水素を効率よく貯蔵・運搬するLOHC技術、コストカット目指す中国新興が資金調達

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水素エネルギー分野のスタートアップ「陝西氫易能源(HydroTransformer)」がこのほど、シリーズAで1億元(約20億円)近くを調達した。国中資本(Guozhong Capital)が出資を主導し、西安財金(Xi’an Finance)も参加した。調達した資金は生産ラインの建設や研究開発に用いられる。これ以前にも、セコイア・キャピタル・チャイナのシードファンドと重塑集団(Refire Group)がそれぞれ主導するシリーズで2回の資金調達を実施した。

氫易能源は、西安交通大学化工学院の方涛教授が2009年に立ち上げた基礎研究チームから生まれた企業で、水素の効率的な貯蔵・運搬を実現する液体有機水素キャリア(LOHC)技術の研究に世界でも早い時期から従事してきた。

創業者の王斌CEOによると、軽くてかさばる水素を貯蔵するための最適解が液体有機水素キャリア技術だという。「技術普及の初期段階ではシステム集積度が低く、プロセス反応が遅いなどの問題が生じるが、継続的な研究開発とプロジェクト実施を重ねることで解決できる」とし、「この技術がひとたび臨界点に達すれば、既存の水素供給システムを刷新して、大きな価値を生み出すことができる」と述べた。

同社は、複素環式芳香族化合物を用いた水素貯蔵法を採用している。王CEOは、液体有機水素キャリア技術の確立には、水素キャリアと水素化・脱水素化触媒という2つの中核材料が欠かせないと語る。

複素環式芳香族化合物は非常に優れた水素キャリアだが、生産コストが高く、1トンの価格が数十万元(数百万円)に上ることがネックとなり、なかなか普及してこなかった。氫易能源は数年をかけて複素環式芳香族化合物を合成する全プロセスを独自開発し、水素キャリアの入手コストを大幅に削減することに成功した。水素化・脱水素化触媒についても、技術チームが10年以上にわたる研究を続けており、同社の大きな強みとなっている。最初の製造工場の建設はすでに始まっており、2024年に操業を開始すれば1日あたり数十トンの水素を貯蔵・運搬できるようになるという。

商用化に向けた取り組みも進めている。現時点で、国電投集団(SPIC)、鵬飛集団(PengFei Group)、舜華新能源(SUNWISE)、海徳利森(Hydrosys)など多くの水素エネルギー関連企業とパートナーシップを結んでおり、2024年以降は商用プロジェクトが順次実施されることになっている。実際に利用が始まれば、液体有機水素キャリア技術を活用して、海上風力発電や砂漠地域での太陽光発電、工業生産などさまざまな場面で生産される水素を安全かつ低コストに貯蔵し、利用先へと効率よく輸送できるようになる。

(翻訳・畠中裕子)

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