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これまで映画の世界にしか存在しなかった「空飛ぶ自動車」が、間もなく現実のものになるかもしれない。
一部海外メディアによると、米航空機大手ボーイングが先日、無人運転による空飛ぶ車、すなわちスカイカーの試験飛行に成功したという。さらに、オランダや中国のメーカーでもスカイカーの開発が進んでおり、今年中にも納車開始の見込みとのことだ。
空中を飛行するスカイカーは、道路交通から解放される新たなモビリティとして各社が注目する領域だ。
世界初の量産モデルが登場
スカイカーの量産化については、オランダのスカイカー開発企業PAL-Vと中国の吉利集団(Geely Holdings Group)が世界でも一歩先を行く存在だ。両社とも、まもなく量産車の販売を開始する。
PAL-Vは昨年3月のジュネーブ国際モーターショーで、初の量産モデル「PAL-V Liberty」を公表。今年の同モーターショーでも同車種のパイオニアエディションを発表した。価格はEU圏で49万9000ユーロ(約6300万円)で、90台の限定販売となる。
一方、吉利集団は2017年に米テラフージア社を買収、完全子会社化し、翌2018年に「世界初の量産型スカイカー」と銘打って購入予約の受付を開始した。テラフージアCEOのクリス・ジャラン氏は「2019年にも納車を完了する」と述べている。吉利はさらに、2023年に垂直離着陸が可能な世界初のモデルを発表する計画だ。
自動車・航空機各大手やスタートアップまでが参入
スカイカーの開発については、既存の自動車メーカーや航空機メーカーなど世界各社が立て続けに参入している。
英アストンマーティンは昨年、「ヴォランテ・ビジョン・コンセプト」のスタディモデルを発表。2020年に量産に入るとしている。フォルクスワーゲン傘下の「イタルデザイン」とアウディも昨年、共同で「Pop.Up Next」を発表した。昨年11月にコンセプトモデルの試験飛行に成功している。
欧州航空機大手エアバスは、2020年までに量産モデルの試作機を完成し、10年以内に実用化する計画。ボーイングは昨年7月に「Boeing NeXt」部門を立ち上げ、本格的な航空モビリティ開発を再開した。
ライドシェア業界からも参入の動きが見られる。米Uberは2020年に飛行タクシー「Uber AIR」の飛行実験を実施する計画で、2023年にも数都市で商業運用を開始する予定だ。
スタートアップへの出資を通じて同業界へ参入する大企業も複数存在する。中国IT大手テンセント(騰訊)は独スタートアップ「Lillium」へシリーズBで9000万ドル(約100億円)を出資、同社は今年、初の試験飛行を行う予定だ。米インテル・キャピタルは独ドローンメーカー「Volocopter」へ出資。2017年9月、ドバイで試験飛行プロジェクトをスタートした。
グーグルの共同創業者ラリー・ペイジ氏が出資する米スタートアップ「Opener」が開発する「Black Fly」は、自家用飛行機操縦士免許不要(筆記試験の合格は必要)の1人乗りモデル。年内にSUV並みの価格で発売予定だという。
空飛ぶ自動車の実現を阻む障壁
空飛ぶ自動車の開発は確かに進んでいるが、実用化にはいくつかの問題点も存在する。米テスラのイーロン・マスクCEOは、その騒音と安全性に懸念を示した。
しかし、問題は徐々に解決されつつある。騒音については、Uberが開発中の飛行タクシーが「トラック通過音よりも騒音が小さい」と強調する。また、安全性に関しては、テラフージアが自動運転システムとAI技術の併用で安全性能を向上させた製品の発表を控えている。
日本では関連法規の整備も進んでいる。昨年末、経済産業省と国土交通省は、官民共同で策定した「“空飛ぶクルマ”の実現に向けたロードマップの取りまとめ」を公表した。
高額な価格やコストの問題も解決すべき問題だ。米オンライン教育ベンチャー「UDACITY」のスカイカー開発プロジェクト責任者ジェイク・ルシエ氏は「スカイカーの需要が高まれば解決する問題。当面は中小規模のエリア内限定でライドシェアを導入するなどして、1人当たりの出費を抑える方法がある」としている。
ヘリパッドや燃料・バッテリーの供給など、相応のインフラ整備にも時間を要する。現在のバッテリーでは航続距離や積載人数に限りがあるという。ライドシェアにしても明確な商業モデルはまだ出てきていない。スカイカーが普及するにはまだ時間がかかりそうだ。
(翻訳・愛玉)
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