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IT企業の農業への参入は珍しくなくなった。アリババが豚を、テンセント(騰訊)がガチョウを、「京東(JD.com)」が鶏を飼育し、 「美団(Meituan)」が野菜を栽培している。そのほかにもファーウェイ(華為)、バイドゥ(百度)がビッグデータとAIを駆使して農業を支援している。このようなインターネット、モバイルインターネット、クラウドコンピューティング技術とIoT(モノのインターネット技術)を一体化したまったく新しい農業が誕生した。その背景には急速な成長を見せているロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現するスマート農業市場がある。
国際コンサルティング機構(Research and Market)の予測によれば、2025年までに世界のスマート農業の市場規模は182.1億ドル(約1兆9213億円)に達する。成長が最も速いのはアジア太平洋地区の中国、インドなどの国だという。しかし、その恩恵にあずかるのは容易ではない。中国の金融情報サービス「万得(Wind)」のデータによれば、スマート農業の分野において、中国の上海、深圳のA株市場に上場している企業が20社存在し、時価総額は1700億元(約2兆5375億円)を超えるという。
中国最大の国営化学商社「中化集団(SINOCHEM GROUP)」傘下の「中化現代農業有限公司(SINOCHEM AGRICULTURE HOLDINGS,略称『中化農業』)」はスマート農業を率先して進める企業の一つだ。「MAP(Modern Agriculture Platform)」戦略を軸に、「MAP智農」、「MAP慧農」の2種類のアプリを発表している中化農業は、農地・農作物の状態を詳細に観察し、きめ細かく制御できる精密農業(Precision Farming)サービスプラットフォームの構築を目指している。
「MAP智農」は主食穀物の栽培を主とする大規模農場向けに、GIS(地理情報システム)や衛星リモートセンシング、1キロメートルスケールのメッシュ気象データを通じて独立した天気予報を提供し、リモートセンシングによる耕作地の巡回、作物の生育状況分析等の栽培管理と指導を行っている。解像度1メートルのリモートセンシングのデータは15秒に1回という頻度で解析され、得苗率、雄株の除去、病虫害の状況などの情報が40万ヘクタール以上の田地に提供されている。「MAP智農」のデータベースは300万平方キロメートルの耕地面積をカバーしている。
一方、「MAP慧農」は、リンゴ、ミカン、ブドウなど果樹園に導入され、同様にGIS、衛星リモートセンシング、気象分析等の技術に基づいて環境アラート、水と肥料の一体化、農作物の保護など植栽管理プラットフォームを提供している。また病虫害を識別する農業技術ミニツールである「慧眼ミニプログラム」を開発し、農作物保護アドバイスプランの提供等を行っている。現在、生産物の品質管理追跡も可能な「MAP慧農」は約2万ヘクタールの植栽園にサービスを提供している。
これら2種類の商品には現在、個人版と企業版があり、ソフトウェア・ハードウェアの導入料とサービスの年間使用料を主な収入源としている。
同社CIOの沈冰氏は、精密農業において最も中心的となるのは高精度の位置情報であることから、中化農業が使用しているGIS技術は全てスマート農業事業部が自社開発していると語る。将来この技術は同社のコアコンピタンスの一つとなり、その他アプリケーション開発企業に基礎技術として提供することも可能だと語っている。
マーケティングにおいては、主にMAPのオフライン販売ネットワークと同社の種子や化学肥料の販売ネットワークを活用している。沈冰氏は、同社商品の普及推進の面においてはまだ難点があると話している。中化農業の顧客の30%以上はスマートフォンを使えず、端末を上手く操作できないため、適切な顧客サポートシステムを導入する必要がある。同社のスマート農業事業部には約40人強の人員がおり、その半数以上が農業技術と基礎プラットフォーム技術をバックグラウンドに持つ開発スタッフである。
(翻訳・桃紅柳緑)
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