを提供することが、ファーウェイ新事業の土台となるかもしれない。

任正非CEOは今年2月、国営通信社・新華社の取材を受けた際、「ファーウェイのこれまでの通信ネットワークは主に一般家庭に接続し、数十億人をつないできた。5G時代に突入した現在は、主なターゲットは空港、埠頭、炭鉱、製鉄、自動車メーカー、航空機メーカーなどの企業だ」と述べている。

取材当時、ファーウェイはすでにこれを実行に移しており、炭鉱のデジタルトランスフォーメーションを手がける「炭鉱軍団」を設立した。責任者には同社ラテンアメリカ地区の総裁を務めてきた鄒志磊氏が就いている。

続いて先月には税関・港湾軍団、スマートロード軍団、データセンター・エネルギー軍団、スマートソーラー軍団を設立。これらは同社の通信事業者向け事業グループ、法人向け事業グループ、消費者向け事業グループと同等に位置づけられ、任CEOが直に監督する。

このモデルはグーグルの「An Army of Ph.D.’s(博士号軍団)」と同様のものだ。基礎研究、技術、プロダクト、エンジニアリング、販売、サービスなど各分野の専門家を一つの部署に集め、製品化までの期間を短縮させる。軍団が担う任務は広大な範囲にわたり、製造の各業界に向けた基盤ソリューションを提供していく必要がある。

HarmonyOS自体は基層OSであり、異なる業界の異なる需要を加味してカスタマイズできる。法人顧客との取引で最も難関となる部分だ。最初に設立された炭鉱軍団は、国営エネルギー大手の「国家能源集団(CHN ENERGY)」と共同で鉱業専用OS「鉱鴻」をリリースした。すでに石炭生産企業「神東煤炭(SHENDONG COAL)」の4カ所の炭鉱で、液圧式制御装置、パトロールロボットのような特殊機械を含む20種類の設備に導入されている。

さらに象徴的な事例として、ファーウェイは先月18日、電力設備を建設する「山東電力建設第三工程(SEPCOIII)」と、サウジアラビアが進めている紅海のエネルギー貯蔵プロジェクトで提携する契約を締結した。同プロジェクトの電池エネルギー貯蔵規模は1200MWhで、世界最大規模の蓄電プロジェクトだ。また、あまり注目されていないが、ファーウェイ製の太陽光発電用パワーコンディショナーは昨年の出荷量が41.7GWで世界の23%を占め、シェア1位となっている。

岐路に立たされているファーウェイだが、工業向け製品には幅広い機会が眠っている。HarmonyOSが工業関連の顧客企業からのデジタル化需要に応えられれば、大きな転機となるだろう。
(翻訳・愛玉)

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