中国新興企業、新素材「グラフェン」で脱日本依存 蓄電装置に活用

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新エネルギー産業が爆発的に拡大し、産業の川上に技術的突破をもたらしていることは言うまでもない。耐高電圧・高エネルギー密度のスーパーキャパシター(電気二重層コンデンサ)用グラフェンを主力製品とする中国スタートアップ企業「材啓新材料」は量産試験を終え、まもなく本格的な量産・納品段階に入る。すでに初めての資金調達も終え、約1000万元(約2億円)の出資を得た。

グラフェンは2004年に2人の英国人科学者が発見した物質で、最も薄く、最も硬いナノ材料として世界で知られる。厚さはわずか0.335ナノメートルで、頭髪の20万分の1に相当する。超薄でありながら硬さは同規格の鋼鉄の200倍で、電気伝導・熱伝導に優れている。

放熱フィルムや発熱繊維など、グラフェンがスマートフォンメーカーやアパレルメーカーなどで活用される例は決して珍しくない。しかし、高品質グラフェンを川上産業で実用化するにあたっては、まだ研究室と川下市場のはざまで宙に浮いている状況だ。

創業者の黎剣輝氏によると、現在の市場で「グラフェン」として量産されているものの多くが実際はグラフェンの誘導体である酸化グラフェンで、厳密に言うところの炭素原子の二次元構造体ではない。これではグラフェンの持つ本来の薄さ、硬さが発揮されないという。

材啓新材料はこれまでに耐高電圧で高エネルギー密度のスーパーキャパシター用グラフェンの開発に成功しており、生産量150トンの生産ラインを建設中だ。同社のスーパーキャパシター用グラフェンは水系電解液の中でも200F/g(ファラド毎グラム)と、質量に対して高い静電容量を発揮し、3万サイクルのループ試験を実施した後でも静電容量に明らかな減衰は見られなかったという。試験では電位窓が3Vなら34Wh/kg(ワットアワー毎キログラム)、3.5Vなら45Wh/kg、4Vなら60Wh/kgと超高エネルギー密度を実現している。

具体的な活用を川下から始めるにあたり、材啓新材料は日本企業に独占されているスーパーキャパシター市場に着目。現在の活性炭に替わりグラフェンを電極材料にすることを考えた。スーパーキャパシターとは従来のバッテリーにかわる可能性のある新たな蓄電装置で、充放電の過程で化学反応を起こさず、静電界で物理反応を通じて電力を蓄え、放出するものだ。

スーパーキャパシターは化学反応で生じる劣化を考慮せずに済み、ごく短時間に大電流を流しながらも熱を発生させない蓄電装置だ。サイクル寿命はリチウムイオン電池の100倍にあたる100万回にも達する。最も知られるところでは、わずか数十秒で充電可能な路線バスや高速列車の制動エネルギー回生システムに導入されている。中商産業研究院(ASKCI)の予測では、中国のスーパーキャパシター市場は今年にも200億元(約3900億円)規模に達する。

スーパーキャパシターは物理反応によって電気を蓄え、リチウムイオン電池や鉛蓄電池は化学反応によって電気を蓄える

スーパーキャパシターは電極材料がコスト全体の30〜40%を占め、性能の優劣も左右する。主な材料は活性炭、金属酸化物や導電性高分子だ。最も多く使われる活性炭は90%を輸入に頼っており、大部分が日本の化学メーカー大手クラレから輸入されている。

「スーパーキャパシターは短時間で充放電ができるという特性があり、多くのシーンに利用可能だ。しかしコストがネックになり、これまで大規模に用いられることがなかった。コストで強みのある材啓新材料なら新たな導入シーンを切り開くことができ、もはやグラフェンを研究室だけに閉じ込めておくことはなくなるだろう」と黎氏は述べている。

(翻訳・山下にか)

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