中国産コスメが人気沸騰中 台頭の秘密とは

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中国産コスメが人気沸騰中 台頭の秘密とは

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毎年6月に行われるEC大型イベント「618セール」。アリババ集団が運営するECサイト「天猫(Tmall)」では今年、589もの中国ブランドが取引高を前年同期の2倍以上に増やした。前年同期比20倍以上の増加となった中国コスメブランド数は183となり、中国産コスメが驚くべきスピードでシェアを伸ばしていることが分かる。

今年上半期(1~6月)にニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」の発表した「コスメユーザー考察リポート」によると、2018年の化粧品小売売上高は前年同期比9.6%増の2619億元(約4兆円)。2019年には市場規模が4906億元(約7兆3600億円)に達する見通しだ。化粧品を始めとする日用品メーカー大手「上海家化(Shanghai Jahwa)」董事長兼CEOの張東方氏はメディアのインタビューに対し「日本、韓国におけるメーキャップの浸透率はそれぞれ80%と90%だが、中国はわずか30%だ。中国のコスメ市場は急速に成長しており、将来的に大きな発展の余地がある」と語った。

こうした成長を追い風に、中国産コスメが急速に台頭している。

新規のコスメブランドが初めからコスメカウンターやオフラインの実店舗を持つことは難しく、オンラインがマーケティングの主戦場となる。ソーシャルEC「小紅書(RED)」からショート動画共有アプリ「TikTok(抖音)」、Q&Aサイト「知乎(Zhihu)」、動画共有サービス「ビリビリ動画(bilibili)」まで、若者が集まるコミュニティの至るところで国産コスメのマーケティングが展開されている。

小紅書、知乎、微信公式アカウント

国産コスメブランド「完美日記(Perfect Diary)」は今年の618セール開始からわずか1時間で、仏ランコムなどの高級ブランドだけでなく手頃な価格を売りとする米メイベリンなども抑え、天猫のコスメ売り上げ1位になった。

完美日記の創業者である黄錦峰氏はフェイスマスクを主力とするスキンケア企業「御泥坊(UNIFON)」のCOOを務めていた。御泥坊のフェイスマスクは至るところに広告を出すマーケティング手法で一気に国産フェイスマスクの売り上げトップに立った。御泥坊の親会社である「御家匯(Yujiahui)」の2019年第1四半期(1~3月)決算報告によると、TikTokやライブ配信、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーを起用したマーケティング手法を重要な戦略と位置づけており、売上高に占める販売費の割合は43.8%に上った。

完美日記がマーケティングの主戦場とする小紅書は、これ以上ないほどコスメ販売に適しているといえる。完美日記が小紅書の公式アカウントを開設したのは2017年9月。当時は目立たないコスメアカウントの一つに過ぎなかったが、現在では169万人ものフォロワー数を誇る。これに対し、メイベリンは15万人、同時期に人気に火がついた国産コスメ「瑪麗薫佳(MARIE DALGAR)」も7万4000人に過ぎないことからも、完美日記の人気がうかがえる。

KOLプロモーションを行う第三者プラットフォームによると、小紅書の中でインフルエンサーに広告記事を依頼する価格は1本あたり2500元(約3万8000円)から5万元(約75万円)。人気の高いインフルエンサーを起用しているため完美日記の小紅書でのプロモーション費用は250万元(約3750万円)を超えるとみられる。

KOLの記事に触発され、一般ユーザーも記事を書くようになった。一般ユーザーの記事から優れたものを選べば、マーケティング費用を大幅に削減することができる。完美日記はこうして独自のプロモーションサイクルの形成に成功した。

小紅書やWechat(微信)の公式アカウント以外に、知乎もコスメブランドのマーケティング戦場となりつつある。小紅書の記事が広告だということに気づいた研究熱心な女性ユーザーが、Q&Aサイトである知乎でコスメの知識を仕入れようとするようになっているのだ。知乎での完美日記に対する口コミは良いものと悪いものが半々で、上位に表示される回答は肯定的だが、下位の表示には不満の声も多く見られる。

ビリビリ動画、ライブ配信

ビリビリ動画でプロモーションを行う強みは、全てが動画であるため、ユーザーがその世界に入り込みやすいことだ。ビリビリ動画はもともとユーザーの定着率が非常に高く、動画の制作者はほぼ一般ユーザーである。大量の広告にさらされる中、人々がより知りたいと考えるのは一般ユーザーの反応だ。新興の国産コスメブランド「橘朵(Judydoll)」に関する動画はビリビリ動画内に1000件以上あり、動画の制作者が使用してコメントすることで、多くの注文につながっている。

橘朵の動画ではよくこのような視聴者のコメントが字幕として表示される。「このアイシャドーはずっと前から買い物カートに入れていたけど、ようやく購入する決心がついた」。動画がもたらすリアリティーが、視聴者に購入を決意させる決定打となるようだ。

口紅自動販売機、実店舗

瑪麗薫佳はすでに100店舗以上の直営店を展開する。ここ数年、オンラインでのマーケティングとオフラインの実店舗との融合が奏功し、ネット上でも人気の高いコスメブランドとなった。

2017年7月、瑪麗薫佳は天猫と提携して口紅の自動販売機を設置。3日間で口紅1500本以上を売り上げた。これに続き、無人コスメショップ「TO GO」もオープン。消費者は無人店舗で自分が試してみたい化粧品のサンプル2種類を9.9元(約150円)で試すことができる。ロボットにコスメに関する質問をしたり、AR(拡張現実)でバーチャルにメークアップしたりすることも可能。従来型の店舗とは異なる方式で、消費の付加価値を高めている。

新時代の消費者は進んで新しいものを試し、その体験をシェアする。小紅書やビリビリ動画といったコミュニティに出入りしているのは、まさにこういった消費者だ。オフラインでは、ショッピングセンターが依然として若者が集まる場所となっている。口紅販売機は消費者のニーズを満たし、予算に限りのある国産コスメブランドが専用カウンターを設置するコストも節約できる。

短期間で台頭してきた国産ブランドはマーケティングチャネルの上では突出したパフォーマンスを見せているが、ブランドストーリーが成熟しているとはいえず、時間の流れとともに新しいブランドに簡単に取って代わられる可能性もある。今後もこれらのブランドは絶えず消費者に訴求し続ける必要があるだろう。
(翻訳・山口幸子)

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