中国新興企業、港湾運送の完全無人化達成 100台規模の無人運転トラックを常時稼働

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

日経スタートアップ注目記事

中国新興企業、港湾運送の完全無人化達成 100台規模の無人運転トラックを常時稼働

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

港湾運送の無人運転ソリューションを手がける中国スタートアップ企業「斯年智駕(Senior Automation)」が、シリーズA+で1億元(約20億円)以上を調達したことがわかった。出資を主導したのは水木国鼎投資管理(Tsinghua Innovation Ventures)、容億投資(Winreal Investment)で、辰韜資本(Estar Capital)なども参加。調達した資金は研究・開発への投入拡大と港湾運送分野での無人運転事業の開拓、新たな実用化シナリオの開拓に充てる。

斯年智駕は2020年4月に設立され、港湾運送全般における無人運転ソリューションとその運営サービスに特化したプロバイダーだ。従業員数は150人で、うち110人が研究開発人員だ。コアメンバーはいずれも自動運転業界で10年以上研究開発に携わってきており、中国で最も早くから物流分野を手がけてきている。

斯年智駕の創業者、何貝氏

同社の何貝CEOは「2022年は斯年智駕にとって『一気に数をこなした』1年だ。今年は中国の6大港湾で100台規模の車隊の第1陣を投入した。実践を数多く積み上げることでビジネスモデルの地ならしができ、業界内で安定した高評価を得られて、競争優位性をアピールしていくことができる」と述べた。

中国は大陸国家であり、海洋国家でもある。管轄海域は約300万平方キロメートル、海岸線は3万2000キロで、長江や黄河などの内陸水路とあいまって発達した港湾システムを形成している。中国交通運輸部の公式サイトによると、中国全土の港湾における取扱貨物量は2021年に前年比6.8%増の155億4500万トン、コンテナ取扱量は同7.0%増の2億8300万TEUだった。

取扱量が増え続け、市場のニーズは幅広くなっている。何CEOによると、コンテナ運賃が1TEUあたり20元(約400円)とすると、完全に閉鎖された港湾エリアではコンテナ運輸市場が約60億元(約1200億円)の収入に、ばら積み貨物運送市場が240億元(約4700億円)に達する可能性がある。さらに港湾内にあるふ頭・工業団地の間で生じる短距離運送市場も約1200億元(約2兆3700億円)規模になる。

港湾では24時間体制の不休の作業が続く。運送ドライバーに求められる条件も高く(大型トレーラーや大型トラックを運転できるA2クラスの運転免許証、最低6年の運転経験)、港湾で働くドライバーは常に不足している。さらに、この5年で運送ドライバーの賃金はほぼ倍増し、月6500元(約13万円)から1万2000元(約24万円)になった。つまり、港湾エリアにおける無人運転のマーケットは大きい。中国の港湾でのオートメーション浸透率は1%未満で、大方は有人のコンテナトラックが貨物を運んでいるのが現状だ。ドライバーによる運送が行き詰まる中、無人運転とその他の機械設備を高度に協調させて作業効率を高め続けていく必要がある。

設立以来、斯年智駕は港湾での無人運送を大規模に実用化することを主に目指してきた。港湾エリアでコンテナ運送を担う無人運転トラックや重機運搬車を独自に開発している。

画像出典:斯年智駕

20年4月に設立した同社は、翌年6月には浙江省寧波市の榭招ふ頭に有償で製品を提供する契約が決まり、設立わずか1年で商用化に漕ぎ着けた。現在では寧波港、唐山港、珠海港、蘇州港、アモイ港、宿遷港などで100台規模の無人運転トラックを常時稼働させている。

ただし、運送作業を無人運転で解決するだけでは、港湾の完全な無人化を実現するにはほど遠い。無人運転の導入は難しくはないが、業務全体を無人化させるのは難しい。

業務無人化にはまず、港湾のオペレーションシステムに関連するマッチング、通信ミドルウェア、冗長化、HILテストなど複数の技術的課題を解決する必要がある。また、港湾業務は標準化されてはいるが、それでも日々の運営では、運搬車が誤ったコンテナを載せてしまうなど標準外の状況も多く発生する。何CEOは「こうしたトラブルは人手で対応するしかなく、統一された対処法が存在しない。我々も石橋を叩いて渡っている状況だ」と述べる。

斯年智駕の無人運転車両は21年末に運転補助員の乗務を撤廃し、完全無人運営を常態化させている。

(翻訳・山下にか)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録