抖音電商(Douyin EC)、日本ブランドの「第二次ブーム」を狙う 訪日客と「匠の技」も商機

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

EXCITEのRSSに登録大企業編集部お勧め記事注目記事

抖音電商(Douyin EC)、日本ブランドの「第二次ブーム」を狙う 訪日客と「匠の技」も商機

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国最大級のショート動画プラットフォーム「抖音(Douyin)」が提供する越境ECサービス「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」が、日本ブランドの中で着実に存在感を高めている。

抖音電商全球購(Douyin EC Global)の日本市場責任者である黄益氏は、36Krのインタビューに応じて「中国の越境ECは今後も成長を維持する」と強調した。中国市場で不振が指摘されている日本の化粧品ブランドについても「第二の成長を実現できると信じている」とし、ブーム再来の可能性を示唆した

黄氏はさらに、日本の地方には中国であまり知られていない「匠」の技で作られた魅力的な商品が多く、インバウンド(訪日客)の復活などを契機に、新たな開拓余地が大きいと指摘した。

EC新勢力の抖音電商

抖音電商(Douyin EC)は2020年の事業開始以来、ショート動画とライブコマースを活用した革新的なコンテンツECモデルで、中国EC業界に旋風を巻き起こした。2021年には海外ブランドが直接中国市場向けに販売できる「抖音電商全球購(Douyin EC Global)を本格的に始動させた。また、日本市場を重要地域の一つと位置づけ、東京に世界初の専門チームを設置するなど積極的な展開を進めてきた。

抖音電商(Douyin EC)の強みの一つは、高度な商品を推奨するレコメンド技術だ。ユーザーが自分の好きなショート動画をスワイプして視聴している間に、自然な形でECに繋がるショート動画やライブコマース動画が流れてくる。この仕組みにより、消費者は知らないうちに商品情報に触れ、視聴中に購買意欲を刺激され、購入へとつながる。

「新しいEC」の特徴

さらに、インフルエンサーを活用することで、新規顧客開拓の効果を高めることが可能だ。ショート動画やライブコマースは商品への深い理解や共感をもたらし、ブランドへの信頼感を高めることで、販売促進につながるという。

抖音の勢いを考えると抖音電商全球購(Douyin EC Global)への参入が重要だと考える日本ブランドの声も多い。他のプラットフォームに比べて、若者の利用率の高さや、高度なレコメンドシステム、ビッグデータの活用に対する信頼性の高さに注目するコメントも目立った。

新しいECモデルが市場を牽引

中国のECの市場規模が巨大化するのと同時に競争も激化している。消費者のニーズが多様化する中、ブランド側は複数のプラットフォームやSNSを活用し消費者にアプローチする時代に入っている。DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)6億人を超える抖音(Douyin)の強みを活かした抖音電商(Douyin EC)が、その新興ECの代表格として急速に成長を遂げている。

データ分析会社「星図数拠(Syntun)」のデータによると、2024年のネット通販セール「双11(ダブルイレブン)」では、従来型ECの成長率が前年同期比20.1%増だったのに対し、抖音電商(Douyin EC)が代表するコンテンツから購買につなげる新しいモデルのECが54.6%増という大きな伸びを実現し、EC市場を牽引した。

抖音電商(Douyin EC)の2023年のGMV(流通取引総額)は前年比80%増という凄まじい成長を遂げ、販売商品件数は300億件を突破した。ダブルイレブンでも前年同期比で約2倍の伸びを見せたという。

近年、中国の消費者は海外からの目新しいユニークな商品を好む傾向が強く、特に食品・サプリ、スキンケア・美容、マタニティ・ベビー商品、ファッション・ラグジュアリーの4分野が市場拡大の中心となっている。抖音電商(Douyin EC)は、中国市場での海外製品の普及に大きく貢献していると黄氏が述べる。

日本のイベントに登壇される黄益氏

日系化粧品の第二次ブーム

一方で、中国は個人消費の伸びが減速していると指摘されている。国家統計局によると、1~11月の小売売上高は前年同期比3.5%増だったが、越境ECと関連性の強い化粧品類は1.3%のマイナス、11月単月では26.4%減となり、市場環境は厳しい。日本を代表する化粧品メーカーである資生堂の2024年1~9月期の決算によると、中国事業の売上高は2.4%減、中国の海南島などを含む免税店事業は21.0%減だった。

それに対して、黄氏は中国の越境EC市場は依然として成長の余地が大きいと主張する。過去6年で約10倍の成長を遂げた越境EC市場は、今後3年間も消費者の増加や政策効果、物流などインフラ整備などにより、さらなる拡大が見込まれるという。

黄氏はまた、日本のブランドが中国向け越境ECにおいて最も大きなマーケットシェアを持っている点を挙げ、「日本ブランドには高品質や高い技術力のイメージがあり、ロイヤリティの高いファンが多い」と自信を示した。24年のダブルイレブンでは、資生堂の主力の高価格帯ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」がランキング上位に入るなど、日本ブランドの優位性が確認されている。

今の中国の消費者は「より慎重な目で商品を見直し、より高い価値を求めるようになっている」とし、コストパフォーマンスに対する意識が強まっている点にも触れたが、「品質が高く、アジア人の肌に適した日本の化粧品の需要は今後も拡大する」との見方を示した。

ロート製薬の高級スキンケア「エピステーム」、中国市場で快進撃。巨大トラフィック「Douyin EC Global」が立役者

第一三共ヘルスケア、「興味EC」で中国向け認知拡大 ショート動画で顧客接点を強化

「匠」の技が生む可能性

黄氏は、日本の地方に眠る「匠」の技術を活かした魅力的な商品が、中国市場で大きな可能性を秘めている点にも注目した。中国で人気を博している日本の製品に、岩手県の南部鉄器、銀細工などで知られる新潟県の燕三条の金物、福井県鯖江市の眼鏡などが挙げられ、「まだ知られていない魅力的な製品は数多くある」と語った。

中国市場での販売を目指している日本の事業者に対しては「認知してもらわないと始まらない」「従来の手法だけでなく、新たなマーケティング手法の導入が鍵になる」と強調した。たとえば、抖音電商全球購(Douyin EC Global)を活用すれば、動画コンテンツを通じて商品の素材や歴史、ストーリー性、さらには企業の背景など、差別化できるポイントを直接消費者に訴求できる。

「プラットフォームに770万人以上いるインフルエンサーの紹介も可能で、商品の知名度向上と販売拡大に大きな力を発揮できる。ぜひ活用してほしい」と、バイヤーに見つけてもらうのを待つのではなく、自ら積極的に発信していく必要性も訴えた。

越境ECのファーストチャネルを目指す

今後も増加が見込まれる中国からの訪日客(インバウンド)に対して、抖音電商全球購(Douyin EC Global)の活用も期待されている。たとえば、日本ブランドが研究所や工場から直接ライブ配信を行うことで、ブランドイメージを高めて、訪日旅行に結びつけるだけでなく、その前後の消費活動を促進することも可能だと効果的な活用法を紹介した。

黄氏は「今後も海外ブランドの中国市場参入を支援する取り組みを強化し、海外企業にとっての『ファーストチャネル』となることを目指していきたい」と語り、抖音電商全球購(Douyin EC Global)のさらなる成長に向け力を込めた。

(36Kr Japan編集部)

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録