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中国のライブストリーミング業界で二極化の兆しが見られる。
3月上旬、微信(WeChat)は公式アカウント向けライブ配信ツール「騰訊直播」をローンチした。運営元のテンセントはかつて、ライブ配信アプリ「虎牙(HUYA)」と「闘魚(DOUYU.COM)」へ合計11億ドル(約1200億円)出資して確実な成果を得ている。虎牙は直近の決算報告で「2018年通期で黒字を達成した」と発表、闘魚は秘密裏にIPO(新規株式公開)を準備中で、5億ドル(約550億円)の調達を目指しているという。
一方で、倒産に追い込まれたサービスもある。不動産系コングロマリット万達集団(ワンダ・グループ)の王健林会長の息子・王思聡氏が共同創業に携わった「熊猫直播(PANDA.TV)」は、3月上旬、サービス終了となった。22カ月間にわたって資金調達が滞り、7億元(約115億円)の負債を抱え、運営体制も混乱をきたしての結末だった。
ライブストリーミング業界では急速に再編が進んでいる。かといって、業界そのものが廃れていくとという訳でもない。BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のような超大手企業の手によって、仕切り直しが進行していると考えられる。
勝ち組と負け組の二極化
ライブストリーミング業界が上昇気流に乗ったのは2016年。現在も生き残っているサービスは、いずれも苛烈な競争を勝ち抜いてきた強者たちだ。しかし、今後はより残酷な現実が彼らを待ち受けている。
ライブ配信の行く手を阻むのは、ショート動画サービスだ。ライブ配信サービスとほぼ同時に生まれたサービスだが、TikTok(抖音)や快手(Kwai)といったアプリが爆発的な人気を得て、ライブ配信のユーザーを奪っていった。多くのライブ配信運営企業はショート動画との共存関係や補完関係の構築を試みたが、失敗に終わっている。
中国インターネット情報センター(CNNIC)の調べによると、昨年12月時点でライブ配信サービスの利用者数は3億9700万人。前年末に比べ2533万人減少し、ユーザー利用率は6.8%減少した。各種アプリと比較してもライブ配信アプリはほぼ唯一、年平均成長率を下げている。同時期、ショート動画サービスの利用者数は6億4800万人で、ユーザー利用率は78.2%に上っている。モバイルインターネット関連調査企業「QuestMobile」の調べでは、ショート動画アプリはインスタントメッセンジャーに次いで利用時間の長いアプリになった。
ショート動画の台頭と同時に業界再編がはじまったライブストリーミングは、勝ち組と負け組の二極化が進んでいる。
虎牙の2018年第4四半期決算によると、同社の月間アクティブユーザー(MAU)は前年同期比34.5%増の1億1660万人で、有料会員は480万人。虎牙に帰属する純利益は前年同期比1900%増の9960万元(約16億円)で、5四半期連続で黒字となった。
2018年1月、「触手直播(chushou.tv)」はシリーズDでグーグルなどから1億2000万ドル(約130億円)を調達した。闘魚と虎牙は同日にテンセントからそれぞれ6億3000万ドル(約700億円)、4億6160万ドル(約500億円)の出資を受けた。虎牙は同年5月にニューヨークに上場。大手の一角を担う「映客(Inke)」も7月に香港に上場した。
これらトップ企業の好調さに対して、出遅れた企業は合併や買収、倒産の憂き目に遭っている。熊猫直播は昨年半ば、資金がショートして従業員への賃金支払いも滞っていると報じられたが、そのころには事業継承の段取りを始めていたとみられる。「花椒直播(huajiao.tv)」は動画共有サービス「六間房(6.cn)」と合併、「一直播(Yizhibo)」は微博(Weibo)に吸収され、「全民直播(QUANMIN.TV)」は熊猫直播と同様、倒産した。
ライブストリーミングは死んだのか?
とはいえ、ライブストリーミング自体が衰退したわけではない。大手企業はさまざまな可能性を探っている。
例えば、テンセントがこのほどローンチした「騰訊直播」は位置づけが明確だ。公式アカウントによるコンテンツの拡充と、コンテンツの収益化を狙ったものだという。
ライブ配信は、長編動画、ショート動画とともに三大動画コンテンツの一つとして、コンテンツエコシステム形成には不可欠な要素だ。SNSやコンテンツメディアにしても、ECにしても、動画の導入は逆らえないトレンドとなっている。ECのタオバオ(淘宝)、短文投稿サイトの微博、マッチングアプリの「陌陌(MOMO)」、掲示板サイトの「百度貼吧(Baidu Tieba)」、ニュースアグリゲーターの「今日頭条(Toutiao)」など、いずれもユーザーが投稿をする際にはライブ配信が選択できる。
ライブ配信は広告やEC、ゲームと同様に収益を得られるサービスであり、IT各大手にとってはビジネスツールの一つとなりつつある。
ライブ配信の「ギフト(投げ銭)」を主な収益として上場した企業にとって、ライブ配信事業は金のなる木だ。虎牙の2018年第4四半期の売上高は15億500万元(約250億円)で、ライブ配信事業による売上高が95.80%を占めた。陌陌の同期の売上高は5億3600万ドル(約590億円)で、ライブ配信事業による売上高が75.93%を占めている。テンセント傘下で音楽配信事業を手がける「テンセント・ミュージック(騰訊音楽)」の2018年第1~3四半期の売上高は135億8800万元(約2200億円)で、ギフトを主な収益源とするソーシャル・エンターテイメント・サービス事業によるものが売上高の70%を占めている。
ECプラットフォームにライブ配信機能を導入する場合、人気ライバー(配信者)による販促効果が期待できる。タオバオの場合、昨年は81人の人気ライバーによって1億元(約16億円)以上の売り上げをけん引したという。彼らの影響で売り上げた商品は、ファッション、コスメ、ジュエリー、育児用品と多岐にわたる。タオバオのコンテンツエコシステムを統括するシニアディレクターの聞仲氏は、「今後3年でライブ配信サービスがタオバオにもたらす取引高は5000億元(約8兆2000億円)規模になるだろう」としている。
ライブ配信事業を手がける「歓聚時代(YY)」の李学凌董事長は、「ライブ配信は収益化の手段として広告よりも先を行っている。ユーザーの使用感を損ねないからだ」と述べる。また、ライブ配信の有料化も進んでいるため、ライブ配信をめぐる状況は今後も変わってくるだろうと同氏は予想している。
(翻訳・愛玉)
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