テンセント、本業ささえる投資力。10年ぶり減益でも悲観少なく

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テンセント、本業ささえる投資力。10年ぶり減益でも悲観少なく

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中国IT大手のテンセント(騰訊控股)が先月発表した今年第3四半期(7〜9月)決算は、売上高が前年同期比13%増の1423億7000万元(約2兆5000億円)、純利益が同3%増の395億元(約7000億円)だった。非国際会計基準の純利益は2%減の317億5000万元(約5600億円)となり、過去10年で初めて前年同期を下回った。

しかし、関連会社の損失56億6800万元(約1000億円)を除外すれば、前年同期より約7%増益の計算になる。しかも、テンセントの投資部門にあたる「騰訊投資(Tencent Investment)」の純利益は265億元(約4700億円)で、株主に帰属する利益の67%を占め、2020年通期の43.5%を上回った。

テンセントの過去数年の決算を振り返っても、投資事業が本業を支える最良の手段になってきたことが分かる。

テンセントの投資

「中信証券(CITIC Securities)」のリポートによると、テンセントの2021年第3四半期の投資利益は、上場企業への投資分だけで約1200億元(約2兆1000億円)に上っている。

2021年第3四半期決算より

貸借対照表に記載された関連会社の非流動資産や公正価値の損益がある金融資産などの投資資産を合計すると、テンセントの総資産の4割以上を占めていることが分かる。同社がこれまでに実施した投資は1175件で中国IT企業の中では圧倒的トップ。2位の小米(シャオミ)以下を大きく引き離している。

データ会社「IT桔子」のリポート「2021年中国インターネット企業のCVCによる投資および買収」より

テンセントは、関連企業の出資した企業の株式を20〜49%保有するにとどめているため、大きな影響力を持つものの実質的な支配権は持たない。だが、投資先が上場すれば投資コストと時価総額の差額が利益となる。テンセントを「中国のソフトバンクグループ」になぞらえるの大げさではないだろう。

投資による利益がピークに達したのは2020年第4四半期で、営業利益は前年同期比123%増の637億元(約1兆1300億円)だった一方、投資先企業の公正価値は193.4%増の9819億元(約17兆5000億円)に上った。

強みはエコシステム

テンセント最大の投資先はゲーム分野だ。データ会社「IT桔子」によると、今年9月30日現在の投資先の割合は、ゲームが16.3%、企業向けサービスが12.23%、カルチャー・メディアが7.13%となっている。

実際に「Lilith Games(莉莉絲游戯)」を除けば、おそらく中国内外の有名なゲームメーカーの大部分がテンセントの出資を受けている。テンセントは2013年、米「アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)」の株式の6%を取得するとともに「コール・オブ・デューティ」など複数のIP(知的財産)も手に入れた。2020年第4四半期は、同ゲームの海外人気を受け、海外向けゲーム事業の売上高がモバイルゲーム事業全体の4分の1にあたる100億元(約1800億円)近くに達した。テンセントが出資する韓国「クラフトン(Krafton)」は今年8月、ソウル株式市場に上場。韓国で今年最大規模のIPOの一つとなった。一方、テンセントは同社が開発した人気ゲーム「PUBG Mobile」の中国版をリリースすることに成功し、「王者荣耀」に次ぐドル箱を手に入れている。

テンセントがゲーム分野で強さを発揮できるのは、創業期から基礎を築いてきただけでなく、同分野に対する投資を高い頻度で実施して守りを固めてきたからだ。政治的にさまざまな動きがあった際も、海外のプレーヤーはテンセントへの締め付けがないよう願っていた。さもなければ、ほとんどの人気ゲームがプレーできなくなってしまうからだ。

SNSアプリ「微信(WeChat)」の優位性も、テンセントが電子商取引(EC)の分野で業績を伸ばすのに一役買った。かなり初期にEC大手の京東集団(JD.com)や拼多多(Pinduoduo)に出資し、微信とのリンクを設置することで両社の急成長を後押しした。同時に、地方市場における微信のユーザー数拡大と収益化の試みも加速させた。広告サービスをローンチすると、多くの企業が微信のエコシステムを活用する形で広告を出稿した。

テンセントは、微信のミニプログラムや「モーメンツ(朋友圈)」「企業微信(WeChat Work)」などを利用して認知度やユーザー数、転換率を向上させる力を蓄積した上で、教育業界に進出した。実際、広告事業の売上高の10〜15%を教育業界からの売上高が占めている。

2008年に投資会社「騰訊投資(Tencent Investment)」を設立してからは、本業のインターネット関連への投資に集中し、非常に大きな成果を上げた。また、国際流動性の高まりとともに、企業価値を急速に高めた。競合他社を大きくしのぐ伸び率だった。

騰訊投資は、テンセントが「利益を出す→M&A→本業に還元→利益を出す」の循環を生み出し、テンセントが「ビジネス帝国」を急速に拡大するのに寄与した。

積極投資の姿勢は変わらない

テンセントがゲーム分野の王者であることは現在も変わらない。散発的にヒット作を生み出す競合他社もないことはないが、世界展開の点でテンセントに対抗できるライバルはいないと言っていいだろう。

テンセントは現在、第二の切り札として微信の収益化を急いでいる。しかし、収益化に効果を発揮するプロダクトを短期間で開発するのは難しいため、すでに成熟している広告モデルによる収益をプロダクトの開発やその他の収益化に関する目標に充てるしかない。

市場予測によると、テンセントは来年、海外向けゲーム事業への投資を大きく回収するとみられる。ゲーム事業の売上高が増加し続ければ、積極的な投資戦略も継続するに違いない。

(翻訳・田村広子)

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