ハイエンド市場の8割が海外製ー中国・普希環保、国産の高機能ナノ薄膜でシェア奪う

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高機能のナノ複合薄膜を開発する中国メーカー「蘇州普希環保(Proshare Innovation Suzhou)」(以下、普希環保)がこのほど、シリーズAで数千万元(数億円超)を調達した。詠聖資本(Wisemen Capital)が出資を主導し、蘇州科創基金も参加した。資金は新たな生産ラインや工場の建設などに用いられる。

普希環保は2017年に設立され、第3世代ナノ複合薄膜を使った逆浸透膜やナノろ過膜の開発と産業化に注力している。すでに薄膜ナノ複合材料(TFN)膜の開発・応用プラットフォームを構築し、コストパフォーマンスに優れた高機能の分離膜とソリューションを国内外の市場に提供している。

公式サイトより

一般に高機能をうたう膜材料は耐久性に優れ、高い分離性能を持ちながら、低コストで環境にも優しいなどの特長がある。用途に応じて水処理膜や特殊分離膜、気体分離膜など複数の種類があり、水処理や食品・飲料、バイオ医薬、エネルギーなどさまざまな業界で活用されている。

水処理膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、浄水や海水淡水化などに利用される。特殊な分離膜としてはセラミック膜、イオン交換膜、蒸気透過膜などがあり、工業分野の分離プロセスで活用されている。

これまで広く活用されてきた複合薄膜(TFC)は、水処理分野で絶対的な地位を築いているものの、コスト高や低いフラックス性能、エネルギー消費量など改善すべき技術的な課題が多く、環境への負荷が高いという問題も抱えている。加えて、ミドル~ハイエンドの膜材料市場は長期にわたって海外企業の独占状態が続いている。特に高機能の膜材料では、技術面でリードしている欧米や日本の企業が市場を占めており、中国企業は海外からの輸入品に頼らざるを得なかった。

普希環保の創業者である林小鋒博士によると、同社のTFN膜は第3世代プロセスを採用したことで、従来のTFC膜に比べて性能が著しく向上したという。水処理効率や耐汚染性、透過率、親水性が高まり、汚染物の付着も低減された。さらに耐酸性、耐アルカリ性、抗酸化性などの耐化学性能も向上し、特殊な場面における安定性と耐久性が増したほか、付加価値の高い新たな用途を開拓できるようになった。

同社は目下、逆浸透膜、ナノろ過膜、特殊膜、特注膜、限外ろ過膜という5つのカテゴリで12種類の製品を展開している。すでに、薄膜から膜エレメント、システムに至る生産プロセスを確立し、新エネルギーや半導体、石油化学、バイオ医薬、海水淡水化、水道の水質改善、再生水などの産業で広く活用が進んでいる。顧客には中国石油化工(シノペック)や車載電池の寧徳時代(CATL)のほか、金鉱採掘の紫金鉱業集団(Zijin Mining Group)など各業界のトップ企業も含まれる。

林博士は「薄膜市場では次第に国産品がシェアを奪っていくはずだ。国内のローエンド分野はすでに競争が激化し、価格競争に突入している。ハイエンド分野ではシェアの80%以上を海外製品が占めているが、耐熱性や耐洗浄性などまだ解決できていない課題も多い」と語る。その上で、ミドル~ハイエンド分野の薄膜市場には大きなビジネスチャンスがあり、今後5~10年の間に中国ブランドの薄膜が急成長を遂げるとの見通しを示した。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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