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制御可能な核融合技術を開発する中国スタートアップ「星能玄光」がエンジェルラウンドで1億元(約20億円)規模の資金を調達した。招商局創投(China Merchants Venture)と中科創星(CAS Star)が出資を主導し、民銀国際(Minyin International)や博将資本(Bojiang Capital)などが参加した。
星能玄光は2024年3月に設立され、先進的な磁場反転配位(FRC)方式の核融合技術をメインに手がけている。創業者で会長の孫玄氏は2013年から、中国科学技術大学の教授として研究グループを率い、同技術の実践と開発を進めてきた。FRC型核融合は、タンデムミラーを使ってプラズマを強力に閉じ込めることでプラズマの損失を減らし、既存の核融合炉の安定性を高められるため、費用対効果の高い核融合発電所の実現が一歩近づく可能性がある。
世界中でエネルギーシフトが進むなか、核融合発電には大きな期待が寄せられており、核融合炉の市場規模も急速に拡大している。中国の投資ファンドKeytone venturesは、世界の核融合技術市場が2022年の2964億ドル(約46兆円)から、27年には3951億4000万ドル(約61兆円)に成長すると予測する。また米国の核融合産業協会(FIA)の統計によると、24年6月までに中国の核融合スタートアップが調達した資金は総額5億ドル(約780億円)を超えるという。
とはいえ、制御可能な核融合技術は依然として商用化のハードルを越えていない。業界の一部には「10年以内に商用化できる」との声があるものの、「いつになるか分からない」という見方が多数を占める。
世界では旧ソ連で開発されたトカマク方式の核融合炉が主流になっている。これは巨大なドーナツ型の真空容器の中に高温のプラズマを安定した状態で閉じ込める方式だが、プラズマ密度がそれほど高くないため、核融合反応の効率を高めるうえで限界がある。また、核融合炉の構造が複雑で建設費が高くつくほか、安定した核融合反応の維持が難しいといった課題もある。
星能玄光の孫会長は、FRC方式なら弱い磁場でも高い密度でプラズマを閉じ込めることができると指摘する。FRC型の核融合炉は構造がシンプルで、建設にかかる時間や費用を抑えることができるため、商用化に有利な技術と見なされてきた。近年、米国のTAE TechnologiesやHelion EnergyなどがFRC型核融合炉の開発を進めており、業界内でもますます注目を集めるようになっている。
FRC方式は海外で長年にわたり研究されてきたが、中国ではまとまった研究はほとんど行われてこなかった。星能玄光は中国初となる衝突合体型FRC装置を建設し、国内企業としては現時点で唯一FRC方式の実験成功を公表している。
星能玄光は先進的なFRC技術を採用し、独自に開発した三重の閉じ込め環境により、高温高圧状態で長時間にわたるプラズマ閉じ込めを可能にした。同社の劉明・最高技術責任者(CTO)によると、中国科学技術大学で運用されているタンデム磁気ミラー装置をアップグレードした次世代FRC装置の設計と建設が進行中だという。タンデム磁気ミラー装置は運用開始から12年たち、十分なノウハウが蓄積されてきた。同社は今後6~8カ月のうちに次世代装置の建設を終え、1年以内の運用開始を計画している。
孫会長は、エネルギー問題の解決に核融合技術を活用する場合、経済性を考慮に入れる必要があるとし、「当社が開発した三重閉じ込め方式のFRC技術は、従来の技術に比べて経済性に優れているため、商用化が進む可能性が高い。独特な構造を持つFRC装置は、未来の宇宙探査を担う理想的な核融合エンジンにもなりうるはずだ」と語った。
*1元=約21円、1ドル=約155円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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