ソーシャルEC「拼多多」と「京東」 1500億円割引キャンペーンをめぐり真っ向勝負 

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米国の高級スキンケアブランド「ドゥ・ラ・メール(La Mer)」は10月6日、中国大陸での正規販売チャネルを記した「声明」を自らの微博(Weibo)で発表した。微信(WeChat)でも同じ内容を明らかにしたが、微信の公式アカウントを更新するのは約4カ月ぶりのことだ。

この突然の発表について、業界はソーシャルECの「拼多多(Pinduoduo)」が実施している100億元(約1500億円)購入支援キャンペーンを意識した動きとみている。拼多多は複数のメディアで広告を打ち、La Merの商品も同キャンペーンで大幅に値下げすると伝えていた。

また、独身の日と呼ばれる11月11日のセール「双11」の先行販売を例年より早く開始したEC大手の京東(JD.com)も拼多多と全く同様のキャンペーンを打ち出し、La Merを値下げ対象ブランドに指定している。

100億元購入支援キャンぺーンとは

拼多多は今年6月18日のEC業界のセール「618」で、デジタル製品、化粧品、育児用品などの値下げに100億元の予算を確保した「100億元購入支援キャンペーン」を開始した。

同社は商品の真贋を疑う消費者のために、キャンペーンサイトで正規品の値下げをアピールし、ニセモノ購入に対する補償や純正品保険が用意されている旨を説明している。

中国のECプラットフォームは海外ブランドの出店誘致に加え、海外にも支社を設立しバイヤーをおいており、直接購入や現地サプライヤーとの提携により仕入れコストを引き下げている。

そのため非正規販売プラットフォームの商品は海外版が多くなるが、必ずしもニセモノというわけではない。36Krの記者が試しに拼多多で購入した化粧品を化粧品鑑定アプリ「心心(Xinxinapp)」で確かめたところ本物と判定された。ただ、海外から送られてくる商品は仕入れや物流のプロセスが複雑なため品質を保つことが難しく、ニセモノをつかまされたと感じることも起こり得る。

心心での鑑定結果、商品は拼多多のキャンペーンで購入

オンラインと実店舗の販売価格が統一されている正規販売チャネルよりも、他社のECプラットフォームで売られる商品が安ければ、ブランドは価格バランスが乱されたと考える。La Merも販売チャネルの管理を強化し、利益の最大化を目指す方針を示した。

京東は拼多多を抑え込めるのか

こうしたなか、京東も双11の先行販売で大々的にキャンペーンを開始した。京東集団副総裁の韓瑞氏によると、今回は同社にとって過去最大の割引規模になるという。

京東はキャンペーンを双11期間中のみ行う予定だが、拼多多は「618」からキャンペーンを継続している。キャンペーンの期間に差がある両社だが、商品は果たしてどちらが安いのだろうか。

36Krでは、京東と拼多多のキャンペーン対象として重複するデジタル家電や化粧品、育児用品を選び、各種の値下げ措置適用後の価格を比較した。結果は、拼多多の方が京東よりも安い商品が多く、その価格差には数十元(数百円)から数百元(数千円)のばらつきがあった。

京東と拼多多の100億元購入支援キャンペーン対象商品の価格比較(調査は10月20日) 画像作成:36Kr

キャンペーン期間が短いからといって値下げ額が大きいわけではないようだ。ではいったい京東の資金はどこに使われているのか。

両社のキャンペーンからは、値下げ方式の違いが見て取れる。拼多多は、スマホやPC、デジタル家電、食品、スポーツ・フィットネス用品などのうち、ブランド認知度と客単価が高い商品に集中し、数を絞ってキャンペーン対象に選んでいる。毎日のように商品が入れ替わる上、同一商品でも値下げ額が大きく変動する。

一方の京東は、商品ごとの値下げ額は拼多多より小さいが、対象商品の種類と数が多い。人気が高く、単価の高い商品の購入支援策と在庫確保に力を入れている。かつ低価格商品もキャンペーン対象とし、ヘルスケア、自動車、医薬品などの各種生活サービス用品まで取り揃えている。

地方都市のローエンド市場からスタートした拼多多は、シェア拡大を目指し、高額消費者を増やそうとしている。拼多多の100億元キャンペーンは、まさにこの層の取り込みを狙ったものだ。モバイルビッグデータサービスの「極光大数据(オーロラ)」によると、拼多多が新たに獲得したユーザーのうち44.2%が二級都市以上の居住者で、その割合は上昇している。拼多多によれば、キャンペーン効果で618の受注件数は11億件に上り、前年同期比で300%超の増収となった。

拼多多は引き続き高額消費者へのアプローチを図る。第2四半期の販売費は前年に比べ倍増し、対売上高比率が84%近くに達した。ストラテジー副総裁の九鼎氏は2019年下半期も購入支援策を拡大する意向を示しており、販売費はさらに膨らむ見通しだ。

ユーザー数と売上高の伸びが停滞している京東は、成長中のローエンド市場を失うわけにはいかない。今年は「京東拼購(Pinggou)」から名称を変更した共同購入サービスアプリ「京喜(Jingxi)」が初めて双11セールを実施し、消費者とメーカーを直接結ぶC2M(Consumer to Manufacturing)商品もセールの目玉となる。今年の双11では、「低価好物(廉価な良品)」12億件、C2M商品2億件を販売し、ローエンド新興市場のユーザー5億人にリーチできると見込んでいる。

京東は、受注量が確保できればスケールメリットで配送コストを下げることができる。一方、複数の運送事業者が双11セール期間中の送料引き上げを発表したことは、他社の物流ネットワークに頼る拼多多には好ましくないニュースとなった。

これらを踏まえると、京東と拼多多が実施しているキャンペーンは持久戦となり、当面の間は勝負がつかないと思われる。
(翻訳・神戸三四郎)

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