中国、生体認証に3D指静脈 安全性・安定性に利点

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生体認証技術といえば普及率の高い指紋・顔・虹彩認証が広く知られているが、静脈などを利用した生体認証も異なる特性を生かし特定の分野で活用されている。

「雲天瀚科技発展(CloudID)」は三次元の指静脈認証技術およびソリューションの開発に注力する企業だ。このほど、シリーズAで北京能源工業互聯網研究院から数千万元(約数億~十数億円)を調達した。

創業者の湯振華CEOは過去にテック分野で複数の起業経験がある。2018年に指静脈認証技術の技術的特徴とビジネスの将来性に目をとめ、三次元の指静脈認証アルゴリズムの研究に注力すべく雲天瀚を設立した。2019年に重要な技術ブレークスルーを果たし、21件の特許を保有している。湯CEOによると、現時点で同社は三次元の指静脈認証技術を有する中国で唯一の企業だという。

指静脈認証は血液が特定の波長の光を吸収することを利用した技術で、特定の波長の光を指に照射して鮮明な静脈パターンを抽出し個人認証を行う。湯CEOによると、指静脈認証はほかの生体認証技術に比べ、安定性や安全性が高いことが特徴だという。例えば、指紋認証は指がぬれていたり、皮がむけていたり、指紋が薄かったりすると認証が難しくなるが、指静脈なら同じ状況下でも安定した認証が可能となる。しかも三次元の指静脈認証は多角的に撮影した画像を使用するため、二次元の指静脈認証よりも高い安定性を誇る。

これまで指静脈認証技術が発展するうえで価格と製品サイズがネックになってきたと湯CEOは説明する。同社は2018年の設立以降この課題に取り組んできた。まずサプライチェーンやチップ調達を最適化することで指静脈認証モジュールの価格を引き下げた。「過去の入札では、指紋認証モジュールが1500元(約3万円)、指静脈認証モジュールが3000元(約6万円)ということもあったが、現在では10分の1ほどの価格にまで引き下げることができた」。製品サイズについても、指静脈認証モジュールの小型化をここ数年の重点プロジェクトとし、産学研連携を通じて製品サイズを類似品より30%以上小さくすることに成功、使い勝手を大幅に向上させた。

現在、雲天瀚の製品はこの分野のニーズを抱える企業にモジュールを提供するという、法人向けのビジネスモデルを採用している。指静脈認証技術の高い安全性・安定性により、同社の顧客は軍事産業や国産品代替を進める国内メーカー、家電メーカーがメインだ。湯氏の話では、すでにファーウェイや「中国電子(CEC)」の国産代替技術エコシステムと提携を結び、コンピューターのセキュリティ強化において協業している。家電分野ではスマートドアロックやスマートフォンを中心に展開する。スマートドアロックでは指紋より指静脈の認証が安定しており、「高齢者や子どもなど指紋が薄い人には指静脈認証のほうが使いやすい」のだという。スマートフォンについても2つ目の試作機がすでに完成している。

雲天瀚は収益の大部分を軍事産業と国産品代替市場から得ており、今後はスマートホームなど消費者向けビジネスにも大きな可能性を見込んでいる。「現時点で指静脈認証は指紋や虹彩ほど一般的ではないが、これから知名度が高まるにつれて一般消費者が指静脈認証を利用する機会も急速に増えていくはずだ」と湯CEOは語った。

(翻訳・畠中裕子)

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