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中国の新興電気自動車(EV)メーカー「愛馳汽車(Aiways Automobile)」が、同社初の量産車「愛馳U5」を公開した。エネルギー効率A+クラスのSUVで、最高航続距離は560kmと、純電気自動車(BEV)としては世界最高レベルを達成している。その基盤となったのは、自社開発のMASプラットフォーム。同社はこれを対外開放すると発表し、新興自動車メーカー間の競争より協業を推進したい考えだ。
MASプラットフォームが実現した世界一の航続距離
MASプラットフォームを開放する考えについて、同社CTO兼技術センター総経理の王東晨氏は「各メーカーが莫大な予算を割いて似たような技術を開発するのなら、各社で共有した方がよい。開発費の原資は顧客がもたらしてくれたものだからだ。浪費は避けたい」と述べる。
愛馳U5はフロントグリルをなくし、ドアハンドルを格納式にしたほか、コンセプトカーで採用されていたバックミラーカメラをなくした。インテリアはコンセプトカーから大幅に変更されており、「スマート・モバイル・ファニチャー」をコンセプトに、著名カーデザイナーの奥山清行氏がアートディレクションを担当している。変速レバー以外はすべてタッチ操作できる仕様だ。また、さまざまなシーンを想定した自動運転補助装置によって、時速130km以下での自動運転を実現したほか、ワンボタンでの自動駐車も可能になっている。
フォルクスワーゲン社製「ティグアンL」の競合車種として、最大のポイントは航続距離の記録更新だ。スペックはバッテリー容量63kWh、最大出力140kW、最大トルク315Nm、航続距離460kmとなっているが、バッテリーパックの追加で航続距離は最大560kmまで延長可能。現段階で世界最長の航続距離とされているBEVは、BYD(比亜廸汽車)の「唐EV600」と、広汽新能源汽車(GAC NE)の「Aion S」だが、記録をさらに更新することになる。
愛馳U5のオプションバッテリーは、トランク下方に埋め込まれる。2016年に自社開発したMASプラットフォーム(More Adaptable Structure)が追加バッテリー搭載を可能にした。ボディ素材は、上半分がスチール、下半分がアルミニウムとなっており、車体の軽量化も実現している。
下剋上に立ちはだかる壁
愛馳U5は2019年末に発売予定で、価格は30万元(約490万円)だ。新興メーカーにとってA+クラスのSUVは激戦区となるだろう。
「中国のテスラ」と称される小鵬汽車(Xpeng Motors)、蔚来汽車(NIO)など、中国の新興EVメーカーが続々と設立されたのは2014年のこと。愛馳汽車は2016年設立で後発組だが、わずか2年ほどの間に資金を調達し、製造拠点を完成させ、優秀な人材を取り込み、製品開発にまで漕ぎつけた。
共同創業者兼CEOの谷峰氏によると、従業員は現在1100人。すでに2回の資金調達に成功しており、現在は3回目の調達を準備中だ。2019年旧正月期にも20億元(約330億円)を調達する計画だという。
すでに海外拠点も開設した。10月、ドイツで初の記者発表会を行った際に、海外事業部執行副総裁のアレクサンダー・クローゼ氏は「技術開発、生産、販売、いずれの面でも欧州レベルを目指したい」と表明した。すでにドイツに完全子会社「愛馳恭博汽車」を設立しており、アウディ出身のエンジニア、ローラント・グンペルト氏をチーフ・プロダクト・オフィサーに迎え、EVスーパーカー「RG Nathalie」の開発にも成功している。
しかし、逆風もある。中国政府が新エネ車(NEV)普及を目的として打ち出していた車両購入税免除などの支援政策が2020年にも打ち切られるのだ。また、2017年6月に中国発展改革委員会が「自動車産業投資管理規定」の原案を公表し、自動車産業投資事業への参入条件を変更。地場メーカーの乱立を受けて、業界再編を促していることも悩みの種となっている。
(翻訳・愛玉)
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