AirPods生産の中国「Goertek」、アップルから取引切られ窮地?

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AirPods生産の中国「Goertek」、アップルから取引切られ窮地?

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中国の音響部品メーカー「Goertek(ゴアテック)」が8日夜、海外の主要顧客からこのほど、受注している製品の組み立てを中止するよう通知があったと発表した。このことが同社の今年の売上高のうち最大33億元(約640億円)に影響すると予測している。33億元は、同社の2021年の売上高(監査済み)の4.2%に相当する。

同社の発表によると、当該顧客からの他製品の受注に関してはこれまで通りだという。

中国証券監督管理委員会による「上市公司信息披露管理弁法(上場企業の情報開示に関する管理方法)」最新版の第3条では、情報開示の義務を負う者は適時、法に則り情報開示の義務を履行しなければならず、開示する情報が偽りなく、正確で完全、簡潔・明瞭で、平易でわかりやすく、虚偽や誤解を招く表現、重大な記載漏れがあってはならないとしている。しかし今回のGoertekの発表では、受注していた業務が中止になった理由には言及せず、「このほど」などあいまいな表現で事実の核心に触れておらず、情報開示の面でもコンプライアンス違反が問われるおそれがある。

発表では「海外の主要顧客」や組み立てを受注していた製品について具体的な名前を記載していないが、業界ではこの顧客がアップルであり、組み立て中止となった製品はワイヤレスイヤホン「AirPods」だとされ、中止の理由は「歩留まり率の虚偽申告」とされている。

Goertekの株式は9日の取引開始直後にストップ安となり、60億元(約1170億円)以上が一気に蒸発した。

「信用破産」に至る可能性も

Goertekにとって致命的になるのは受注を失うことでも、33億元の売り上げを失うことでもなく、企業としての信用を一気に失うことだ。

Goertekはこれまで9年をかけて技術を磨き続け、超小型エレクトレットコンデンサーマイクなどの分野で世界トップクラスのメーカーに成長した。2010年にようやくアップルからの受注を獲得し、その後は段階的にアップルからより重要性の高い発注を受けられるようになってきた。しかし、長年かけて築き上げてきた信用が崩れ去ろうとしている。

「Goertekは来年、新規案件は受注できない可能性が高い。現行の案件も他社に奪われるかもしれない」。Goertekに近い関係者はこのように述べ、「ワイヤレスイヤホンの組み立て生産はラックスシェア・プレシジョン・インダストリー(立訊精密工業)に、部品製造はAACテクノロジーズ(瑞声科技)に移ると考えるのが自然だ」とした。

アップル製品のアナリストとして知られるミンチー・クオ氏が調べたところ、ラックスシェアが生産体制をすでに拡大し、独占サプライヤーとしてAirPods Pro 2の組み立て生産を請け負ったことがわかったという。

前出の関係者はGoertekの今回の生産中止の理由として、確かに歩留まり率の虚偽申告があったと明かしている。しかし、フォックスコン(富士康)の事例でも分かる通り、歩留まり率の虚偽申告は製造請負業界では暗黙の了解で行われているという。海外メーカーから求められる条件が厳しいため、受発注側双方で合意したはずの数字よりも実際の歩留まり率が低いのが常態だという。

「それでも今回のGoertekに関しては、広範囲に不良品を出したなど比較的深刻な問題が起こった可能性がある」。前出の関係者は個人の見解としてこのように述べた。

アップルがGoertekにとった措置は、「見せしめ」であると業界内では解釈されている。

サプライチェーン関連の関係者は、Goertekが今回「製品変更通知(PCN)」を怠った可能性があると指摘する。サプライチェーン管理におけるPCNとは、製品設計や製造プロセスに変更があった場合、関連部署から審査・承認を受ける必要があることを指す。

Goertekはアップルからの受注を失ったことで190億元(約3700億円)の在庫評価損を出すおそれがある。

中国紙・証券時報(Securities Times)は電子業界のアナリストの見解を紹介し、アップルはサプライヤーに生産設備のための資金や技術を提供するかわりに設備やソフトウェアの所有権はすべてアップルに帰属するとしており、資産のチェックもアップルの責任者が担当することになっている。つまり、アップルとの提携関係が終われば、サプライヤー側はアップル関係の全資産を減損処理することになる。

タッチパネルメーカー「OFILM(欧菲光)」も、アップルのサプライヤーから外れた後の2020年度(1〜12月)決算で27億7000万元(約540億円)を減損損失として計上している。そのうちアップル関連事業にかかる減損損失が25億8000万元(約500億円)で、93.04%を占めている。

Goertekはサプライチェーン川下の大手企業を顧客とする戦略を採ってきた。中でも最大の顧客であるアップルの関連事業が40%以上を占めるまでになっている。しかし大口顧客に過度に依存すれば、企業は自己制御力を失い、経営も脆弱になる。アップルが再びGoertekへの信頼を取り戻すことがなく、今後すべての発注を取りやめれば、Goertekの経営の持続可能性に赤信号が灯ることになる。

(翻訳・山下にか)

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