ポータブル電源で世界シェア2位に躍進。中国「EcoFlow」設立5年でユニコーンになったわけ(上)

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ポータブル電源で世界シェア2位に躍進。中国「EcoFlow」設立5年でユニコーンになったわけ(上)

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キャンプなどアウトドアシーンだけでなく、停電などもしもの時にも活躍するポータブル電源の需要が高まっている。中国の業界団体が発表したリポートによると、世界のポータブル電源の出荷台数は、2016年にはわずか5万2000台だったが、21年には約90倍の483万8000台となった。しかも、その9割は中国メーカーの製品だった。

業界トップは2011年設立の「深圳市華宝新能源(Shenzhen Hello Tech Energy)」(以下、Hello Tech)が展開するポータブル電源ブランド「Jackery(ジャクリ)」で、20年の世界シェアは16.6%で1位、21年の売上高は23億1500万元(約460億円)だった。

これを猛追するのが2017年設立のスタートアップ​企業「EcoFlow(エコフロー)」だ。正式名称は「深圳市正浩創新科技(Shenzhen EcoFlow Technology)」。20年の世界シェアは6.3%で2位、21年の売上高は16億元(約320億円)近くとなっている。

EcoFlowは2021年6月、シリーズBでセコイア・キャピタル・チャイナや高瓴創投(GL Ventures)、中金資本(CICC Capital)などの著名投資機関から資金調達し、評価額10億ドル(約1400億円)のユニコーン企業となった。ある投資家によると、同社は現在新たに資金調達を進めており、評価額が200億〜300億元(約4000〜6000億円)に跳ね上がる可能性があるという。また、すでに上場の準備を始めているとの情報もある。

EcoFlowの社員によると、社内では2022年の目標売上高を40億元(約800億円)に設定し、Hello Techを追い越そうと全力をあげているという。

設立わずか5年で業界トップクラスのポータブル電源ブランドに成長し、ユニコーン企業となったEcoFlow。その成功の要因と今後の行方を探ってみたい。

製品開発至上主義

ポータブル電源の需要は、まず海外市場で高まり始めた。当初、中国のポータブル電源業界を支えた越境電子商取引(EC)型の企業は、開発力や製造力が十分でない場合が多かった。

新エネルギー業界に詳しい孫華氏は「越境EC型企業は外観のデザインだけを行い、製造・加工は国内の受託製造企業に頼り、既存の顧客層と販売チャネルを通じて商品を販売する場合が多い」とした上で、Hello Techをはじめとする越境EC型のメーカーは、マーケティングの巧みさで業績を伸ばしているとの見方を示した。

Hello Techは典型的な越境EC型企業だ。2021年末時点の従業員数は851人で、うち開発・技術スタッフは2割強だった。一方、EcoFlowは全従業員約1000人のうち開発スタッフが4割を占める。50人のスタッフからなるデザインチームも抱えている。一般的な越境EC型企業とは異なり、製品開発に注力していることが読み取れる。

その背景には、創業者の王雷氏の経歴がある。王氏は香港大学大学院で機械工学を専攻し、新エネルギーを用いた蓄電・電池技術について研究した。博士課程を修了した王氏は、2014年にドローン(無人小型機)世界最大手のDJIに入社し、電池開発部門を立ち上げた。

「EcoFlow」創業者の王雷氏

王氏率いる電池開発部門は、当時の新型ドローンの航続時間を20分から30分以上へと伸ばすことに大きく貢献した。2017年、王氏は共同創業者3人(うち2人はDJI出身)と共にEcoFlowを設立した。

EcoFlowは2019年に発売したポータブル電源「DELTA 1300」で、2つの目玉機能を打ち出した。1つ目は2時間でフル充電できる「超急速充電」で、他社製品の3〜4倍のスピードを誇った。2つ目は電子レンジなどの家電も使えるパワー。DELTA 1300に太刀打ちできる他社製品はなかったため、6999元(約14万円)と比較的高い価格も受け入れられた。

同社は現在、ポータブル電源だけでなく、太陽光パネルやポータブルクーラー、モジュール式の電源システムなども取り扱っている。

「EcoFlow」のポータブル電源と太陽光パネル

クラウドファンディングで海外市場をつかむ

EcoFlowの強みは急速充電などの技術力だが、成長の理由はそれだけではない。クラウドファンディングを利用して市場の反応を確かめ、ユーザーをがっちりつかんだのだ。

2018年、米国のクラウドファンディング(CF)サイト「Indiegogo」で同社初のポータブル電源「RIVER 370」を予約販売し、108万ドル(約1億5000万円)を売り上げた。さらに、翌年発売したDELTA 1300が、EcoFlowの海外での人気を不動のものにした。こちらも米CFサイト「Kickstarter」で2662人のサポーターを集め、目標額の5万ドル(約700万円)を大幅に超える280万ドル(約3億9000万円)を売り上げた。

その後、「RIVER 600」や「DELTA Pro」も、Kickstarterと日本のCFサイト「Makuake」で先行発売した。電池容量3600Wh(ワット時)以上のDELTA Proは、Kickstarterで1218万ドル(約17億円)と1回の資金調達に匹敵する額を売り上げた。

「EcoFlow」の大容量ポータブル電源「DELTA Pro」

クラウドファンディングは製品をお披露目する最初の舞台にすぎない。EcoFlowは製品を正式に発売した後も、さまざまなチャネルを通じて消費者に製品を届けようとしている。アマゾンや楽天など大手ECサイトや自社サイトなどのオンラインチャネルだけでなく、オフラインチャネルも重視している。

創業者の王氏はメディアの取材に応じた際、「ポータブル電源は安い品物ではない。消費者は使い勝手を重視する」とした上で、「さらなる成長を目指すためには、オフラインでのプロモーションや製品を体験してもらうことが不可欠になる」と述べた。

現在、EcoFlowは欧州の小売店800店余りと取引があるほか、米ウォルマート(Walmart)や米コストコ(Costco)などと提携。中国国内では、アウトドア用品大手の中国「三夫户外(Sanfo)」や仏「デカトロン(Decathlon)」と提携している。

海外の展示会に出展する「EcoFlow」

EcoFlowの販売スタッフは現在100人を超えており、中国国内でカスタマーサービスやライブコマースなどを担当するチームのほか、日本や北米、欧州、アジア・アフリカ・南米を担当するチームがあるという。

下篇:新製品に全力投球+注目集まる住宅用蓄電池

(翻訳・田村広子)

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