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王座に君臨するシャオミ
中国スマートフォン大手「シャオミ(小米科技)」にとって、中国市場は既に最大の出荷先ではなくなっている。シャオミは中国国内市場では低迷しているものの、2014年に進出したインドでの勢いには衰えが見えない。現在、インド市場でシェア28.3%を占め、独走態勢に入っている。
2015年、競合他社の台頭によりシャオミの業績は悪化していた。同年にインド・ニューデリーで初の新商品発表会を実施したが、同社CEO雷軍氏の英語スピーチのひどさで注目を集めた。「Are You OK?(君たち大丈夫?)」と発言した部分は、動画共有サイト「ビリビリ(bilibili)」の二次創作物が集まるコミュニティ「鬼畜区」で編集・合成の素材として使われ続けたほどだ。シャオミはその翌年、売上高を36%減少させ、危機的状況に陥ったが、同年にインドで格安スマホ「Redmi(紅米)Note3」を発売したところ、半年で230万台を売り上げ、インド市場で初めての黒字を達成した。
シャオミはここからインド市場を破竹の勢いで突き進む。Redmiの「圧倒的コスパ」はインドの所得水準にぴったりとはまり、ファンコミュニティの運営も社交的なインド人にマッチしていた。またより重要なのは、シャオミがインドEC急成長の第一波をうまく掴んだことだ。当時インドでは、米アマゾンと印ネット通販最大手フリップカートが市場の覇権を争い、割引合戦を繰り広げていた。そのインドECにおける2017年の流通総額(GMV)のうち、70%が携帯電話を利用したものだった。
オンライン市場での業績が安定したシャオミは2017年、オフライン店舗「小米之家(Mi Store )」のインド展開をスタートさせ、同年末には競合他社を大きく引き離す。
その後、シャオミ以外のスマホメーカーもインド進出を始めた。中国スマホメーカーはわずか2~3年でインド市場で5割以上のシェアを手に入れ、2018年のシェアは60%に達している。
インドがシャオミ、OPPO、vivoの第2の戦場に
ここ1年の世界的なスマホ市場の縮小を受け、シャオミ、OPPO(オッポ)、vivo(ビボ)の中国国内出荷台数は、今年第1四半期から各社ともに前年同期比5%以上の下落を見せる一方で、インド市場では2桁の成長率を維持している。
インド市場がシャオミと「OV」(OPPO、vivo)にとって重要なのは明白で、事実上、既に第2の戦場となっている。
OPPOは今年9月、新機種「Reno 2」をインドで先行発売した。同社のフラッグシップ機が中国に先駆けてインドで発売されるのは初めてだ。
香港の市場調査会社「カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ(以下、カウンターポイントと略記)」のデータによると、2018年にインドで出荷された携帯電話は合計3億3000万台。そのうち、スマホの割合はわずか44%だった。インドのスマホ市場には開拓の余地があり、中国メーカーにとって魅力的な成長市場となっている。
だがインド地元メーカーの力も無視できない。インド国内第2位の通信大手「リライアンス・ジオ・インフォコム(Reliance JioInfocomm)」による「Jio Phone」は、年間2300万台を売り上げている。OSを搭載するこうしたフィーチャーフォンとスマホの中間機種は、販売価格わずか約150元(約2300円)でスマホを超える人気があり、一時は市場シェアでサムスンを超えていた。
今後、地元メーカーがローエンドスマホ市場に参入すれば、中国メーカーとの衝突は避けられない。
中国メーカーは、高い関税率や調達条件を含む厳しい政策に対応し、関税回避のためインドに工場を置いている。だがインドでは部品の供給など本体製造に関するサプライチェーンが未成熟なことが、今後に多くの不確実性を残している。
インドを舞台としたスマホ市場を巡る戦いのハーフタイムショーは始まったばかりだ。
OPPO、vivoの台頭、中国メーカーの戦いは長期戦へ
OPPOとvivoの両社は、シャオミと同時期にインドに進出している。だが、現在の出荷台数は、2社合わせてシャオミ1社とほぼ同等だ。
両社は当初、中国国内と同様のマーケティングを行っていた。実店舗を主軸に、有名タレントをイメージキャラクターに起用し、大型スポーツイベントのタイトルスポンサーになり、小規模店舗を「ローラー作戦」的に展開するなど、マーケティングへの出費を惜しまなかった。両社は2017年だけでマーケティング費用に220億ルピー(約380億円)をかけたとの情報もある。
両社にとってインド市場の急成長は予想外だった。インドの顧客にとって最大のハードルは価格だ。米市場調査会社「IDC」のデータによると、インドではスマホの価格の78%が159〜200ドル(約17000〜22000円)だという。
OPPOとvivoの主力機種の中国国内価格は2500〜3000元(約38000〜46000円)で、高い収益率が代理店に利益をもたらしていた。一方、インドでは主力機種を1000元(約15000円)程度のローエンドモデルとしたため、収益率が低く、代理店は損益分岐点上を行ったり来たりといった状態だった。
インド日刊紙「The Economic Times」は2018年初旬、vivoが2017、18年度でいずれも1億元(約15億円)以上の損失を出したことを明らかにしたと報じた。OPPOとvivoは攻勢を緩めざるを得なくなり、効果の低い広告を削減し、販売チャネルへの利益配分率を引き下げ、2社ともに実店舗を約1万店減らした。この方針転換により、vivoは2018年第1四半期の出荷台数を30パーセント近く減少させたものの、徐々に活力を回復していく。
一方、OPPOの事業展開はvivoよりも急進的で、インドでオンライン専用ブランド「Realme」を打ち出した。Realmeは数カ月で100万台を売り上げ、半年間で市場シェア第4位となり、インドのスマホ市場における2018年最大のダークホースとなった。
Realmeは、シャオミが「 Redmi(紅米)」で行ったブランド発信、マーケティング戦略、価格設定をそのままなぞり、学校に進出し、フォーラムを作り、ファンを育成した。新しい手法ではないが、インド市場には効果的だった。しかもRealmeの価格はRedmiよりも9ルピー(約13円)安く設定されており、Redmiに戦いを挑んでいるのは明らかだった。さらにRealmeは「小米之家」に学び、体験型オフライン店舗も開設した。
今のところ、インド市場におけるシャオミの地位はしばらく揺るがないとみられる。しかし、すでにその成長は鈍化しており、急速に再編が進む市場においてOPPO傘下のRealmeは無視できないライバルとなっている。
vivoのインド法人「vivo Mobile India」の陳志湧副総経理は、インドで開かれた学会での挨拶の冒頭、ヒンディー語で「気長にやろう」と発言した。調整期間を経て、vivoの2019年第1四半期の出荷台数は前年同期比108.4%増となり、インド市場向けに発売した「vivo V15」はハイエンド機市場で最高の人気商品となった。
(翻訳・田村広子)
インドスマホ市場5年戦記 シャオミの君臨、アップルの転落、OVの台頭、勝ち残るのは?(下)
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