注目の新技術「メタサーフェス」に挑む中国企業、車載分野やAR/VR分野で新境地を開拓

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中国・上海市で開催されたレーザー技術の見本市「LASER World of PHOTONICS CHINA 2023」で、フォトICを開発する中国メーカー「Alpha Cen(上海匕令科技)」がメタサーフェス(自然界にはない反射特性を示す人工構造体)を採用したチップやソリッドステート式LiDAR(全固体化LiDAR)モジュールなどを展示した。

Alpha Cenの展示製品:ソリッドステート式LiDARモジュール

今回展示されたメタサーフェスを使った製品は家電や近距離センサー、AR・VR、サービス用・産業用ロボット、医療用電子機器、インテリジェント運転システムなど幅広い分野での活用が見込まれるという。

Alpha Cenは2021年に設立され、ICと互換性のあるプロセスを採用してマイクロ・ナノ光学のメタサーフェスを回路、光源、光検出器などと統合し、従来の光電子システムの軽量化、コンパクト化、インテリジェント化を進めている。

同社は半導体プロセス開発、製造技術、パッケージングなどに関わる特許を保有している。メタサーフェスをレンズに応用した「メタレンズ」の量産にも成功しており、まずは近距離センサーやロボット掃除機、マスクレス露光装置などを手がける企業向けに提供されるという。また、2023年10~12月期にはアクティブ式メタレンズの量産を開始する予定だ。

Alpha Cenの展示製品:アクティブ式メタサーフェスを使ったメタレンズ

従来のカメラレンズは複数の球面レンズや非球面レンズを重ね合わせた構成になっていることが多く、体積が大きくなるうえ、各レンズを個別に組み立てて調整を行う必要があった。メタレンズは無数のナノスケールの微細構造を用いた平面レンズで、複数レンズを重ね合わせた従来の機能をレンズ1~2枚で実現できるため、組み立て工程を減らし、低コストかつコンパクトに仕上げることができる。アクティブ式メタサーフェスはこの微細構造体をさらに電気制御できるようにしたもので、ソフトウエアで定義可能な汎用型の多機能光学デバイスとして機能する。メタレンズを活用できる分野は幅広く、高い解像度と薄さが求められるスマートフォンや顕微鏡、カメラなどに使用できるほか、構造化光やホログラフィー、レーザー加工などの分野でも高精度かつ柔軟なコントロールが期待できる。

Alpha Cenの展示製品:パッシブ式メタサーフェスを使ったメタレンズ

メタサーフェスは今、ゼロからのブレークスルーを実現するために各分野で大規模な試みが行われている。調査会社ラックス・リサーチは、メタサーフェス製品の市場規模が2030年までに100億ドル(約1兆4000億円)を突破すると予測している。

報道によると、アップルやサムスンなど世界の大手スマホメーカーは、2024年にもメタレンズの導入を予定しているという。アップルはiPadに使用しているDOE(回折光学素子)の代わりに初めてメタレンズを搭載する見込みで、韓国LGも車載用にメタレンズを採用すると発表している。こうした動きを受けて、市場もメタレンズに大きな期待を寄せている。

Alpha Cenは、メタレンズが今後2~3年のうちにスマホやロボットの分野で大きく成長し、その後は車載分野やAR・VR、医療用内視鏡などへと拡大すると見込んでおり、小型で視野角の広いレンズに対する大きなニーズがメタレンズの可能性をいっそう広げることになると考えている。

(翻訳・畠中裕子)

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