高性能かつ低コストのポリイミド樹脂、中国新興が開発 EVや超薄型ガラスまで用途広げる

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高性能かつ低コストのポリイミド樹脂、中国新興が開発 EVや超薄型ガラスまで用途広げる

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高分子材料のポリイミド樹脂(PI)の開発に注力している中国企業「博雅聚力(Boya Poly)」がこのほど、シリーズA++で中科創星(CAS Star)と藍図創投(Lan Fund)から1000万元(約2億円)余りを調達した。

博雅聚力は2020年7月に設立。特殊なモノマーの設計・合成や、理論計算による重合処方やプロセスの最適化をコア技術とし、これらの技術を活用して高性能のポリイミドを開発すると同時、商品化も進めてきた。これまでに、ディスプレー向け透明ポリイミド(CPI)ペーストや、電気自動車(EV)向けの耐コロナ性ポリイミド塗料などを発表している。なかでもポリイミド塗料は、絶縁体の性能を評価する指標の一つ「耐コロナ性」に優れていることから、EV製造大手のサプライチェーン検証に合格し、すでにトン単位の受注を獲得している。

博雅聚力の会長兼代表取締役を務める荘方東氏は、北京大学で有機化学の博士号を取得している。荘氏によると、フラットワイヤーモーターや急速充電技術が普及したことで、EVの絶縁材料にはいっそう高い性能が求められるようになったという。業界では一般的にポリイミド系の絶縁塗料が使用されているが、博雅聚力はポリイミドの性能向上に取り組んだ。その結果、印加電圧±2kVで絶縁破壊に至る時間が800時間以上と、優れた耐コロナ性を備えたポリイミドの開発に成功した。それまでの絶縁塗料の耐コロナ性が印加電圧±1.5kVで200時間だったことを考えると、大幅に性能が高まったことが分かる。

透明ポリイミドフィルム(画像は企業提供)

荘氏の話では、高性能ポリイミドは高価で、これまでは主に航空宇宙産業で使用されていたという。博雅聚力は、新しい重合プロセスにより材料コストを根本から削減して、高性能ポリイミドの用途を民用にまで広げ、多くの活用シーンを開拓してきた。例えば、中国の新エネルギー車大手と提携し、バッテリーシステム向けの結合剤やセパレーター用塗料、バインダーなどを開発するほか、電気制御システム向けの耐熱性絶縁ソリューションを提供している。

博雅聚力はフレキシブルディスプレイにも注力している。同社では超薄型ガラスに透明ポリイミドペーストを塗布する方式を提案している。良好な使用感を保ちながら超薄型ガラスを保護する効果もある方式で、すでに超薄型ガラスと透明ポリイミドを効果的に接着する技術も確立している。以前の報道によると、同社の透明ポリイミドはディスプレイメーカーの検証を終え、小ロットでの出荷を始めているという。

透明ポリイミドと超薄型ガラスを組み合わせた複合材料(画像は企業提供)

今回の出資者である中科創星と藍図創投はいずれも特定業種に投資する産業型ファンドであり、これを足がかりに産業リソースを拡大して、企業とさらなる提携関係を構築していきたいと荘会長は語る。今後は工場の建設を急ピッチで進め、材料配合を最適化することでコスト削減を図る考えだ。2024年末までには、6000トンのポリイミドペーストを製造できる生産ラインが完成し、量産を開始するという。

*2024年3月21日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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