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北京冬季五輪が閉幕した。今回、多くの関係者の注目を浴びたのは、各所で運行されていた水素を燃料に使う燃料電池バスだ。水素ステーションも30カ所余り設置されるなど、さながら水素バスの一大モデル拠点と化していた。1000台を超える水素バスの運行を陰で支えていたサプライヤーの一つが、清華大学系の「北京億華通科技(Beijing SinoHytec)」だ。
億華通は2012年設立。バスなど商用車向け燃料電池システムの開発・生産を手掛ける国内最大手で、上海申竜客車や北汽福田汽車、鄭州宇通客車など20社以上の商用車メーカーを顧客に抱える。20年の燃料電池車(FCV)の電池システム市場(販売ベース)で約35%のシェアを持つ。億華通の前身は北京清能華通科技発展で、清華大技術研究チームが設立した。
億華通は現在、香港取引所への上場計画を進めている。今年1月下旬、同取引所に上場申請した。調達した資金は、次世代燃料電池システムの研究開発投資などに充てるという。目標とする調達額などは明らかにしていない。
同社は16年1月、中国の中小企業向け店頭市場「新三板」に上場(既に廃止)。20年8月、上海のハイテク新興企業向け「科創板」への上場を果たし、15億元(約270億円)超を調達した。香港上場に成功すれば、燃料電池システム企業としては、中国本土・香港両市場で初の重複上場となる見通しだ。
近年はFCV向けの事業展開を加速。21年3月、トヨタ自動車と折半出資で燃料電池システムの中国合弁会社「華豊燃料電池」を設立。同年後半にトヨタのFCV「ミライ」搭載の同システムをベースに開発した部品を生産・販売している。また、同年4月にはバイク・自動車メーカーの「大運汽車」などと協力し、中国西部初のFCV大型トレーラーモデル事業を四川省でスタートさせた。
関連技術を巡り、独自の研究開発も進む。既に燃料電池セルの中心部である膜電極接合体(MEA、固体高分子膜などで構成)の研究開発にも着手しているという。
赤字拡大も産業に成長期待
だが、財務データに目を向けると、残念ながらまだ採算が取れていない状況だ。FCV用燃料電池システムの出荷台数は増加基調が続いているものの、利益の落ち込みが大きく、経営の安定化には時間を要する見込みだ。
億華通がこのほど発表した21年通期の決算見通しに関する報告によると、同年の売上高は6億1000万~6億5000万元で、前期比6.6~13.6%増と伸びを確保した。一方で、純損益は1億4000万~1億9000万元の赤字となったとした。2期連続の赤字で、赤字額は過去最大となる見通し。同社は創業以来、堅調な売り上げを維持してきたが、20年の純損益は2252万元の赤字(前期は6392万元の黒字)に転落した。
同社の赤字幅拡大は、一部大口顧客の経営難や資金繰り悪化が主因だが、中国全体の燃料電池システム商用化に向けた取り組みが、なお初期段階にあることも見過ごせない要因だ。水素燃料技術は国内の主流ではなく、燃料電池システム企業の多くはMEAやセパレータといった中核部品を輸入に頼らざるを得ず、コスト高に見舞われている。水素ステーション設置の遅れも、普及の足かせになっている。
世界情勢の先行き不透明感も影を落とす。だが、過度な悲観論は時期尚早だろう。中国政府による政策的支援が本格化しているためだ。
同国政府は20年9月、FCVの販売補助金を撤廃し、中核技術の開発企業に奨励金を出す制度を導入すると発表。電気自動車(EV)とともにFCVを新エネルギー車の柱として普及させる方針を明示した。21年は北京市や上海市、広東省深セン市などの主要都市も、水素エネルギー関連産業の振興計画を相次いで公表し、水素社会の実現を急ぐ姿勢を鮮明にした。
中国自動車専門家組織「中国自動車エンジニア学会」がまとめた「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」によると、まず25年にFCV保有台数で累計10万台前後、水素ステーション設置数で1000カ所超の達成を目指す。21年末時点でそれぞれ9400台、218カ所にとどまっており、目標との開きは依然として大きい。
21年末時点の億華通の燃料電池システム搭載車両は累計1800台。同社をはじめとする業界の真価が問われるのはこれからだ。
(翻訳・編集 36Kr Japan編集部)
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