自動検知で設備メンテの効率向上、AI予知保全の中国スタートアップが資金調達

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自動検知による設備の予知保全を手がける中国企業「碩橙科技(Sucheon Technologies)」がこのほど、シリーズCで彬復資本(Befor Capital)から数千万元(数億~十数億円)を調達した。資金は技術改良や販路拡大、顧客開拓に充てられる。

2016年に設立された同社は、自動検知のハードウエアと人工智能(AI)アルゴリズムを活用した設備の予知保全や維持管理などの製造業向けサービスを提供している。

製品ラインには、音や振動、温度データを自動で収集する「SCボックス」、さまざまなデータの収集と分析に使う「多次元データ収集ステーション」、「音響指紋センサー」などのハードウエアのほか、設備維持管理システム、設備資産管理システム、クラウドデータプラットフォームといったソフトウエア、機械聴診、集中監視、生産ライン監視、AI品質検査などのソリューションが含まれる。

設備の予知保全とは、センサーやエッジコンピューティング、AIアルゴリズムを通じて、設備の稼働状況をリアルタイムで収集・処理・分析し、設備の健全性や異常・故障の有無を判定することだ。国際自動制御学会(ISA)によると、設備のメンテナンス不備で工場の生産性は5%~20%低下し、設備停止による損失額は世界で年間6470億ドル(約100兆円)にも上るという。

ファクトリーオートメーション(工場の自動化)で重要な役割を担う予知保全は、設備の健全性を監視しながら故障の初期段階で検知・介入し、重大な事故を回避することで、不必要な損失を効果的に減らすことができる。

碩橙科技の自動検知による予知保全は、ニューラルネットワークや機械学習などのAI技術を組み合わせ、スマートデバイスを使い音(ノイズ)、振動、温度、電流、張力・圧力などのデータを収集・分析する。

同社は、さまざまなシーンや次元のデータをAIアルゴリズムで処理・分析し、適合性が高く活用シーンが広いデジタル維持管理プラットフォームを構築した。

液体輸送ネットワークの監視ソリューション

生産ラインの設備に異常が検出されると、このプラットフォームが異常箇所を特定し、特徴や数値の変化を基に判断を下すと共に、予測結果を導き出す。設備や部品の故障が確認された場合は、部品の交換や機械油の使用といった具体的なメンテナンス方法を顧客に提案する。

碩橙科技は、ハードウエアとソフトウエアの統合ソリューションを中心に事業を展開しており、高精度センサーやエッジコンピューティング、産業用ゲートウェイなどを含むハードウエアの売上高が全体の25%に上る。また、データの可視化および分析、予測・分析リポート、遠隔監視などの付加価値サービスも提供し、生産工程や意思決定の最適化を手助けしている。

生産ラインの設備自動監視イメージ

碩橙科技の荘焰CEOによると、顧客が求めているポイントは大きく5つあるという。具体的には、大きな故障の減少、故障率の低減、通常稼働時の製品の歩留まり向上、スペアパーツ調達の最適化による在庫の減少、生産の安全性にかかわる問題の減少および回避だ。この5つのポイントを通じて、コスト削減と効率化を目指している。

同社は事前準備を含めてわずか2~8週間で、予知保全のソリューションをフルセットで導入できるという。

うち機械聴診ソリューションを導入したある顧客企業では、重要設備の故障を年間8回から4回に減らすことができ、想定外の稼働停止による損失の回避に役立っている。また、設備の健全性を長期的に保てるようになるため、製品の歩留まりにも良い影響を及ぼした。

碩橙科技は鉄鋼・冶金、石油化学、新エネルギー、飲食料品などさまざまな分野にフォーカスし、これまでに鉄鋼の中国宝武(Baowu)や中冶賽迪(CISDI)、発電の国家電力投資(SPIC)、石油の中国石油化工(シノペック)、消費財のP&G、ビールのバドワイザーなど国内外の大手企業にサービスを提供してきた。今年の売上高は2億元(約40億円)を超え、純利益は数千万元(数億~十数億円)に上る見込みだ。

コークス乾式消火設備の稼働状況監視イメージ

現在の従業員は約150人で、うち研究開発担当が65%~70%を占めている。今後は華東エリアと西部エリアの販路開拓チームをいっそう充実させていくという。

*1ドル=158円、1元=約22円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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