ゲームエンジンの「Cocos」、3D機能強化でメタバース空間の構築をサポート

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ゲームエンジンなど各種開発ツールを提供する「雅基軟件(YAJI Software)」(通称、Cocos)がこのほど、シリーズBで5000万ドル(約65億円)を調達した。出資者は「建信信托(CCB Trust)」「紀源資本(GGV Capital)」「声網(Agora)」など。

Cocosは2011年に設立され、インタラクティブなデジタルコンテンツの開発プラットフォームとして世界をリードしてきた。ゲームエンジン「Cocos Creator」およびゲーム開発のオープンソースフレームワーク「Cocos2d-x」を中心とする各種開発ツールは、世界中の開発者に利用されている。Cocos Creatorは現在、ゲームの開発ツールとしてだけでなく、自動車や教育、建築・インテリア、メタバースなど、さまざまな分野のクリエーターのニーズに応えるクロスプラットフォームエンジンとして進化を続けている。

「Cocos」の開発ツールで作成した3Dデモ

劇的に進化した3D機能

Cocosは2021年、3D機能が劇的に向上した第3世代のCocos Creatorを公開し、同年中にバージョンアップを2回実施した。5月に公開した「Cocos Creator 3.1」は、華為技術(ファーウェイ)傘下の海思半導体(ハイシリコン)との協力によって生み出された。中国で初めて半導体メーカーとゲームエンジン開発企業とが協力したケースだった。ハイシリコンのGPU(画像処理半導体)チームが提供する遅延レンダリングのパイプラインと、米NVIDIA(エヌビディア)の物理演算エンジン「PhysX 」を活用したことで、3Dレンダリング技術が飛躍的に向上した。

翌6月に公開した「Cocos Creator 3.2」は、ファーウェイの独自OS「Harmony OS」に対応する世界初のクロスプラットフォームのレンダリングエンジンとして、同OSを搭載する大部分のデバイスに対応できるようになった。

モバイルゲーム特化型の開発ツールを越えて

CocosのプロダクトであるCocos CreatorとCocos2d-xは、モバイルゲームの開発ツールとして、Unreal Engine(アンリアルエンジン)およびUnity(ユニティ)と並び世界的なシェアを誇る。ゲーム関連のシンクタンク、中国音数協遊戯工委(GPC)によると、Cocos2d-xで開発されたモバイルゲームの中国国内シェアは40%、世界シェアは30%に上る。騰訊控股(テンセント)や網易(ネットイース)、任天堂、仏Ubisoft(ユービーアイソフト)などが提供する数々の人気ゲームも、Cocosの開発ツールを利用して開発されている。

Cocosのエコシステム

Cocosに登録している開発者は203カ国・地域に約150万人、月間アクティブユーザー(MAU)は約30万人、同社の開発ツールによるモバイルゲームのユーザーは約16億人に上る。Githubに公開しているオープンソース・プロジェクトは「いいね」に相当する「star」3万件以上を獲得し、リポジトリのコピー「fork」は1万回以上実行されている。また、中国語、英語、日本語、韓国語およびスペイン語によるテキスト80種以上が出版されている。

Cocosのプロダクトはすでに、モバイルゲームの開発ツールという枠を越え、自動車や教育、メタバースなど分野を跨ぐ開発ツールに進化しており、次世代のインタラクティブなデジタルコンテンツに対応する準備を整えている。

スマートカー、オンライン教育、そしてメタバースへ

スマートカー分野に関して、CocosはADAS(先進運転支援システム)対応のスマートコックピットに不可欠なHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)、VPA(バーチャル・パーソナル・アシスタント)、ビジュアライゼーション、ゲームコンテンツなどに関するソリューションを蓄積してきた。同社は、自動車メーカーや一次部品メーカー(Tier 1)、テレマティクスを手掛ける企業などを対象に、スマートコックピット関連の PaaS(Platform as a Service)を提供している。同社のレンダリングエンジン「Cocos 3D 」を利用したスマートコックピット向けプロダクトの発表も相次いでいる。

オンライン教育分野に関しては、教育者向けに教材編集ソフト「Cocos ICE」を打ち出している。コーディング不要ですぐに作業が開始できる上、強力な互換性とカスタマイズ可能な機能があるため、ほとんどの教育機関のニーズに応えられる。すでに中国市場でのシェアは9割に上るという。

メタバース空間の構築でも「Cocos」が果たす役割は大きい

注目のメタバースに関しては、関連するエンジンの機能を高め、メタバースアプリ開発のハードルを下げようとしている。メタバースを体験するのに必要なVR(仮想現実)などXR(クロスリアリティ)プロジェクトのソースコードによる開発に対応しており、将来的には開発者が3DアプリをVRアプリに素早く変換するのをサポートできるようにするという。バーチャルヒューマンの開発についてはすでに、モデリングや口元の動き、モーションキャプチャー、レンダリングおよび人工知能(AI)との接続を実現し、開発者がよりリアルな3Dイメージを制作するのをサポートしている。

Cocosはこのほど百度(バイドゥ)と提携を結び、メタバース空間を構築するための技術プラットフォームを提供し、共にメタバースの世界を構築していくと発表した。百度は21年末、自社開発したメタバースアプリ「希壤(Xirang)」を発表し、メタバース分野の展開を加速している。

(翻訳・田村広子)

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