IoTの主導権巡り、スマートスピーカーで勝負に挑むバイドゥとアリババ

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2019年、スマートスピーカーをめぐり大手企業が火花を散らしている。

4月17日にバイドゥ(百度)は突然、新製品のスマートスピーカー「小度(Xiaodu)人工智慧能音箱1S」を発表した。同製品は昨年6月に発表された「小度音箱」のアップグレード版で、赤外線リモコンや音声通話・メッセージなどの機能が初めて搭載され、価格は149元(約2400円)だ。

中国ネット通販大手アリババグループもその翌日の4月18日、スマートスピーカー「天猫精霊(TMALL GENIE)」の新製品4モデルを発表した。それぞれ、ディスプレイ付きの「天猫精霊CC」、ディスプレイなしの寝室向き「天猫精霊方糖R」、化粧鏡をかたどった女性向け「天猫精霊QUEEN」、そして中国の電子地図・カーナビメーカーの「高徳軟件(AutoNavi)」とタイアップした車載用「天猫精霊高徳版」で、価格帯は699元(1万1000円)から1499元(2万4000円)の間だ。

バイドゥはこれに先んじて昨年3月および11月に車載用やディスプレイ付きのスピーカーを発表しているが、アリババも今回初めて同様のスピーカーを発表し、家庭向け・自動車向けデバイスの領域に進出した。

販売台数は外せない比較指標だ。アリババは、天猫精霊が18カ月で1000万台売れた世界初のスマートスピーカーだと発表した。その一方でバイドゥも2019年の目標販売量を1000万台としている。

「Vコマース」にシフトするアリババとサービスに重きを置くバイドゥ

補助金や人材発掘、製品ラインナップの拡充などスマートスピーカー市場ではアリババとバイドゥが熾烈な競争を繰り広げている。これらの大手企業の目標は、短期的には1000万台規模のハードウェアを切り口としてECや検索などの事業を拡大することであり、長期的には、コミュニティ、家庭、車などの広大なIoT分野を網羅することだ。

天猫精霊はすでに、スマートスピーカーとEC、小売業の融合で徐々に成果を上げている。

「天猫精霊のユーザーの70%がショッピングにスマートスピーカーを利用している」とアリババ副総裁の陳麗娟氏は明かし、さらに「『音声ショッピング』は天猫精霊の重要な付加的機能で、今後もアップグレードを図り、ユニークな購買体験をユーザーに提供する」と続けた。

その一つが、ミラー型の女性向けスピーカー天猫精霊QUEENだ。直径8インチの化粧鏡のスタンド部分がスマートスピーカーとなっている製品で、国内外14社の化粧品ブランドや百貨店「杭州銀泰百貨」、美容サービス予約アプリ「河狸家(Helijia)」と提携している。ユーザーは音声を通じて上記の企業が提供する製品の購入やスキンケア用品などのトライアルができる。

一方のバイドゥはアリババと異なり、より広範囲なサービスの提供に戦略の重点を置いている。これは、同社のセールスポイントである「検索」と密接に関係している。

バイドゥは数種類のスマートスピーカーをリリースした後、アップルのアプリストアAppStoreに類する事業の構築に力を入れ、開発者をサポートする多数のサービスを提供している。昨年7月、同社は最新版の音声対話型AIシステム「DuerOS 3.0」を発表したが、その発表会には弱冠12歳の開発者・袁翊閎さんが登壇し、プレゼンテーションを行った。彼は独学でpythonを学び、「画像から故事成語を推測する」などのユニークな機能のアプリを開発し、それらはDuerOS 3.0 搭載の「小度」シリーズ製品に導入されつつある。ユーザーがこうした有料アプリを利用すると、彼をはじめとした開発者も収入が得られる。

「DuerOS 3.0は商業化の好循環を生むことに成功した。これは里程標とも言える進歩だ」と、DuerOS事業部総経理の景鯤氏は語る。

現在、DuerOSのプラットフォームには、個人、組織を含めた1万7000組以上の開発者が名を連ねており、ユーザーの需要に応えるさまざまなアプリやサービスの開発が期待されている。

IoTを推進する大手企業

大手企業はスマートスピーカー市場を重要な戦場と見ているが、「スピーカー」そのものはIoTのゴールではない。

「対話型AIデバイスは製品の販売数ではなく、購入後の検索利用回数によって評価される」と景鯤氏は述べ、さらに「DuerOSのようなAI音声アシスタントはスピーカー専用ではなく、より多くの家庭向けハードウェア製品に導入される見込みがある」と続けた。

2月、バイドゥはホームシアターを兼用するスマートスピーカー「小度電視伴侶(Xiaodu TV Mate)」を発表し、3月には中国家電大手ハイアールとの提携によるDuerOS搭載の家電製品を発表した。

バイドゥが今年2月に発表した「小度電視伴侶」

バイドゥとアリババの両社は多様なハードウェア製品のIoT化に取り組んでいるが、大手各社はいずれも独自のノウハウで開発を進めているため、企業間で互換性を持たせるのは容易ではない。例えば、消費者がバイドゥの小度在家、アリババの天猫精灵、小米科技(シャオミ)の「小愛同学(Xiao AI)」を購入すると、それぞれの専用アプリをダウンロードする必要が生じる。また、各企業間で利益を共有する関係がないため、いわゆる「IoE(すべてのインターネット)」は望めない。また、スピーカーやテレビシステムのような家庭向けデバイスに限定しないなら、IoTの利用領域は無数のシーンに及び、デバイスの種類や数も格段に多く、Wi-FiやBluetooth、Zigbeeなどの互換性のある通信プロトコルを用いる必要があり、種類も多岐にわたり複雑になる。

「ハードウェアの各ブランド間で互換性を持たせるのは非常に難しく、各社はそれを実行するだけの余力もない。各企業は、それぞれのハードウェア製品について彼らと競争関係にない第三者によって互換性を備えるようにするしかない」とスマートホーム事業を手がける「雅観科技(Argrace)」の林偉CEOは語った。
(翻訳・虎野)

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