アクセスデータねつ造で再び炎上 中国版ツイッター「微博」で問題が多発する理由

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最近、人気ブロガーのアクセスデータがねつ造されていると訴えた、自称「深圳の起業青年」の文章が注目を集めている。それによると、女性向けヘルスケア商品の広告を掲載するため、代理店を通じて微博(Weibo)で380万人のフォロワーを持つ「張雨晗YuHan」というブロガーを選んだところ、広告掲載からわずか49分間で広告の視聴回数は12万1000回、「いいね」は数千件、コメントとシェアも100件超に上った。ところが、商品サイトの訪問件数は1ケタにとどまり、商品の販売は全く伸びず広告費が無駄になったという。

この件について微博の管理者は10月17日、「張雨晗YuHan」アカウントの広告受注機能を停止したことを明らかにした。

ネット上ではアクセスデータのねつ造が横行

ニューメディア業界では、アクセスデータをねつ造する事業者の存在が暗黙の了解とされてきた。ニュースサイト「財新網(Caixin)」の試算によると、中国のねつ造事業者は最低でも1000社以上存在するほか、上位100社の売上高は月間200万元(約3000万円)を超え、従事者は累計900万人余りに上る。

マーケティングデータ技術ソリューションを提供する「秒針系統(Miaozhen Systems)」の「インターネット広告異常トラフィックレポート」によると、中国の2018年の異常トラフィックは全体の30.2%を占め、異常トラフィックによる広告主の損失額は260億元(約3900億円)を超えた。特に育児用品、自動車、ファッション情報の専門サイトで異常が多発している。

データ提供元はいずれも「インターネット広告異常トラフィックレポート」

一般消費財メーカーの米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)CBO(最高ブランド責任者)のマーク・プリチャード氏は一昨年、「不透明なメディアサプライチェーンにおいて、我々の広告投入では巨額のロスが生じており、アクセスデータのねつ造や広告詐欺といった問題が存在する」と話していた。P&G大中華圏メディア・ブランド運営総裁でEコマース総裁の許敏氏も、2016年の中国デジタル広告市場での無効アクセスが30%を超えていたと指摘している。

不正と収益の間で揺れる微博

アクセスデータのねつ造はSNS運営事業者にも害を及ぼす。ユーザー数は7億人、1日当たりアクティブユーザー数(DAU)は1億人以上という中国最大のソーシャルメディアプラットフォーム「微博」の第1四半期の広告増加率は、前年同期比66.3%減の12.6%、また第2四半期は前年同期比でわずか0.2%と、微博のリリース以降最も低い水準にとどまった。一方、同時期にDAUは13%増えている。つまり、微博のユーザー1人当たりの商業価値は下がっていることになる。

しかし、アクセスデータねつ造への対応において、微博は身動きが取れない状況だ。3万人の人気アイドルや40万人を超えるKOL(キーオピニオンリーダー)がアカウントを持つ微博は、収益面で彼らに大きく頼っている。微博のビジネスモデルは、ブロガーが微博の広告取引システム「微任務」を使って広告を掲載し、その広告収入をブロガーと微博で分け合うものだ(微博の取り分は30%だという)。

収益と結びついた同社のビジネスモデルが足かせとなり、微博はアクセスデータねつ造の横行および悪貨が良貨を駆逐する現象を食い止められない。表向きには「各種データのねつ造行為を撲滅する」意向を明らかにしているが、違反報告システムや実名制度は未整備のままだ。

微博には優良なブロガーも多いが、広告主にとってはコストに見合わない存在となる。もし真のフォロワー2万人を持つブロガーと、水増しにより200万人のフォロワーを抱えるブロガーの広告見積価格が同じであれば、広告主は後者を選ぶ確率が高いだろう。だが、水増しを認識してはいても、本当のフォロワーが200万の端数にも満たないとは考えていないはずだ。

代理店にとって、アクセスデータをねつ造する架空ブロガーは価格が安くて扱いやすい都合の良い存在で、大きな収益が見込める上、一般ブロガーより交渉もしやすい。こうして、大量のリソースがアクセスデータをねつ造する架空ブロガーに流れ込み、微博もそこから収益を得ているという現状がある。

ニューメディアの発展に、制度と法律の制定が追いつかない中、商品に関する信頼性の低い情報は誤った消費の意思決定につながる恐れがあり、最終的には一般消費者と一般ユーザーが被害者になる可能性がある。
(翻訳・神戸三四郎)

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