ソフトバンクG支援のAIロボット「AGILE ROBOTS」、鴻海子会社から資金調達 商業化加速

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ソフトバンクG支援のAIロボット「AGILE ROBOTS」、鴻海子会社から資金調達 商業化加速

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台湾EMS大手・鴻海精密工業の子会社「工業富聯(フォックスコン・インダストリアル・インターネット)」は4月18日、AI搭載ロボットを開発するユニコーン企業「AGILE ROBOTS(思霊機器人)」に単独で戦略投資したと発表した。今回の投資額は3000万ドル(約39億円)に上り、コ・インベスターとして参加した昨年9月のシリーズCを合わせると投資額は累計3450万ドル(約45億円)となる。フォックスコン・インダストリアル・インターネットは、2018年に「産業のインターネット、5G、スマート製造」等のコンセプトの下、A株市場に上場している。

フォックスコン・インダストリアル・インターネットがこれ以前に発表した財務報告書によると、AGILE ROBOTSはシリーズCで2億2000万ドル(約286億円)調達後に評価額が10億ドル(約1300億円)を超えた。中国のビジネスメディア「晚点(LatePost)」によると、AGILE ROBOTSは昨年から携帯電話EMSの世界最大手にロボットの供給を開始しており、これが決め手となってソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)がシリーズCを主導することとなった。

SVFマネージングパートナーの陳恂氏は当時「AGILE ROBOTSはAI技術とロボット技術を融合し、工業分野で最も難易度の高い問題を数多く解決してきた。同社への投資は我々が中国のハイテク分野の発展を引き続き支援することを示すものだ」と語っている。

AGILE ROBOTSは2018年に設立され、ドイツ・ミュンヘンと北京に本社を構える。AIロボットに重点を置き、技術はドイツのNASAに相当するドイツ航空宇宙センター(DLR)のロボット工学・メカトロニクス研究所(RMC)から提供されている。

創業者の陳兆芃氏は、ハルビン工業大学の博士課程で学び、DLRロボット工学・メカトロニクス研究所で副主任を務めた人物であり、中国の宇宙ステーション「天宮2号」のロボットアームやロボットハンドの研究開発を担当した。

ただ2018年時点では、AGILE ROBOTSが注力する産業用ロボットは大手が占有する比較的成長の遅い市場だった。当時、ロボット業界もコア部品の調達問題と補助金不正の影響で投資環境が急速に冷え込んでいた。

国際ロボット連盟(IFR)のデータによると、2020年の世界の産業用ロボット出荷台数は38万4000台と前年比でほぼゼロ成長であり、2021年には世界の工場で稼働している産業用ロボットはわずか300万台だった。反面、ロボットメーカー大手4社(ABB、KUKA、安川電機、ファナック)の世界における売上高シェアは従来の40%から近年は徐々に上昇して50%となった。

しかし2020年は中国ロボット産業への投資ブームの序章ともなった。国内で操業が再開した後、工場の生産能力拡大に対する需要増加を背景に、中国の産業用ロボットの出荷台数は16万8000台となり、成長率が最も高い市場となった。国内ロボット市場の活況が海外市場の減速や縮小を「相殺」した形だ。

陳氏は従来型の産業用ロボット業界全体にイノベーションの機会が存在すると考えており「従来型産業用ロボットは第一に頭脳がなく、第二に神経系統もなく、第三に比較的自由に動かせる手足もない。AGILE ROBOTSは産業用ロボットのインテリジェント水準を大きく高めている」と語る。

従来の産業用ロボットは主にプログラミングを通じて作動し、多くの場合ルート移動や部品の切断、組み立て、塗装などのライン業務といった軌道が固定された一部タスクにのみ適し、生産ラインの変化や労働者がいる製造環境に適さなかった。陳氏は、これが産業用ロボットが自動車産業以外の3C(コンピュータ、通信、家電)製造、医療などその他の分野に導入される上で最大の障壁になっていると考えている。

AGILE ROBOTSの製品ラインのうち、インテリジェント力制御ロボットとインテリジェントロボットオペレーティングシステムは「感覚制御」と「AI学習による力制御機能」の2つに重点を置く。

感覚制御に関しては、ロボットの各関節にセンサーを備え、力の変化をリアルタイムで感知してフィードバックを行うことができる。同社ロボットの力覚センサーの感度は0.5Nと機敏で高精度、スムーズな動作といった特性を備え、従来のロボットでは不可能だった繊細な操作を実現する。

(風船を使ったAGILE ROBOTS製ロボットのセンサー実験)

学習機能と自己最適化に関しては、従来のプログラミング方式と異なり、利用者が一連の動作をロボットにティーチングできる。たとえば利用者がロボットアームを手に取り、それをポイントAに移動させアイテムをつかんだ後にポイントBに移動してアイテムをドロップすると、ロボットはこれを学習しロボットアームの動作軌道を最適化する。これによってプログラミングの時間を省くことができる。

同社ロボットは主に医療、3C製造、農業で利用されている。術中汎用ロボットアーム「Diana」が神経外科、整形外科、内視鏡などタイプの異なる手術用ロボットに導入されているほか、消費者用電子機器、自動車および川上川下の部品製造にも力制御ロボットが使われている。

異業種で事業展開する同社のビジネスモデルには、産業資本が深く関わっている。これまで同社は6回の資金調達で20億元(約380億円)以上を調達した。今回の戦略投資によって、精密製造分野においてもAGILE ROBOTSの商業化が加速するのは間違いない。(翻訳・大沢みゆき)

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