ソニーが有料テレビサービス「PlayStation Vue」を終了、Netflixなど新興メディアの台頭で

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天下のソニーが生み出したサービスでありながら、「PlayStation Vue」は惨憺たる結果に終わった。

ソニーが傘下のストリーミングTVプラットフォームPlayStation Vueを売却し、その受け皿がアップルになるなどと噂されていたが、「ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)」の小寺剛副社長が最終決定を下した。10月30日、同氏は自身のブログで、2020年1月30日をもって同サービスを終了することを明らかにした。

2015年3月、VueはストリーミングTVのパイオニアとして、同社の期待を一心に背負ってリリースされた。リリース当時、価格は月々30ドル(約3300円)からで対応チャンネルは50以上、通常ケーブルテレビでしか見られない多彩なコンテンツに加え、PlayStation以外にもAmazon FireTV、Apple TV、iPad / iPhoneのテレビ視聴アプリ経由で視聴可能だ。

Vueの参入は、冷え込んでいたテレビ業界への福音とみなされ、格安料金と豊富なコンテンツにより、リリースから3カ月後には契約者が10万人を超えた。ライバルの「Sling TV」と比較してVueはチャンネル数が多く、クラウドDVRサービスで番組を録画して、好きな時に見返すこともできる。高画質の映像、シンプルなインターフェース設定、豊富なコンテンツのVueは、米国消費者満足度指数(ACSI)ランキングで、Netflixやアマゾン傘下のTwitchツイッチを抑えて1位になったこともある。

参入時に羽振りの良かったVue、たった4年でなぜ引退に?

小寺氏はブログの中で2015年に誕生したPlayStation Vueについて、「既存のテレビ業界への挑戦だった」と綴った。同サービスにより、視聴者が全く新しい方式でテレビコンテンツを見られるようになったものの、不幸なことに有料テレビ業界の競争が熾烈を極め、コンテンツ契約料などが高騰したことで期待以上の変革が望めなかったと説明している。

参入した際、VueはストリーミングTV競争で遥かにリードする立場にいた。しかし、過酷な競争において、他サービスと比べると、ソニーがVueにつぎ込んだ資金は非常に少ない。ライバルの「Sling Blue」や「AT&T WatchTV」は格安料金でユーザーを増やしてきたが、ソニーのマーケティングは始終熱量に欠け、ほとんどのユーザーはVueがPlayStationを持たなくても視聴できることさえ知らない。最後には先行者利益を使い果たし、機会を逃した。

既存のPlayStationユーザーに対しても、ソニーは全力でVueをプロモーションしてこなかったようだ。PlayStationユーザー向けに展開されるオンラインサービス「PlayStation Plus」には3400万人以上の有料会員がいるものの、彼らに向けたVueサービスの利用割引は少額で、PlayStation Plusとのセットプランなども設けてこなかった。ハードウェアとしてのPlayStationは一貫して好調な売れ行きだが、Vueユーザーの伸びはその成長に伴わない。ピーク時でもVueの契約者は50万人に留まり、100万人規模のユーザーを抱える競合から遠く引き離されている。

事実上、Vueの苦闘はストリーミングTV事業の壊滅状態を際立たせた。ケーブルテレビの放映権料は底上げされてきており、プラットフォームは値上げによって収入を維持しなければならない。Vueも月額利用料を10ドル(約1100円)上乗せしたものの、損失をカバーするには不足だった。Netflixのような新興メディアの台頭により、ますます多くのユーザーが既存のTVチャンネルを捨て、より優れたオリジナルコンテンツを抱える上に価格のもっと安いインターネット・ストリーミングメディアに乗り換える中、Vueのサービス停止は必然の流れだったと言える。

11月2日にはディズニーが自社コンテンツの動画配信サービス「Disney+(ディズニー・プラス)」をリリースした。アップルやAT&Tの新サービスはまだリリースされていないとはいえ、各社は次々にストリーミングメディアへ資金を投入しており、巨頭の入れ乱れる次の戦場となるだろう。

ベターな選択として撤退を決めたにしろ、窮状に慌てふためいて撤退したにしろ、ソニーがこのタイミングでVueを終了させるのは、賢い策だといえる。しかし、隆盛の一途をたどる次世代メディア業界には一つの波紋も残さないだろう。
(翻訳・永野倫子)

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