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農業のデジタル化に取り組む「麦麦趣耕科技(Maimai Agriculture Joy Technology)」がエンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達し、評価額1億元(約19億円)となった。出資は楚徳資本、逐星資本、神農未来資本が主導した。
麦麦趣耕科技はデジタル化を通じて農業のインダストリアルチェーン全体をまとめ、生産者と消費者をつないで、農業の生産性や生活の質の向上を促す。今回の資金調達後は企業向けスマートアグリテック(テクノロジーで農業の課題を解決していくこと)のサービスプラットフォーム事業を重点的に展開していく。
中国で農業のデジタル化を推進しているのは主に、農業関連の大手企業や中央政府・地方政府からの投資だ。農業関連大手企業とは「北大荒農墾集団(Beidahuang Group)」「新疆生産建設兵団(Xinjiang Production and Construction)」などの国有系事業体で、農業のデジタル化を推進するために多額の資金を投じてインダストリアルチェーンをアップグレードさせており、年あたり十数億元(200〜300億円台)もの予算を充てている。政府系の投資は中央政府が専門のファンドを運用し、地方政府が具体的なデジタル化を進めていく。昨年、第14次五カ年計画で「農業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する要求」が公布され、今後は各級政府による農業DXに特化した予算が3兆元(約57兆6500億円)を超えると推算されている。
麦麦趣耕科技の李楠CEOによると、米国やイスラエルなどの農業先進国と比べ、中国は農業のデジタル化やインテリジェント化で大きな成長の余地が残されている。まず挙げられるペインポイントは、ごく少数の農場を除き、中国の農業生産者はいまだに手書きの帳簿をつけていることだ。また多くの場合、信頼に足る統計システムを持たず、生産者の直感や経験に頼った農作が行われており、生産性が低いままだ。
例えばハウス内で農薬を散布する場合、現代的なスマートシステムを使えばハウス内の虫の数や空気の状態、土壌の状態などの重要な要素をモニタリングし、農薬使用のタイミングや量を制御できる。しかしこれを人の判断や操作だけに任せると、効果が保証されないばかりか作物の品質も保証されない。
農業がデジタル化に向かう趨勢に合わせ、麦麦趣耕科技では消費者向け事業と技術系事業の両輪で事業を展開している。
「麦麦星球」は2019年に始動したプロジェクトで、消費者向けの農産物販売プラットフォームは開始3カ月でユーザー数が100万人を突破した。現時点でユーザーは累計200万人を超え、生態系農業(自然の生態系を生かした農業)を実施する全国の100以上の農場と提携し、高品質で安全な有機食品を提供している。
20年初め、コロナ禍の影響を受け、李CEOは顧客獲得コストと資金調達の必要性がボトルネックになると判断した。そこで事業戦略の重心を企業向け事業に移した。現在は企業向けに農業関連の技術や生産・販売関係のサービスを提供しており、重点事業として推進している。最先端のIoT、AI、ビッグデータ、衛星リモートセンシングなどの技術を活用し、農業生産の精密管理と可視化診断をサービスとして提供する。さらに自社農場も経営しており、そこで積み上げた技術的経験をもとにした農業技術実用化のテンプレートを提供し、関連の各種プロダクトを中国の現状により即したものにしている。
国を挙げて農業のデジタル化を推し進める過程の中で、アリババやバイドゥ(百度)、ファーウェイなどのテックジャイアントも農業のデジタル化サービス市場に参入する準備を進めている。そんな中、いかに差別化を図るかが麦麦趣耕科技の注力すべき課題となっている。テックジャイアントは政府の企業ブランド認証では先発者優位を持ち合わせているが、農産物の生産には一定のサイクルがあるため、プロダクトの実用化にプロセスマネジメントやアフターサービスを徹底することは難しく、提供するプロダクトも過度に標準化されてしまう。
麦麦趣耕科技はより柔軟なカスタマイズができるサービスを提供しており、いちごやブランド米「五常大米」など人気の農産物を手始めに、個別の農産物に特化したアグリテック製品の提供をスタート。優れた成果を出し、好評価を得ている。
今後もテクノロジーを活用して農業や消費を支援するインテリジェントな生態系プラットフォームの構築を進めていく。テクノロジーと消費を独自にかけ合わせたビジネスモデルで、中国の農業のデジタル化推進を加速していく。
(翻訳・山下にか)
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