「中国で勝てれば世界で勝てる」。自動運転技術のMobileye、中国市場開拓を加速

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「最終的にコストが成功の鍵を握る」

「ライバルは地平線機器人(Horizon Robotics)のような中国本土の企業だ」

自動運転技術を開発する「Mobileye(モービルアイ)」の創業者、総裁兼CEOを務めるアムノン・シャシュア氏はメディア取材の中で、自社を取り巻く市場情勢について率直に語った。

Mobileyeは自動運転分野では古株だ。1999年に設立され、チップにアルゴリズムを組み込んだ一体化モデルで世界の自動車メーカーにスマート運転のひな形を提供した。これまで1億5000万個のチップを売り上げ、その3割近くを中国市場が占める。

Mobileyeは2014年にニューヨーク株式市場で上場した。17年にインテルに153億ドル(約2兆2800億円)で買収されたが、5年後の22年10月にナスダックに上場し時価総額は230億ドル(約3兆4200億円)以上となった。

チップにアルゴリズムを組み込んだ販売モデルは簡単で効率的だが、自動運転技術の進歩に伴い市場で受け入れられたのは自動車メーカー独自のアルゴリズムと閉ループデータの組み合わせだった。この流れを受けて英NVIDIAと地平線機器人はオープンアーキテクチャのチップを提供し、自動車メーカーが自動運転用のソフトウェアを自社で開発できるようにした。

自身の販売モデルを変えようとしなかったMobileyeは勢いを失い、第4世代のチップ EyeQ4を発売後、ハイエンド製品のプロモーションに多大の労力を費やさなければならなくなった。

中国自動車大手・吉利控股集団(Geely Holding Group)傘下の高級EVブランド極氪(ZEEKR)の「ZEEKR 001」は、中国で最初にMobileyeの製品を搭載した車種だ。Mobileyeの開発したEyeQ™5チップ2個、自動高精度地図生成システム「REM(Road Experience Management)」などが搭載されている。しかも極氪汽車が7億5000万ドル(約1117億円)を調達したシリーズAにシャシュア氏も出資者として参加していたのだ。

つまり、Mobileyeは投資という手法を通じて中国で新製品を広めようとし始めている。シャシュア氏は取材の中で、中国市場への挑戦を腕試しと捉えていると話した。欧米諸国で人々が重視するのは運転支援システムの安全性だが、中国では利便性が重視され、技術に関してももっとオープンだという。Mobileyeにとって中国は最も重要な市場で、ハイエンド製品は他国市場に先駆けてまず中国で販売するとし、中国で勝てれば、世界でも勝てるとシャシュア氏は語った。

極氪汽車が自社開発したシステムはまだ十分ではないが、Mobileyeの協力を得て技術開発のペースではすでにトップの自動車メーカーを猛追している。上海市と杭州市では高速道路走行時の運転支援機能が利用できるようになっており、市街地でのスマート運転もいま急ピッチで進めている。Mobileyeは極氪汽車のほか、吉利傘下のSmartやPolestar(極星)などのブランドとも提携している。

Mobileyeは吉利系列のメーカーにチップを販売するだけでは満足していない。Mobileye関係者は、吉利系以外の中国メーカーからプロジェクトを獲得したことが近く発表されるだろうと語り、シャシュア氏の3日間の中国出張もこれに関係したものだと指摘した。Mobileyeが北京に設立した研究開発センターには120人以上の従業員が在籍する。

中国には高度な自動運転技術を開発するMobileyeの取引先は多くないが、自動車メーカーにとって価値があるのは明白だ。業界関係者は「Mobileyeは海外市場につながるスイッチのようなもので、海外進出のチャンスをうかがう自動車メーカーならMobileyeを検討するだろう」と話す。

シャシュア氏はコストの優位性を生かして中国市場で戦っていく考えだ。中国のライバル企業のセンサーやプラットフォームは高性能だが価格も高いのに対して、Mobileyeのシステムはコストがずっと低い。シャシュア氏は全ての鍵を握るのがコストだとして「コストカットに成功した企業だけが生き残る」との見方を示している。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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