日本の「特許の壁」破った中国メーカー、超短焦点レンズで車載ディスプレイ市場を狙う

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スクリーンや壁面に映像を表示するプロジェクターの人気が近年ますます高まっている。従来のプロジェクターはレンズからスクリーンまでの距離(投射距離)が2~3メートルと長く、狭いスペースでは使用できなかったが、投射距離が20~30センチの超短焦点レンズが登場したことで、プロジェクターの活用シーンが一気に広がった。

世界の超短焦点プロジェクター業界では、日本のリコーが主導権を握ってきた。第二世代超短焦点レンズ技術を打ち出した2012年以降、長らく60%以上のシェアを占めている。これまでにソニーやエプソン、ライカ、LGエレクトロニクス、サムスン電子など、世界的な光学機器メーカーが超短焦点レンズの技術開発に取り組んできたが、いずれもリコーの特許を回避することはできなかった。

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しかし、中国のスタートアップ企業「昇暘光学科技」がこの「特許の壁」を打ち破り、リコー以外で唯一の超短焦点プロジェクターサプライヤーとして台頭した。2020年に設立された同社は、超短焦点レンズの開発、生産、販売を手がけ、製品はプロジェクターや車載ディスプレイ、AR・VRデバイスなどの光学ディスプレイに広く活用されている。

昇暘光学は2024年9月に、独自の特許技術に基づいて開発した超短焦点レンズの量産を開始し、複数の大手自動車メーカーや有名エレクトロニクス企業に製品を納入している。創業者の李文宗氏は「当社の製品はリコーに並ぶ画質を誇り、リコーを上回る技術力で超短焦点レンズを15%ほど小型化することに成功した」と語る。小型化したことで、狭い自動車内で使用したり、さまざまな家電に組み込んだりできるようになり、活用の幅が大きく広がった。

超短焦点プロジェクター産業で最も重要なのは光学デバイスであり、それにはチップ、光源、超短焦点レンズという3つの主要部品が含まれている。昇暘光学が保有している特許は超短焦点レンズに関わるもので、光学イメージング技術に加え計算イメージング技術も採用し、光学系のひずみを正確に計算して最適化することで、映像のゆがみを最小限に抑えている。

同タイプの他社製品よりサイズを15%以上小さくしたため、持ち運びにも便利だ。「この製品は全く新しい光学設計で、組み立て容易で大量生産に向いており、コストも抑えられる」と李氏は強調する。

現在、昇暘光学は投射比(TR)の異なる超短焦点レンズを4つのシリーズで展開している。なかでも「L16シリーズ」は現時点で世界最小の超短焦点レンズであり、TR値は0.17~0.29を実現。スマート家電などに組み込めるほか、同レンズを搭載したプロジェクターはモバイルバッテリー程度のサイズに抑えられるため、常に携帯して場所を問わずにプレゼン資料のスライド再生や映画鑑賞などを行える。同社は超短焦点レンズのほかにも、川下企業と協力して光学デバイスやプロジェクター向けソリューションを提供している。

李氏は、自動車のスマート化に伴い、今後は車載用光学ディスプレイ市場が爆発的に成長すると予想する。超短焦点レンズは、カーシアターやパノラマHUD、カーウインドーディスプレイなど、さまざまな車載ディスプレイに活用が見込まれる。例えば、超短焦点レンズを使ったカーシアターでは、スクリーンとプロジェクターを一体設計することで、重くて設置の面倒な液晶テレビが不要になり、投射距離の長い従来型プロジェクターの不便さも解消できる。

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昇暘光学は、広東省深圳市に面積1000平方メートルの生産拠点を設けているほか、浙江省北部でも工場建設を進めている。2024年9月に量産を開始してから、わずか3カ月余りで受注額は4000万元(約8億3000万円)を超えた。これまでに2度の資金調達を終えており、現在は新たな資金調達が進行中だという。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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