手術支援ロボットの「精鋒医療」が上場へ 世界的ライバル「ダヴィンチ」不在の中国市場で拡大狙う

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手術支援ロボットの「精鋒医療」が上場へ 世界的ライバル「ダヴィンチ」不在の中国市場で拡大狙う

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手術支援ロボット開発企業「精鋒医療(Edge Medical Robotics)」がこのほど、香港証券取引所上場に向け目論見書を提出した。

目を引くのは、精鋒医療は現在売上高ゼロ、2020年の損失は7936万6千元(約15億円)で、21年の損失は3億4900万元(約66億円)に拡大(公正価値に計上)、調整後の損失はそれぞれ3976万2千元(約7億5500万円)、1億1500万元(約22億円)になることだ。

しかし、同社の背後には、テマセク・ホールディングス、セコイア・キャピタル、博裕資本(Boyu Capital)、聯想之星(Legend Star)といった有名な投資機関が多数控えている。投資総額は21億元(約400億円)を超えており、評価額も約4年間で創業時の4300万元(約8億円)から15億700万ドル(約2000億円)に急増した。

この評価は明らかに、香港での手術支援ロボット企業上場第一号の「Microport Medbot(微創医療機器人)」を意識している。同社の昨年の売上高は215万元(約4000万円)、純損失は5億8400万元(約110億円)、現在の時価総額は27億6000万ドル(約3500億円)だ。

一方、海外の手術支援ロボット大手「インテュイティブ・サージカル(ISRG)」の現在の時価総額は788億ドル(約10兆円)で、昨年の売上高は57億1000万ドル(約7300億円)、純利益は17億ドル(約2200億円)だった。

飛躍的に拡大する市場

現在の手術支援ロボットは、主に患者のベッドサイドに設置する手術用ロボットアーム、医師の操作卓やナビゲーションシステム、画像処理システムなどで構成されている。現状、ロボット支援手術の割合は世界でも全体の2.8%だが、2030年には14%にまで増加すると予想されている。

手術支援ロボットは臨床用途別に、内視鏡、消化器官や尿道など自然開口部を経由する手術、整形外科、その他(血管手術ロボット、経皮的手術ロボットなどを含む)の4つに分けることができる。そのうち最大のマーケットは内視鏡で、泌尿器科や婦人科、胸部外科、一般外科などで多くの手術に使用されている。 2016年から20年にかけて年平均成長率は122%を超え、2番目に多い整形外科に比べ2倍以上の速さと言われている。

精鋒医療は2017年の創業以後、こうした業界の発展とともに歩んできた。創業2年目には、単孔式内視鏡手術支援ロボットSP1000、多孔式内視鏡手術支援ロボットMP1000を開発し、初の動物実験を成功させた。これが同社の代表的な製品となっている。

目論見書

同社の主力製品であるMP1000を構成するのは主に3つの部分、医師の操作卓、手術台、3Dハイビジョン画像システムだ。

MP1000の構成(目論見書より)

手術中、医師は手術室に入る必要はなく、操作卓に座り、3Dハイビジョン画像システムを通じてリアルタイムで術野を見ながら、ロボットアームを操作して手術を行う。手術台には4本のロボットアームが設置され、医師は操作卓から開口位置を決めてアームを挿入し操作する。4本のアームのうち2本は医師の左右の手として機能し、はさみ、剥離鉗子、把持鉗子、超音波メス、縫合器などを装着することができる。3本目のアームには画像システムとつながれた内視鏡が装着され、残る1本には必要に応じて他の機器を追加できる。

MP1000は昨年5月より臨床試験に向けた患者の登録を開始、同年9月に登録を終え、同年12月に臨床試験を完了した。試験群・対照群各52名、計104名の被験者が登録され、手術が実施された。

目論見書
目論見書

注目されるのは、MP1000はどの指標を見ても、ライバルである世界トップの手術ロボット「ダヴィンチ」の「Si サージカルシステム」に見劣りしないことだ。

精鋒医療のもう一つの主力製品であるSP1000は単孔式内視鏡手術支援ロボットで、消化器官や尿道などの自然開口部からの低侵襲手術に使用できる。アームを1本しか持たず、アーム内部に複数の器具が搭載されており、ひとつの筒を使って手術を行う。

SP1000の構成(目論見書より)

現在、ダヴィンチの「SPサージカルシステム」は、世界で唯一、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けた単孔式内視鏡手術支援ロボットで、2018年第3四半期に商品化された。しかし、同製品はまだ中国国家薬品監督管理局(NMPA)では承認されていないため、中国市場ではMicroport Medbot、「北京術鋭技術(Beijing Surgerii Technology)」が開発した単孔式手術支援ロボットと精鋒医療のSP1000が競合する形となっている。

精鋒医療では、主力製品である内視鏡手術支援ロボットのほかにも製品開発の幅を広げている。今年1月には、アーム2本の気管支鏡手術ロボットの初代プロトタイプの開発を完了、動物実験も実施した。同社によると、今年中に型式試験を開始し、来年には登録臨床試験を行う予定という。

目論見書より

同社は深圳に総面積8000平方メートルの製造拠点を構え、年産能力は80台、19年に試験生産を開始した。生産能力を拡大するために上海に総面積8万平方メートル超、年産能力500台以上となる拠点を設ける計画だ。

一方でMicroport Medbotの株価は、昨年11月のIPO以降46%下落した。時価総額も190億元(約3600億円)と、Pre-IPOの評価額225億元(約4300億円)から下がっている。急激に冷え込む市場環境の中で、精鋒医療は15億ドル(約1900億円)の評価額を維持することができるのか、見守る必要がある。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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