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WeChat(微信)が再び重要なアップデートを行った。
1月22日、WeChatバージョン7.0.3がリリースされた。「いくつかの不具合を修正」としか説明されていないが、実は今回のアップデートには重要な項目が含まれている。
まず、WeChatのトップページをスクロールすると、ミニプログラム(WeChat内で動くインストール不要のアプリ)のトップ画面が表示されるようになった。そこには「最近使用したミニプログラム」「マイ・ミニプログラム」のほか、ミニプログラムの検索バーも表示される。
全体的な印象としてはスマホのホーム画面のようだが、見方を変えれば、WeChatの「OS化」がさらに進んだとも考えられる。近い将来、ミニプログラムのトップページでは、スマホのホーム画面に似た機能が投入されるだろう。また、今回のアップデートは、WeChatとミニプログラムの連携強化も意味する。ミニプログラムはもちろん、WeChatのエコシステムや開発者にどのような影響をもたらすのかが、気になるところだ。
WeChatエコシステムの成熟
WeChatミニプログラムに関するデータ統計プラットフォーム「阿拉丁(aldwx.com)」の創業者・史文禄氏は、今回のアップデートについて「ミニプログラムの発展は3段階目に突入した。今回のアップデートはミニプログラムの爆発的な成長を促し、今後3カ月間で業界全体の発展も促進することだろう」と見解を述べている。
ミニプログラム専用のトップページの登場は、ミニプログラムの継続率、定着率といった問題を解決する糸口となるかもしれない。
一般的に、ミニプログラムは開発コストが低い反面、定着率を上げることが難しい。ユーザーはミニプログラムを利用するものの、ほどなくして別のミニプログラムに乗り換えてしまう。史氏もこの点を「ミニプログラムの致命的な問題」と認めている。
2018年12月末までのデータによれば、ミニプログラムの使用頻度は前年と比べて54%上昇した。ユーザーの翌日継続率も34%から54%に上昇。ミニプログラム内のミニゲームの継続率は翌日60%、7日54%、30日43%だ。
今回のアップデートでミニプログラムの露出機会が増えれば、ミニプログラムの認知度は向上し、ユーザーの使用習慣も育まれる可能性がある。ミニプログラムから情報やサービスを入手する習慣が身につけば、当然のことながらミニプログラムの定着率を高めることができる。
第二に、ミニプログラムはWeChatのエコシステムをさらに成熟させる可能性を持っている。
以前、WeChatはモーメンツ(情報シェア機能)の「いいね」や閲覧数が低下する問題に直面していた。そこで、WeChatはモーメンツを動画に対応させたり、公式アカウントによる投稿の露出頻度を増やしたりすることで、この難局を乗り切ることに成功した。
前出の史氏は、ミニプログラムは今後5年から10年の間、情報やサービスを入手する手段として活躍する可能性がある、と指摘する。さらにWeChatの大規模なアカウント組織と支払いなどの各種サービスが結ばれることで、WeChatエコシステムがさらに一歩完成に近づくものと見ている。
検索機能の強化
WeChatにとってミニプログラム検索機能の強化も重要事項だ。
テンセントの前四半期決算によれば、ミニプログラムのデイリーユーザーは2億人を超えた。現在はミニプログラムの使用履歴や「マイ・ミニプログラム」などがアクセスの中心となっている。
WeChatの「生みの親」として知られるテンセントの高級副総裁・張小龍氏は、今年はミニプログラムでの「検索」を重視する旨をすでに明かしている。オンラインではシェア機能と検索を通じてユーザーを触発し、オフラインではQRコードのスキャンでミニプログラムに容易にアクセスできる体制を整えるという。
また、同氏は検索がミニプログラムの主要なトラフィック源となっていることを明かすとともに、ミニプログラムとアプリの「違い」も強調。アプリは「情報の孤島」であり、「互いに情報交換することはできない」が、「ミニプログラムは同一システム内で一括管理されているため、どのミニプログラム内のコンテンツも直接検索できる」と優位性を述べた。
検索機能によって、ミニプログラムはアプリ間の壁を超えてコンテンツやサービスに直接アクセスができるようになる。今後、WeChatというソーシャルプラットフォームでは、各ミニプログラムのサービス内容やカテゴリなどを個別に識別・検索できるようになるはずで、同時に、こうしたミニプログラムの特長を活かし、あらゆる業界やサービスを包括する一大エコシステムが形成されることになるはずだ。
「バイドゥ天下」にも影響か
ミニプログラムだけでなく、WeChat自体が検索を重視している様子も垣間見えた。
WeChatの検索開発チームの話では、WeChatの検索機能を使用するユーザーは50%増加したという。ユーザーの検索習慣に基づき、WeChatは検索業務をブランド、商品、サービスという3つのカテゴリに分けて展開している。中でもブランド検索機能はリリース以来50%以上のクリック率を誇る。また、検索経由の購入コンバージョン率を高めるために「買い物リスト」も導入した。
ミニプログラムを中心に、WeChatの検索機能は新しい検索シーンを創造している。映画を例にとると、ユーザーは映画レビューサイト「豆瓣(Douban)」、チケット予約サイト「猫眼電影(Maoyan)」、動画配信サービス「テンセントビデオ(騰訊視頻)」に個別にアクセスして検索する必要はなく、WeChat内で検索すれば、映画の評価や内容、チケット購入ページなどを確認できる。検索開発チームは「新しい検索機能では、ミニプログラムの名前だけでなく、サービス内容でも検索できるようにして、ユーザーに最短のアクセスルートを提供したい」と抱負を述べている。
これまで中国の検索市場はバイドゥの天下であった。しかし、少しずつその状況は変わりつつある。
この背景には、モバイルインターネットのボーナス期間が終了して、ユーザー数の争奪がユーザーの利用時間の争奪に転じたことと、WeChatや今日頭条(Toutiao)、タオバオなどのコンテンツ/Eコマースが台頭してきたことがある。
純粋な検索ツールであるバイドゥもコンテンツの拡充に努めている。一方で、WeChatや今日頭条、タオバオなどは、テキスト、動画、Q&A、ライブ配信などでより効率的な検索機能を提供しようとしている。
そのため、バイドゥの「検索+コンテンツ、サービス」という発展ルートは、WeChat、今日頭条、タオバオの「コンテンツ、サービス+検索」という発展ルートと最終的には衝突することになる。
インターネットサービス企業は、自らのエコシステムとトラフィックでユーザーを囲い込もうとしている。WeChat、今日頭条、バイドゥそれぞれに検索機能、ミニプログラムが存在しているということは群雄割拠の時代を迎えつつあることを意味しており、より閉鎖的な環境をもたらすかもしれない。
(翻訳・飯塚竜二)
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