投資家が描く中国生鮮ECの未来図 「市場の天井は限りなく高い」

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著名投資機関のトップや起業家が100人近く招かれた「中国投資家未来サミット2019(中国投資人未来峰会2019)」が9月中旬に深圳で開催され、潜在市場の成長機会に関する討論が行われた。

高頻度かつ安定したニーズがあることから、生鮮食品ECは大型プラットフォームが誕生する可能性を秘めた消費分野だ。投資家や企業はこの1兆元(約15兆円)規模の市場に続々と参入しているものの、現時点では過去の失敗例が成功例を上回っている。とはいえ、この市場の天井は限りなく高く、ビジネスのあり方に関してさまざまな可能性が想定できることから、新たなスキームが今も登場し続けている。

以下は生鮮ビジネスの今後の発展性に関する投資家の考えを編集したものである。

生鮮ビジネスの最良スキームとは

「青鋭創投(Edge Ventures)」の創設者でマネージングパートナーを務める呉斌氏は、生鮮ビジネスには、①都市部の中小配送倉庫からの直接配達、②実店舗運営、③コミュニティ単位での共同購入という3つのスキームがあると述べた上で次のように語った。「私の考えでは、共同購入型の成長性は低く、当初からやや補助的なビジネスモデルという位置付けだった。一見すると集客コストや履行コストが低く、損失率も低いため理想的だが、よくよく観察するとSKUは依然として少なく、取り扱う商品は生鮮食品のみにとどまっている。一方で他の二つのスキームではSKUも幅広く、市場からも多額の資金を調達できている。

実店舗の汎用性についてはすでに実証済みで、今後のポテンシャルも大きい。さらなるチェーン化や拡大、また地域を跨いだ経営は、一級都市から四~五級都市までどこでも適用できる。一方で宅配サービスを利用できる社会層は限られており、主に1.5級都市までの若者がターゲットとなりコストも高い。結論を言えば、将来的には宅配サービスと実店舗は併存するが、やはりメインは実店舗であると考える。また共同購入はあくまでも補助的な存在にとどまり、上記のいずれかのスキームと結びつく可能性もある」

IDGキャピタルのマネージングディレクター(MG)を務める童晨氏は「生鮮ビジネスの永遠のライバルは、各家庭のすぐそばにある小店舗だ。個人的には、間接的にこれらの小店舗を活用する2B2Cスキームに将来性を感じている。生鮮ビジネスの最終形態については、今は誰も分からない。だが重要なのは、居住地域ごとにニーズも異なるという点だ。将来の若者が皆フードデリバリーや生鮮食品の宅配サービスを利用するという考えは現実的ではない。だが、大都市の高級マンションに暮らす若者であれば、間違いなくそうしたサービスに対するニーズがあるだろう。このため、各社会層にマッチしたスキームが必要だ」との考えを示した。

今後の先行きは

「Eight Roads China(斯道資本)」のプリンシパルを務める蔡蓉(ベティー・ツァイ)氏はこう述べた。「生鮮ビジネスでは、他の商品ジャンルのように一社が市場を独占するような状況は考えにくい。なぜならニーズは現地ごと、また個人ごとに異なり、調達の現地化も必要な上に履行難度も高く、地域が異なればサプライチェーンのネットワーク効果も生まれにくいからだ。そのため、最終的にどのような構図になろうと、地域ごとに大規模な事業者が現れるのではないかとみている」

また上記の呉氏は「実のところ、ECは最も標準化されたジャンルからスタートしており、最後のジャンルが生鮮食品だといっていい。あらゆるファンドや大企業がこの分野に注目しており、100万ドル(約1億1000万円)規模の資金調達を達成する企業が現れる可能性もある。実店舗型の『誼品生鮮(Yipin Fresh)』や、都市部に中小配送倉庫を設置する『毎日優鮮(MissFresh E-Commerce)』や『叮咚買菜(Dingdong Maicai)』といったスタートアップの企業価値はすでに100億元(約1500億円)を超えている。生鮮ビジネスでは最終的にサプライチェーンの中から利益を捻出するしかないが、サプライチェーンの地域的な独占や複数地域を跨いだスキームについては、個人的にはどちらかと言えば試す価値があるという考えに賛成だ」と語った。

「険峰長青(K2VC)」でパートナーを務める趙陽氏は「コミュニティ単位での共同購入のスキームには大きな参入障壁が存在しないため、今後無数の企業が参入するだろう。現在は第一陣の企業が取引規模、資金調達の面で先発者のメリットをほぼ消化し尽しており、業界の動きは一段落している。今後の段階においては、さらなる取引規模の拡大や効率化の他に、差別化されたサプライチェーンが何より重要になってくる。あらゆる消費プラットフォームまたはECプラットフォームの核心となるのは、以下の二点を除いて他にない。第一に顧客数、第二にサプライチェーンから段階的に捻出する利益だ。生鮮事業は非常に苦しいビジネスであり、粗利率も低く、純粋に生鮮事業のみで利益を出せる企業は実に少ない。このため、各社は取り扱う商品ラインナップの多様化に積極的だ」との考えを示した。
(翻訳・神部明果)

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