中国・EVEエナジー、大型円筒形電池で攻勢。3万台超に実装、BMWにも供給

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業注目記事

中国・EVEエナジー、大型円筒形電池で攻勢。3万台超に実装、BMWにも供給

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

米電気自動車(EV)大手のテスラが大型円筒形電池「4680」の生産計画を発表して以来、中国の億緯鋰能(EVEエナジー)や寧徳時代(CATL)、日本のパナソニック、韓国のLG Energy Solutionなど多くのメーカーが同じ製品の開発を急ピッチで進めてきた。大型円筒形電池は角形電池に比べ、エネルギー密度や安全性などに優れているうえ、生産コストを大幅に削減できるため、今後の主流になるとも期待されている。

中国を代表する電池メーカーのEVEエナジーは、上海モーターショー2025でも大型円筒形電池を重点的に展示した。

EV×中国化が決め手に 日本車・ドイツ車の巻き返し策を追う【上海モーターショー2025・前編】

大型円筒形電池はEV用バッテリーに適しているとはいえ、生産には高い技術が求められる。EVEエナジーの副社長で電池システム研究所所長の江吉兵氏は、同社が大型円筒形電池の量産化でリードしており、技術的なハードルをいくつもクリアしてきたと説明した。

まずは、低温下で性能を保つという課題の解決に4年を費やし、抵抗を抑える技術や電池パックの温度を一定に保つ技術を開発した。同社の大型円筒形電池は、氷点下30度の環境でも25分間の急速充電が可能となり、低温環境での連続使用時間が20%延びた。

次に、電池パックの組み立て精度を向上させた。電池パックには一般的に700~800個の円筒形電池セルを使ううえ、二相式液冷やコネクター接続の構造となっており、高い精度で組み立てることが重要になる。同社は垂直方向0.2ミリ、水平方向0.25ミリ以内の誤差に抑える組み立て精度を実現してサイズを厳しく管理し、熱伝導の均一性も確保した。

3つ目のポイントは精度の高い溶接技術だ。大型円筒形電池パックでは、溶接する箇所が1500カ所を超え、それぞれが電池セル同士の接続に影響する。同社は、溶接深さ0.08ミリ以内の精度を実現した。

そして、発泡ウレタンを密に充填する技術を開発した。大型円筒形電池はそれ自体の強度が角形電池の5倍に上り、隙間を全て発泡ウレタンで埋めた同社の電池パックは、ねじり剛性が1万5000ニュートンメートル(Nm)を超える。

世界の車載電池搭載量、中国CATLが8年連続首位 シェアは37.9%に拡大

同社は、大型円筒形電池に関する特許を世界15カ国で計2300件以上出願しており、取得した特許数が世界で最も多いという。EVEエナジー電力電池研究所の何巍所長は、大型円筒形電池の良品率が生産を開始した2023年初めの80%あまりから、約1年半後の現在は約97%に向上し、中国トップの水準に達したとしている。

また、中国で最初に大型円筒形電池の量産を実現した電池メーカーとして、15カ月間で計3万2000台を超える車両に製品を搭載しており、1台で21万キロ超を無事故で走行する記録を達成した。

EVEエナジーの大型円筒形電池は、長安汽車(Changan)や第一汽車(FAW)、蔚来汽車(NIO)、江淮汽車(JAC)などの自動車メーカーに供給され、今後も徐々に販路が拡大する見通しだ。

BMWは2022年9月、EVEエナジーと寧徳時代が第6世代EV用大型円筒形電池のサプライヤーになると発表した。EVEエナジーはBMWに、長航続距離が特長の「DTE(Design To Energy)」、超急速充電が可能な「DTP(Design To Performance)」という2種類の大型円筒形電池を供給する。どちらも三元系化合物を正極に使っており、第5世代に比べ航続可能距離が20%向上し、10分間で300キロメートル走行が可能になる急速充電を実現した。この大型円筒形電池は、BMWの「次世代モデル」に搭載される予定だという。

(翻訳・大谷晶洋)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録